【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【今日の時事問題】日本の「円安」が止まらない。その7(物価と賃金がなぜ上がらないのか?)

前々回の課題を解決してしまおう。

何故多くの国が物価が上がってきた中で、日本は長い間物価があまり上がらなかったのか?

それには様々な要因があろう。

 

前々回触れたことであるが、強引な「円安」政策で抑制はされているものの、基本的には「円高・デフレ」という相互作用もその一因と考えられる。

 

理論上「物価と為替レートは反比例」するので、円高は物価下落の要因となる。ただし、強引な「円安」政策をとってきたものだから、日本の相対的な物価下落に似合うほどの円高に振れていないため、円の購買力としてはマイナスになっている。円の購買力が低下したということは、物価上昇を抑制することにもなる。こういう二重の要素で、日本の物価は上昇しにくくなっている。

 

企業、とりわけ中小企業が価格転嫁できずにいることも大きな要因だろう。

 

「価格転嫁することは、下請けの立場からは不可能」

「価格転嫁をしたら売れなくなる」

 

という、日本特有の(?)強迫観念から、物価上昇が抑制される。

 

企業側がコストの価格転嫁ができないのであれば、売上が増えず、「賃金」上昇の阻害要因になる。いや、それどころか、日本経済はここ20年「賃金」もほとんど上昇していないという実態があることが話題になった。

 

つまり、「物価と賃金」がセットで低空飛行をしてきたということだ。1990年代半ばまで、日本の賃金は世界トップクラスだったが、その後今日に至るまで名目賃金はほとんど上昇せず、OECDの調査によると、物価上昇分を差し引いた実質賃金も1990年代後半を100とすると、90を切っているとのこと。

2020年における日本の平均賃金(年収ベース:購買力平価のドル換算)は3.8万ドルで、アメリカ6.9万ドルのほぼ半分、ドイツ5.4万ドルの7割程度とのこと。

賃金が上がらなかったら消費意欲も高くならない。そうなると製品の価格も上げられない。物価は上がらず、企業の売上も伸びず、景気は低迷したままだ。負の連鎖なのだ。

 

一方で、諸外国は賃金が増え、それに伴って物価が上昇しているが、その結果として輸入品の価格も上がる。ところが、日本人の賃金は横ばいなので、諸外国に対して買い負けしかねない。ということで、「実質実効為替レート」でみると、日本の購買力は極めて弱くなってしまっている。そしてそれがまた、物価上昇を抑制する。

 

では何故「賃金」が上がらなかったのか。一つは上記で触れた負のスパイラルもあろうが、企業の「生産性の低さ」も一因であるとされている。

 

労働生産性とは、「インプットした資源に対してどれだけのアウトプットが生まれたか」を表す指標。

 

インプットは、投入した労働力(業務に当たる従業員数など)、

アウトプットは、労働によって生まれた成果(売上や利益、付加価値)。

 

受験生諸君は、日本はこの労働生産性が高いと思っているはず。

 

ところが、日本の労働生産性OECD加盟国36ヵ国中20位前後、G7では最下位だそうだ。また、中小企業・地方企業・サービス業の賃金が低い、労働者に占める低賃金の非正規労働者の割合が高い、男女の賃金格差も大きい、といった構造上の諸課題もある。今後また触れ直すが、とかく政府日銀の金融政策が問題視されるが、経済構造上にも大きな問題があるということだ。

 

また大企業については収益は上がっていても、「内部留保」に回されていて社員の給料に回されていないということも話題となった。内部留保とは社内に蓄えられる資金であるが、日本企業が蓄積している内部留保は500兆円にのぼると言う。1年間のGDPに匹敵する額が蓄積されていることになる。ただし、あくまでほとんどが大企業の蓄積であり、中小企業はその蓄積すら希薄なところも多く、産業の二重構造の改革も大きな課題であろう。

 

で、最後に、こうした中、ウクライナ戦争を一因として、一転、物価が上がりだした。しかし、これは、賃金が増え、購買力が上がったためではない。コスト・プッシュ・インフレによる「悪いインフレ」である。このインフレにどう対処していくのか?対応するための賃金のアップはできるのか?

こうした観点から、今後も、政府・日銀の金融政策・財政政策、また企業の動向を関心をもって見ていこう。