【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【今日の時事問題】格差の実相 その6の3

 

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先生、いよいよ。失業率の「罠」ですね。

 

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君、なかなか厳しいツッコミをするな。ワナワナと震えちまいそうなプレッシャーを感じるな・・・

 

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先生、そういうのって、親父ギャグって言うんですよ。

 

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ガチョーン。しょうがないな。では、仕切り直しとするか。
まずは、これまでのところを振り返っておくと、日本の現在の失業率は全体でどのくらいだったっけ?

 

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若者が4%程度で高かったけど、全体では・・・2%から3%程度だったかな。一時10%と高い時期があったことを思えば、かなり低くなっています。

 

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OECDの平均が6%程度。そうすると国際的にもある意味で優等生。

労働力調査によると、ここ10年で見ると完全失業者数は随分減ってきている。

 

けれど・・・何が問題だったのかな?

 

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雇用の安定と引き換えに、低賃金を余儀なくされている・・ということでしたよね。

 

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おっと、よく頭に入っていたね。確かに日本は失業率は低いけど、賃金がほとんど上がっていないんだったね。
で、今回さらに深掘りしたいのが、失業率、正確に言えば、「完全」失業率の意味。これって、まずは、調査期間中に、働いていなかったということだよね。でも、そもそも働くつもりのない人は、カウントされるのかな?

 

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「完全」ということなので・・・働きたいけど働くところがない・・・という人たちだけの数じゃないでしょうか?と言うことは、働く必要のない人、働く意思のない人は、「失業」とは言えないのでは?

 

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その通り。「完全」失業率で言う失業者とは、労働力調査時に、まずは①仕事がなくて調査期間中に少しも仕事をしなかった人、②次に、仕事があればすぐに就くことができる人、と言うことは、働く必要のない人や、働くつもりもない人は、失業者ではないということになる。そしてさらに③仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた人、逆に言えばハローワークに通うなど、働き口を探していない人は、失業者としてはカウントされないということになる。

 

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先生、と言うことは、「専業主婦」は、失業者にカウントされない・・・日本は「専業主婦」が多く、だから・・・失業率も低くなる・・・ということですか?

 

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うーむ・・・ただちょっとやっかいなんだけど、パート等で働いていない専業主婦や、アルバイトなどの仕事をしない学生、そして高齢者などは「非労働力人口」として完全失業率の計算上の「分母」から除外される。
けれど、パートで働いている主婦、アルバイトをしている学生は「労働力人口」として、就業者としてカウントされるようなんだ。

 

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うーん・・・と言うことは、主婦と言っても、家事だけで外で働いていない「専業主婦」と、家事を中心にしつつも就業もしている人と、2つのタイプがあるということですか?

 

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そうだね。今話題になっている「扶養者控除103万円」「130万円」の範囲内で働いている主婦で、時に「専業主婦」という言い方をされることはあるけど、正確には「扶養内で働く主婦」ということだろうね。

 

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それって、  「年収の壁」ってやつですね。

 

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おっと、よく知っていたね。私は、世の中に潜む「壁」を見つけることが大好きなんだけど・・・で、どんな壁?

 

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確か、年収が103万円を超えると、所得税がかかるという「税金の壁」のことじゃなかったですか?

 

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その通り。では、130万円は?

 

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それを超えると、保険料を払わなければならなくなるのでは?

 

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そうだね。従業員100人以下の企業など、厚生年金などが適用されていない職場で働く人は、扶養を外れ、みずから国民年金国民健康保険の保険料を支払うようになるんだ。大きい企業の場合は、もっと前の106万円を超えると、厚生年金・保険の支払い義務が発生するそうだ。「保険料の壁」かな。
だから、働き方を調整するんだけど、一方で、あくまで失業者ではない。収入は低くても失業者ではない。それと、家事だけでパート等の就業もない専業主婦も失業者ではない。だから・・・

 

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うーん、失業率自体が低いことになってしまう・・・ということですよね。

 

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その通り。このような税や保険への「優遇策」があるから・・・扶養内で優遇されるなら、その範囲で働こうか・・・で、結果的には、失業者にはならない・・・失業率が低くなる。

ただ、そういう主婦の中で、調査時にたまたま雇用調整していて離職、そのため完全失業者にカウントされているケースもある。

しかし、調査では、さらに「就活しているかどうか」が問われるので、もし「就活していなければ」、カウントされない。と言うことで、失業者が就活を止め「非労働力化」すると、「非労働力人口」となるので、失業率自体は低下するという現象も生じてしまうこともある。コロナ禍で、あきらめて、就活さえできなくなったシングルマザーもいたとは思うけど、それも実は失業者にカウントされない。

 

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先生、と言うことは、失業率が低いと言っても、そこまで自慢できるものではないんじゃない・・・ということですね。

 

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そうなんだよ。それが私の言う、失業率の罠のひとつ。

 

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で、先生、もう少し詳しく聞いていいですか?専業主婦とされる人たちはどの程度の数なんですか?

 

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労働政策研究・研修機構によると、2022年現在、専業主婦世帯は500万世帯を超えているそうだ。

もちろんかつてはもっと多かったけどね。で、一方、共働き世帯はだんだんと増えてきて現在は1200万世帯を超えているそうだ。見方によっては「専業主婦世帯が減ってきて、それをモデルとした社会保障は見直すべきだ」という意見もあろうし、あるいは逆に「依然として専業主婦世帯は多い、もっと女性の社会進出を促すべきだ」という意見もある。

www.jil.go.jp

 

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数字で見ると5:12だから、夫婦世帯の4割は専業主婦世帯ってことですか。うちは共働きなんですけど・・・

 

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うん、実は地域によって差があるんだ。専業主婦世帯は、都会と田舎とどっちが多いと思う?

 

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やっぱ、都会は働き口がたくさんあり、キャリアウーマンが多いから、専業主婦は少ないんじゃないですか?

 

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いや実は逆なんだよ。地方の方が多い。

 

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えっ?そうなんですか?

 

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都会は高収入の人が多い。一馬力でもやっていける場合も多い。しかし、地方は収入が相対的に少ないから、共稼ぎ世帯が多いんだよ。
次回、このあたり、もっと深掘りするので、今回はこの程度に留めるけどね。

 

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先生、でも、この点だけは質問させてください。日本は欧米と比べてどうなんですか?女性の社会的進出が進む欧米は、共稼ぎが多くやっぱ専業主婦世帯は少ないんですか?

 

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うーむ。国によって違うんじゃないのかな。スウェーデンあたりは女性の就業率がとても高くて、専業主婦世帯はとっても少ないって聞いたことがある。けど、アメリカも日本ほどではないけど2割程度は専業主婦世帯なのかな?ところが、イタリアあたりは日本と同じぐらい、あるいはそれ以上専業主婦世帯が多そうな感じはするな・・・でも、どうもこれはきちっとしたデータはないようだね。と言うより、国際的には、「専業主婦」という捉え方自体の発想が、そもそもないのかも?このあたり、私もまだ掴めていない・・ごめんね。

ただ、女性の就業率なら、国際比較はあるよ。

www.gender.go.jp

 

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先生、これを見ると、日本の場合、女性の就業率は決して低くないじゃないですか。アメリカあたりはむしろ6割と低い。これは意外だな・・・

 

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そうだね。ただし、日本の場合、雇用調整しながらパートでとどめている主婦もいるから、就業率だけでは、女性が活躍できる社会になっている・・・とは言えないしね。
それに、日本の場合、完全失業率自体は欧米諸国と比べるとかなり低い。けれど、実は女性の場、3割はそもそも就業していないんだ・・・という見方もできる。このうち多くは専業主婦・・・専業主婦は500万人。ただし、男性も実は2割が未就業・・・

 

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えっ、男性も2割ですか?

 

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うん、ここで男性の未就業について触れておくと・・・おっと、これは何も男性だけではないんだけど・・・実は、ある人達も、「非労働力人口」として完全失業率の計算上の「分母」から除外されているんだが・・・どんな人達か、分かる?・・・ヒント・・・若い人にも多い・・・

 

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うーん・・・

 

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ニート」って聞いたことがある?

 

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はい。あっ、そうか。ニートも失業者にはカウントされないんですね。

 

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知っているとは思うけど、NEETというのは、Not in Education, Employment or Training・・・学生でもなく、働いておらず、仕事に就くための職業訓練も受けていない、つまり仕事をする意思のない人たちのことだよね。日本では、厚生労働省が「15歳から34歳までの若者」の無業者に対して、NEETとして統計を出している。その中には、いわゆる「引きこもり」とされる若者も含まれる。

 

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どのくらいの人数になるんですか?

 

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年によって変動があるけど、55万人前後と言われている。各世代の人口の2.3%前後で推移しているようだ。総務省の「労働力調査」のデータを見ておこうか。

 

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先生、35歳以上の無業者も多いですね。

 

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そうだね。この年代はNEETとしては扱われないけど、以前触れた8050問題にもからんでくるよね。
で、言いたいことは、これらの「無業者」は「失業者」には含まれないけど、ただ、「働く意思が全くない・・・」という訳でもないんだよね。でも一歩が踏み出せない。そこで、厚生労働省は様々な支援策を打っているけど・・・。「完全失業者数」は2022年現在179万人、でも、15歳から44歳までの「無業者」も100万人に近いという現実があるんだ。専業主婦の500万人には及ばないけど、ある意味では貴重な労働力が活用されていないということだ。

 

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失業率自体は低くても、ここにも見えにくい課題があるということですね。

 

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そうだね。特に最若年層のところでNEETになると、なかなか社会参加が難しくなるケースもあるようだね。で、スモール・ステップで自己実現に向かっていこうという伴走型の支援も試みられているよ。でも、注意しなくてはならないのは、NEETもある意味で「ひとつの生き方」。存在自体を否定することはできない。

 

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専業主婦だってそうですよね。

 

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おっ、君鋭い。「働らかぬもの食うべからず」ってなことになっては怖いよね。それぞれ個別の事情や状況があり、短絡的な否定、全否定はあってはならないと思うな。

 

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そうですよね。「生産性」だけで評価するのはとても危険だと、私も思います。
で、先生、結局のところ、日本全体の「就業者」は減ってきているんですか?それとも増えてきているんですか?

 

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君はどっちだと思う。

 

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少子化で減ってきているんじゃないかと思います。

 

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確かに、少子化が進んでいるものね。それにね、業種によっては人手不足だと言われ、また外国人に頼っているところもあるから、そう思うのも無理はないね。ところが、現実は、ここ10年のスパンでみると微増しているんだ。

 

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えっ、そうなんですか?

 

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なぜだと思う?

 

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そうですね・・・専業主婦世帯が少しずつ減ってきたからですか?

 

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そうだね。それも一因だと思うよ。働く女性が増えてきている。それから・・・

 

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うーん・・・

 

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もうひとつは・・・高齢者が働くようになったからかな。65歳以上で働いている人は2012年が610万、2022年は927万と増えているんだ。
これも労働力調査を見てみよう。これは65歳以上の就業者も加えたグラフなんだけど・・・

 

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先生、女性の就業者が増えていますね。

 

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そうだね、男性がおよそ3700万人に対して、女性もだんだん増えて3000万人が働いている。ここのところ就業者が最も増加した産業は「医療、福祉」だそうだが、おそらくこの分野で、女性の活躍が顕著なんだろうね。

 

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先生、いい傾向ですね。

 

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でも、労働環境の厳しさ等から女性や高齢者の就労が進みにくい分野においては、労働力不足が深刻化する可能性はあるよ。それに将来的には、少子化が食い止められず、労働力人口はどんどん減っていく見通しだ。

 

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先生、そこで「外国人労働者」の受け入れ・・・ということですね。

 

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そうそう、ただし、これについてはまた別の機会に触れようか・・・

で、最後になったけど、あと2つのことを指摘しておくね。

ひとつは、「休業者」は失業者にカウントされないということ。「休業者」とは、「仕事を持ちながら、調査週間中に少しも仕事をしなかった人」で、たとえばコロナ禍で雇用を維持できなくなった会社が雇用助成金を受け従業員に休業手当で対応しているケース、自営業者が事業を保持しつつも休業を余儀なくされているケース・・・これは、あくまで失業率には反映されないんだそうだ。

 

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えっ、そうなんですね。これもまた失業率の罠ですね。

 

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で、仮に休業者が200万人だとすると、これは「労働力人口」の3%程度に該当するので、実は「潜在失業率」はかなり高い。君の言う通り、これも「失業率の罠」のひとつ。
それから、もうひとつは、実は国によって、失業率の計算の仕方が微妙に違ったり、「労働力人口」の定義にもずれがあったりしていること。特に「労働力人口」に軍人を入れる国と入れない国があり、これだと違いが出る。アメリカや軍人はカウントしないが、日本は自衛隊員およそ23万人をカウントする。公務員は失業とは原則無縁なので、当然失業率は低く出る。と言うことで、失業率の単純な国際比較は危ういということだ。

 

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へー、そうなんですね。
先生、と言うことは、共通テストでは失業率の国際比較は絶対出ませんね。

 

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いや、出題されたことはある。けれど、表の読み取り程度で、どこの国の失業率が高い、低い・・・といった知識などは求められることはない。

 

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よかった・・・それにしても先生、今回はボリュームがありましたね。

 

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いろいろと寄り道したからね。でも、この程度のことは速読即解できないと。スピーディな情報処理能力が求められてきたからね。

 

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先生、でもいろんな人がこのブログを見ているので、あまりに長いと、読まれなくなるんじゃないですか?

 

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君、「視聴率」ばかりを気にしてはならぬぞ。そうすると、罠にはまってしまう。このブログのターゲットはあくまで受験生。そして教育環境に格差のある中、それをなくすためのサイトだ。・・・で、今回は何がテーマだったけ?

 

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先生、しっかりしてくださいよ。そもそも「若者」がテーマでしたので、このオチでバッチリですよ・・・安心してください、先生。