【深める】為替相場と関連してやや難し目の指標4つ ①購買力平価
はじめに・・・2022共通テスト出題予想
「円安が止まらない・・・」というコラム・シリーズを書いたのが3月。
★シリーズ:日本の「円安」が止まらない。
その1(円高・円安 ・金利・インフレの基本)
その2(円高・円安 の要因と物価・金利・株価)
その3(円高・円安の影響・悪い円安)
その4(円高・円安・対外投資・内外価格差)
その5(物価・為替レート・通貨の購買力)
その6(「実質実効為替レート」という指標)
その7(物価と賃金がなぜ上がらないのか?)
その8(金利、なぜ上げないのか?)
そして9月現在も同様。
かつては、「円高」が輸出に不利と槍玉に挙げられていたが、現在は円安による輸入品の高騰、「悪い円安」という言い回しが定着してしまった。
来年の共通テストでは、まず間違いなく、為替相場、円高・円安の問題が出てくるだろう。
その為替相場の問題については、円高・円安の「背景・要因」、「結果・影響」という2つの側面がよく問われる。
輸出が活発になると円高に、円高になると輸出にブレーキがかかる・・・
このあたりの基本的なところは、「三つでくくって覚える」で確認してもらうことにして、「深める」では、コラムで書いた文章を再構築して、やや難しい4つの指標・数値を掘り下げたい。
共通テストでは、教科書にない指標を取り上げ、それを解説した文章を読解させ、それを基にした思考力問題を出してくる。今回のものも、案外、穴埋め形式で問うてくることも考えられるので、しっかりと吟味してほしい。
その1 「購買力平価」
国によって「物価」が違うが、日本は一般的に物価が高いと言われてきた。日本で生活の豊かさを実感できない一因は、この、日本の物価水準の高さにもあると言われてきた。ただし、後に見るように、実情はそうではないのだが・・・
で、そもそも、物価は何故異なるのか?
内外価格差
その一因は、国内外での流通機構の違い。流通機構が整っていなければ、当然高くなる。この他、国内外で自由競争の状況の有無にも起因する。
同一の商品やサービスであっても競争が少ない場合は価格が高止まりしやすい。
このように、国によって物価が違う訳だが、その違いを表す指標が「内外価格差」と呼ばれる数値である。
これは、同じ商品、サービスの日本での価格と円換算した海外での価格の比率で、その計算式は、
購買力平価 ÷ 実際の為替レート
この計算自体は後に確認することとして、左項の「購買力平価」を先に理解しておきたい。
購買力平価説
「購買力平価説」は、為替レートの決まり方を説明する考え方の一つで、仮に貿易障壁がない世界を想定してみた場合、そこでは、国が異なっていても、同じ製品の価格は一つになる(「一物一価の法則」)、と考えてやるものである。
この考え方に立ち、仮に日米2か国を取り上げた場合、ハンバーガーの価格がアメリカで3ドル、日本で300円だとすると、
3ドル=300円、これを購買力平価とみなす。
そして、これを基にして、ハンバーガーだけで計測した、
1ドル=100円を日米の為替レートとみなすという考え方である。
実際の為替レートは当然、様々な要素によって変動するものの、長期的にみれば購買力平価から一方的に乖離することはないという考え方に基づく。
このように、この2国間の為替レートは、どちらの通貨を用いても、同一商品を同じだけ購買できる水準になるという考え方を「購買力平価説」と呼び、実際、購買力平価の変動と為替相場のレートの変動は酷似しているそうだ。
【練習問題】購買力平価の計算①
試験では以下のような計算問題が出題されることがある。
★解答
0.9ドル : 180円 = 1ドル : X円
→ X=200円
【練習問題】購買力平価の計算②
★解答
3ドル=300円 の時は 1ドル=100円
4ドル=360円 の時は 1ドル= 90円
あくまで、「ハンバーガーの価格が購買力平価説が成り立つ」という前提なら
1ドル=100円 から 1ドル=90円に
→「円高」ドル安に変化した・・・
どう?理解できるよね。別に難しくないよね。
ところが、「購買力平価説」が何のことか全くわかっていなかったら、ちんぷんかんぷ
ん・・・ということで、知っておく必要がある説なんだ。
実は、つい最近の2022年政経第一日程で、この「購買力平価説」にかかわる計算問題が出題されているんだ。
いや、これまでも何度か出題されていて、受験生としては必ず押さえておきたい指標なのだ。
なお、上記の場合、ハンバーガーの価格は、日本が1.2倍、アメリカが1.333…倍高く
なっていて、アメリカのほうが価格の上昇率が高い。
ここでも、「円高・デフレ」だと、基本的には日本の価格の上昇率は抑制される、といったことが読み取れるのではないか。
もしアメリカが3ドルのまま、日本だけが360円と価格が上がった場合、
逆に、1ドル=120円に変化、
「円安・インフレ」に振れたということになる。
上記のことが理解できているかどうかチェックするために、以下の正誤問題を判断してみよう。
【練習問題】購買力平価の正誤問題
購買力平価説に立脚すると、ある国の物価が上昇すれば、その国の通貨が減価する形で均衡為替レートが調整され、物価の上昇率が高い国の通貨は長期的に下落するということになる。○か✕か?
→○ 正しい。
もう一度同じ事例を取り上げるが、
アメリカが3ドルのまま、日本だけが360円と価格が上がった場合、
1ドル=100円が、1ドル=120円に変化、円安となるから正しい。
※抽象的に言うと
「購買力平価は、自国の為替レートの価値は、自国と相手国の物価上昇の比率に反比例するという見方である。」
・・・物価が上がると為替レートが下がる、物価が下がると為替レートが上がる
どう、理解できるかな?
かなりハイレベルな知識だが、知っていて損はない。
※ところが・・・待てよ。現在日本は「円安」が止まらない訳だが、一方で、物価は上がっている・・先の公式とは矛盾していない?という疑問も出てくるかも。
確かに一見そう思うかもしれないが、実は、現在、アメリカの物価は日本以上に上がっているんだ。歴史的なインフレに襲われているとのこと。
物価上昇の比率自体は日本のほうが低いので、円安に振れるという訳だ。
これまでセンター試験では、円高の問題がほとんどであったが、来年あたりは「円安」
の問題にシフトするかも。