【深める】為替相場と関連してやや難し目の指標4つ ②「内外価格差」
内外価格差
前回、購買力平価を解説する際、初っ端に「内外価格差」に触れた。
内外価格差は、
購買力平価÷為替レート
という計算式で求められる、「同じ商品、サービスの日本での価格と円換算した海外での価格の比率」のことだが、購買力平価を前回理解したので、改めて確認したい。
前回の計算問題をそのまま継承し、ハンバーガーの価格がアメリカで3ドル、日本で300円だったとしよう。
購買力平価は1ドル=100円ということになる。
ところが、実際の為替レートが1ドル=90円と購買力平価と乖離し、「円高」に振れていたとする。
この場合、この商品は日本で300円なのにアメリカでは270円(3ドル)で買えることになる。
この差(=30円)が「内外価格差」であるが、厳密に言うと比率で表すことになる。
もし、内外価格差の比率計算が求められた場合は
購買力平価÷為替レート 100÷90=1.11
これは、相手国を1とした時の日本の価格の倍率を意味する。
「円高」だと、「内外価格差」は拡大して、国内の価格が相対的に高くなる。
1ドル=90円では、日本では300円は3.33ドルなので、「外国人が物価が高い」と感じることになる。
日本人なら、円の価値が高いから、海外に出ると270円で買えて割安感を感じることになるという意味である。
【練習問題】
上記を踏まえ、共通テスト的な正誤問題にチャレンジしてみよう。
同じ財・サービスでも海外より国内の方が高い場合、円高が進行すると、内外価格差は縮小しやすくなる。○か✕か。
こういう場合の鉄則は・・・そう、具体的な数値を当てはめて考えてやること。
ここでは円高という設定になっているので、為替レートが変化するというところを基軸する。
例えば①「1ドル=100円の時」と、②「1ドル=50円の時」と場合分けして考えてやると何とかなる。
そして問題文の設定が、日本のほうが物価が高いということ。
この二つを踏まえなくてはならない。
具体的には、以下のように考えてみよう
①「1ドル=100円の時」
同じ商品のジュースが、日本で100円、アメリカで1ドルだったら内外価格差はないということになる。
しかし、日本のほうが高いという設定なので、日本では200円で、アメリカは1ドルで買えたとしよう。この場合、日本ではドルで買うとすると2ドルととても高いことになる。内外価格差は日本がアメリカの2倍ということになる。
②ところがレートが「1ドル=50円」になった。
日本ではドルで買おうとすると何と4ドルも出さないといけない・・・
ということで内外価格差は2倍から4倍へと拡大してしまう。
と言うことは、問題文「同じ財・サービスでも海外より国内の方が高い場合、円高が進行すると、内外価格差は縮小しやすくなる」は、✕。
円高になると輸入品は安くなるが、内外価格差という観点からみると、むしろ差は広がると考えるべき。
そうなると、外国人旅行者は購買意欲が弱まる・・・ということで、円高の時は日本人の海外旅行は追い風、逆に円安の時は外国人旅行者に追い風といった知識とも合致。
ただし、一方で日本でのジュースが200円のママとして
③「1ドル=200円の円安」に振れたとしたら
日本でも1ドルでジュースを購入でき、内外価格差はなくなる。
内外価格差は「相手国を1とした時の日本の価格の倍率」なので、数値としては1ということになる。
④ところが、さらに円安が進み「1ドル=300円の円安」に振れたとしたら
2ドル出せばジュースを3本買えることになり、また内外価格差が生じる。
この場合は、日本の商品の方が安いという内外価格差になる。
繰り返すが、内外価格差は「相手国を1とした時の日本の価格の倍率」なので0.66・・・という数値になる。
従って、円安になっても、「内外価格差」自体はあるので、「縮小」という言葉はなじまないかも。厳密に言うと、「倍率が下がる」・ダウンということか・・・。しかし、その表現では何がなんだか分からないので、円安のときは、「内外価格差」は指標としてはあまり注目されないかもしれない。
しかし、それにしてもなかなか厄介だね。受験生が敬遠するのもよく分かる。
でも、一度こうして頭を使って理解してしまえば、こういった問題が出題されても何とか食い下がることができるのでは?
で、一問、創作問題を提示する。
○問題 以下の文を読んで空欄に入る正しい組み合わせのものを選んで記号で答えなさい。
今ハンバーガ1個が日本で330円、アメリカで3ドルで売られていたとする。この時、ハンバーガーを基にした購買力平価は1ドル=110円となる。ところが実際の為替レートは1ドル=100円であったため、日本とアメリカとのハンバーガー1個あたりの内外価格差は( A )円となる。 内外価格差は様々な要因から変動するものであるが、このハンバーガーのケースの場合、円高が進み、他の要因が働かなければ、内外価格差は( B )するものと考えられる。 ①A: 10 B: 拡大 ②A: 10 B: 縮小 ③A: 30 B: 拡大 ④A: 30 B: 縮小 |
解答・解説
Bについては、上記で触れたばかりだが、具体的な数字を入れて考えてみればよい。例えば、1ドル100円が円高となり1ドル90円になったとしよう。そうすると、アメリカに行けば 270円で買えるのに日本だと330円。50円の内外価格差となる。日本のほうが高く、内外価格差は1を超えており、その変化が問われているので、「拡大」という表現でも差し支えない。
ところが意外にAでつまづいた受験生もいるのでは?正解は③。もし波線部分がなければ簡単に30円と答えられるはず。ところが波線部分が入ると混乱させてしまう。こういう「不要情報」を入れて「ミスリードさせるという手法」が使われることがあるので注意したい。
内外価格差と購買力平価のまとめ
でも、時が経つと忘れてしまって「どうだったかな???」と頭を抱える可能性もある。
そこで、以下のような整理を自分で付箋に書き込んで作ってみるとよい。
内外価格差=購買力平価/為替レート(円/ドル)
購買力平価 : 国内物価水準上昇 → 内外価格差はアップ
国内物価水準下落 → 内外価格差はダウン
為替レート : 円高 → 内外価格差はアップ
円安 → 内外価格差はダウン
※上・高 → 格差拡大
これが頭に入っていると
→簡単に✕と判断できる。
なお、繰り返すことになるが、現在は円安。
物価は上がっているけどアメリカはもっと激しいインフレ・・・
と言うことで、内外価格差はダウンの方向で動いている。
物価はもともとアメリカの方が高く、インフレでさらに物価が上昇しているが、しかし、日本も急速な円安で輸入品が高くなり、内外価格差自体はダウンしているという構図だ。