【深める】為替相場と関連してやや難し目の指標4つ ③「ビックマック指数」
昨年秋ごろから話題になった「ビックマック指数」にも注目してみたい。
世界のビックマック価格ランキング
2021年6月時点で、ビックマックの価格は
日本では390円、ドル換算で3.55ドル。
アメリカは5.65ドル、ユーロ圏が5.02ドル、韓国が4.0ドル。
日本の物価が相対的に低いということを如実に物語る指標として話題になった。
2010年頃は日本は3.91ドルで、アメリカの3.71ドルより高かったということで、日本のビックマック指数の低下は、ここ10年に急速に低下したそうだ。どうも、ここ10年に秘密があるようだ。
さらに、現在、円安の影響もあり、2022年7月時点で、ドル換算で2.83ドル、世界41位となっている。
※円安になるとドル換算の数値が「下がる」という点も理解できるであろうか?
現在日本円では390円。もし1ドル=100円ならドル換算3.9ドル。1ドル=200円なら1.95ドルとなる。このあたりも、問題として出題される可能性がある。
以下が2022年7月22日時点のランキングである。 ※BMI=ビックマック指数
順位 | 名称 | 価格(円) | 価格(ドル) | BMI(%) |
1位 | スイス | 925 | 6.71 | 30.33 |
2位 | ノルウェー | 864 | 6.26 | 21.63 |
3位 | ウルグアイ | 839 | 6.08 | 18.14 |
4位 | スウェーデン | 771 | 5.59 | 8.53 |
5位 | カナダ | 724 | 5.25 | 1.97 |
6位 | アメリカ | 710 | 5.15 | 0 |
7位 | レバノン | 700 | 5.08 | -1.4 |
8位 | イスラエル | 682 | 4.95 | -3.97 |
9位 | アラブ首長国連邦 | 676 | 4.9 | -4.84 |
10位 | ユーロ圏 | 657 | 4.77 | -7.47 |
11位 | オーストラリア | 638 | 4.63 | -10.18 |
12位 | アルゼンチン | 630 | 4.57 | -11.27 |
13位 | サウジアラビア | 624 | 4.53 | -12.09 |
14位 | イギリス | 612 | 4.44 | -13.79 |
15位 | ニュージーランド | 610 | 4.43 | -14.03 |
16位 | ブラジル | 586 | 4.25 | -17.53 |
17位 | バーレーン | 585 | 4.24 | -17.59 |
18位 | シンガポール | 585 | 4.24 | -17.66 |
19位 | クウェート | 583 | 4.23 | -17.88 |
20位 | チェコ | 548 | 3.97 | -22.88 |
21位 | コスタリカ | 539 | 3.91 | -24.12 |
22位 | ニカラグア | 534 | 3.87 | -24.8 |
23位 | スリランカ | 513 | 3.72 | -27.72 |
24位 | オマーン | 508 | 3.69 | -28.38 |
25位 | クロアチア | 508 | 3.68 | -28.46 |
26位 | チリ | 505 | 3.66 | -28.89 |
27位 | ホンジュラス | 498 | 3.62 | -29.79 |
28位 | ポーランド | 495 | 3.59 | -30.32 |
29位 | ペルー | 492 | 3.57 | -30.67 |
30位 | カタール | 492 | 3.57 | -30.69 |
31位 | 中国 | 490 | 3.56 | -30.93 |
32位 | 韓国 | 483 | 3.5 | -32 |
33位 | タイ | 482 | 3.5 | -32.12 |
34位 | コロンビア | 480 | 3.48 | -32.41 |
35位 | メキシコ | 473 | 3.43 | -33.41 |
36位 | グアテマラ | 464 | 3.36 | -34.67 |
37位 | ヨルダン | 447 | 3.24 | -37.11 |
38位 | パキスタン | 435 | 3.16 | -38.7 |
39位 | モルドバ | 429 | 3.11 | -39.63 |
40位 | ベトナム | 406 | 2.95 | -42.78 |
41位 | 日本 | 390 | 2.83 | -45.07 |
42位 | アゼルバイジャン | 382 | 2.77 | -46.26 |
43位 | フィリピン | 380 | 2.75 | -46.51 |
44位 | トルコ | 369 | 2.68 | -48.04 |
45位 | 香港 | 369 | 2.68 | -48.05 |
46位 | ハンガリー | 365 | 2.65 | -48.59 |
47位 | 台湾 | 346 | 2.51 | -51.31 |
48位 | マレーシア | 338 | 2.45 | -52.44 |
49位 | エジプト | 335 | 2.43 | -52.85 |
50位 | インド | 329 | 2.39 | -53.61 |
51位 | 南アフリカ | 323 | 2.34 | -54.52 |
52位 | インドネシア | 322 | 2.34 | -54.62 |
53位 | ルーマニア | 315 | 2.28 | -55.7 |
54位 | ベネズエラ | 243 | 1.76 | -65.77 |
ビックマック指数の計算式
という計算式で求められる。無論、これが試験に出ることはない。
ただ、マイナス表示になるケースもあるということは知っておきたい。
内外価格差によるアプローチ
これを試験に出る可能性のある「内外価格差」で示すと・・・
「購買力平価説」に基づくなら、日本とアメリカのビックマックは同一水準にならなくてはいけない。
2022年7月時点の「購買力平価説」に基づく為替相場は、390円=5.15ドル。
したがって、
1ドル = 390円 ÷ 5.15ドル ≒ 76円となる。
しかし、実際の為替相場は、様々な要因で変化する。
現在は、アメリカが金利を大幅に引き上げたことから、円をドルに替える動きが急加速、そのため一気に円安が進んだことは承知の通り。
2022年9月時点での1ドル=140円前後のレートで考えると、内外価格差は
購買力平価÷為替レート : 76÷140 ≒ 0.54
復習であるが、内外価格差とは、「同じ商品、サービスの日本での価格と円換算した海外での価格の比率」「相手国を1とした時の日本の価格の倍率」である。
ということで、ビックマック指数、内外価格差、いずれにせよ、日本はアメリカより物価が「割安」であるということになる。現在は、日本とアメリカとは何と倍半分の状態だ。アメリカ人は、日本だとアメリカ本国の半額でビックマックを食べることができる。
逆に、アメリカでビッグマックを食べようとすると、逆に、割高になってしまう。それは言い換えると、それだけ「円の購買力」が低下してきたということである。
国内で物価が安定しているなら、当然、消費者にとっては悪くはないということであるが、作り手の企業にとってはモチベーションが上がらない。また一方で、海外での円の購買力が低下してきたということは、日本経済の低迷をもたらす。留学にも痛手だ。
しかし、これまで円高基調だとされ、「強い円」で海外投資を展開してきた日本であったのに、なぜ、こういう状況になったのか?考えられるのは以下のことである。
「円の購買力」の低下理由
そもそも景気低迷が続き、日本の物価が上がっていないのが根本的なところ。
アメリカが物価が上がっているのに対し、日本はほとんど横ばい。
そうなると日本の物価は「相対的に」下落する。
既に確認したように、「物価が下がると為替レートが上がる」と、物価と為替レートは反比例の関係にあるので、円高に振れることになる。
ところが、円の購買力が低下してきたということは「円安」に触れているということ・・・矛盾が生じているのだ。この矛盾をどう考えてやることができるのか?
ひとつ状況として考えられるのは、実際はもっともっと円高であるはずなのに、そこまで「為替レートとしては」円高になっていなかったのでは・・・というもの。と言っても・・・これでは意味が分かりづらいよね。
物価と円高の関係
そこで、丁寧に確認してみると
(1)物価と連動して為替レートが動いた場合
日本の物価が相対的に下落しても、それと同程度に円高が進むと、日本とアメリカの購買力は同じ状況に維持される。
例えば、
②ドル/円は年率平均2%のペースの円高の場合
①アメリカの製品を買おうとすると、2%高く払わなくてはならない。
→円の購買力が2%下がる
②ドル/円は年率平均2%のペースの円高なら、アメリカの製品を買おうとすると、
→円の購買力は2%上がる
③プラスマイナス・ゼロで購買力は変わらず
(2)物価と連動して為替レートが動かなかった場合
日本の相対的な物価下落に見合う円高が進んでいないと、どうなるか。
②ドル/円は年率平均2%のペースの円高の場合
①アメリカの製品を買おうとすると、4%高く払わなくてはならない
→円の購買力が4%下がる
②ドル/円は年率平均2%のペースの円高なら、アメリカの製品を買おうとすると、
→円の購買力は2%上がる
③結果として、2%円の購買力は低下する。
端的に言うなら、「円高」基調と思われていた日本経済ではあるが、ここのところ、実質的には「円安」に進んできたということになる。
先にみた「内外価格差」の数値でいうと、本来1ドル≒76円が円の本来の実力だが、為替レート上では、円安の100円台に「過小」評価されきていたということ。30%程度も「安く」。
実質的「円安」が進んだ理由
では、なぜ、こういった乖離が生じたのか?
考えられるのは、一つは、円高にはメリットはあるが、円高になると輸出が不利になるという「円高不況」への危惧が強く、それを避けるため、円高にブレーキをかけるような金融政策をしてきたから。
日本の金融政策によって、円高基調の中、「そこまで為替レートとしては円高になっていない」という状況を生み出したのではないか。
つまり、「アベノミクス」がその背景だと考えられる。
受験生諸君。どうだろうか? 理解できるだろうか?
もっと分かりやすい説明ができるといいんだが、まぁ、訳の分からない文章を読むのも読解力・思考力向上につながる。
もし、今一歩理解できなかったら、もう一度読み直し、それでも分からないところがあれば、ぜひ質問してほしい。