【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【速修】倫理の正誤問題 ③生命倫理

01 医療の現場におけるコミュニケーションでは、医師と患者との間に専門的な知識や情報に関する差があるので、患者の自己決定権に基づいたインフォームド・コンセントが必要である。

 

02 日本では、終末期にある高齢者の胃にチューブで直接栄養などを送る「胃ろう」は、延命が期待できる一方で、本人に苦痛を与える可能性があるということが指摘されている。
  • 〇胃ろうとは、口から栄養を摂取するのが難しい人のために、胃に穴を開け、直接栄養を送り込む手術や装置のこと。ただし、胃ろうについては賛否両論ある。

 

03 日本では、延命技術の発達を背景に、延命期間の長さだけではなく、どのように生きるのかというクオリティ・オブ・ライフ(QOL)が重要視されるようになってきた。
  • 終末医療において、人生の質QOLか、生命の尊厳SOLかと、対立的に捉えられる場合がある。

    SOLは「命には固有の価値があり、どんなことがあっても死に至らしめる行為は許されない」という考え方。前問の胃ろうあたりはそのためのキュア(救命)。一方、

    QOLは、「 いくら生命は尊いとしても、人間としていかに生きているかが問題で、質の良い生が望ましい」という立場や価値観に基づき用いられる考え方で、キュア(救命)よりも、ケア(支える)を重視する。尊厳死あたりの考え方とも重なる。

    ただし、QOLとSOLは、対立したものというより、相互の緊張感の中で、個別に自己決定すべきもののようにも思う。

 

04 ホスピスでは、その人らしく生きられることを目指して、終末期の患者に対して苦痛や不安を和らげるケアが行われている。
  • ホスピスとは、完治の見込みがない病気などで余命が限られた方に対して、人生の最期を穏やかに迎えるためのケアを提供する施設。SOLを重視したもの。

 

05 死期が迫った末期患者の苦痛除去などを目的として、家族の同意を条件に、安楽死を認める法律が制定されている。
  • ✕日本では「安楽死」は認められていない。

 

06 日本では、臓器移植を行なう場合に限り脳死を人の死とする。
  • 〇日本では人の死は、心臓死を基準とする。それは、[1]脈拍の停止、[2]自発呼吸の停止、[3]瞳孔の散大で判定する。
    ところが、 人工呼吸器が開発されて以来 「脳死」という新しい概念が登場してきた。脳死は脳幹を含む脳のすべての機能が不可逆的に停止し、回復の見込みはないが、人工呼吸器等によって心臓を動かすことはできる。そのため他の臓器は機能している状態。問題文にあるように、日本では、臓器移植を行なう場合に限り脳死を人の死とする。

 

07 臓器移植法が規定している脳死状態とは、大脳が機能停止し意識が回復する見込みのない、いわゆる植物状態のことである。
  • 植物状態脳死は違う。植物状態は大脳は働かなくなっているけど脳幹は働き呼吸もできる。脳死は脳幹を含めた脳全体が働くなった状態で回復の見込みはない。  

 

08 日本では、臓器移植法の改正により、生前の本人の意思表示が不明の場合は、たとえ遺族が承諾しても、臓器提供はできないことになった。
  • ✕1997年「臓器移植法」が施行されたことにより、脳死下の臓器提供が可能になった。「本人の書面による意思表示」と「家族の同意」を必要とするルールであった。
    しかし、2010年の改正で本人の意思が不明な場合は、「家族の同意で提供可」となった。「推定同意制」(拒絶の意思表示がない限り、同意とみなす) ← 日本ではドナー提供が進んでいないため

 

09 本人が事前に臓器提供の意思を表示していれば、家族が提供を拒否した場合でも、本人の意思が優先され、脳死判定後は臓器提供が行われる。
  • ✕あくまで「家族の同意が必要」。本人の提供意思があっても、家族が「同意しない」と臓器提供は不可。

 

10 本人が臓器提供に「同意しない」という意思表示をしていれば、家族は提供に同意できない
  • 〇あくまで「本人が拒否」している場合は提供不可。つきつめると、本人と家族、「どちらか一方でも「同意しない」であれば」臓器提供は不可とインプットしておこう。

 

11 「臓器提供意思表示カード」は、自分の臓器を提供する意思を示すもので、提供を拒否する意思を示すことはできない。
  • ✕拒否の意思表示も可能。なお、意思表示が有効とされるのは15歳以上。

 

12 臓器移植法が改正され、親族への優先提供の意思表示が可能になった。
  • 〇「15歳以上なら」臓器を親族に優先提供できるようにもなった。

 

13 親の虐待を受けて脳死になった子から、親の同意で提供され虐待の証拠が隠滅されたケースがあったことから、移植は15歳以上からという年齢制限が設けられた。
  • ✕改正で「年齢制限がなくなった」。「本人の書面による意思表示」がなくても親の同意があれば可能となり、これまで国内では不可能だった子どもの臓器移植にも道が開かれたことになった。
    ただし、親の虐待で脳死状態となった子どもについては、親の承諾があっても提供者になることは許されない、とされている。

 

14 臓器移植法は、臓器を提供することで対価を受け取ったり、臓器の提供を受けることで対価を支払ったりすることを禁じている。
  • 〇日本においては臓器売買は禁止されている。

 

15 生物の遺伝子情報であるゲノムの解読は、ヒトゲノムについてはまだ行われていない。
  • ✕ヒトの遺伝情報「ヒトゲノム」は人間(ヒト)のもつすべての遺伝子の情報。2003年、日本やアメリカなどの研究機関が参加した「ヒトゲノム計画」のもとで解読が終了したと発表された。遺伝子の異常による疾患(遺伝病)や遺伝子が関与する疾患(ガン等)の原因解明と、その結果に基づく診断・治療法の開発遺伝子レベルの個人差を考慮した治療法の開発などが期待されている。

 

16 ユネスコは、遺伝的特徴に基づく差別の問題などを扱う「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」を採択している。
  • 〇1997年のユネスコ総会で採択された。ヒトゲノムを人類の遺産とし、「何人も、その遺伝的特徴の如何を問わず、その尊厳と人権を尊重される権利を有する」と宣言、遺伝子の異常による疾患(遺伝病)等によって差別が生じないよう、釘を差した。

 

17 現在、クローン技術の研究が進められているが、ヒトのクローン胚の作成は、法律によって規制されている。
  • 〇クローン技術とは、遺伝的に同一な個体を作製する技術である。古くから農業において使われてきた。ヒトクローンを作成することは技術的には可能であるとされているが,人の尊厳の保持等の観点から,法律によって規制されている。

 

18 日本では、性別適合手術は既に行われているが、戸籍の性別記載を変更することは、法律上、認められないとされる。
  • ✕変更が可能となった。ただし、戸籍の性別記載変更の要件として、性別適合手術を求めていることに対しては批判がある。

 

19 日本では、遺伝子による診断が技術的に可能となったので、出生前の胎児に遺伝性疾患の診断を行うことが義務づけられた。
  • ✕義務づけではない。新型出生前審査は、母体の採血検査によって、胎児の染色体の変化を調べる検査で、遺伝子配列を解読することで染色体疾患の有無を調べることができる。確定検査には羊水検査と絨毛検査があり、これらは母体の腹部に針を刺すという痛みを伴う検査である。

 

20 出生前診断とは、胎児の障害や遺伝性疾患の有無等を出生前に検査することなどを目的として行われるものである。
  • 〇新型出生前審査については、かつては35歳以上という年齢制限や、いわゆるダウン症候群の子を妊娠・分娩した経験のある方、超音波検査(エコー検査)で異常を指摘された場合といった条件があったが、2022年に撤廃された。時事問題として出生前診断が出題される可能性がある。

 

21 出生前診断は、生まれてくる子の情報を得ることを目的として行われるが、生命の選別につながるという指摘もある。
  • 〇生命の選別に繋がりかねないという危惧が指摘されている。そのため、胎児の先天性疾患(障害)を理由とした人工妊娠中絶自体は認められていないが・・・新型出生前診断で病気がわかった夫婦の多くが、別の理由付けで人工妊娠中絶を選ぶということが、論議をよんでいる。

 

22 人工妊娠中絶は、妊娠の継続・分娩が経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあっても、法律上、認められないとされている。
  • ✕身体的、経済的理由による中絶は可能とされている。経済的理由とは、収入が少なくて子供を育てられないといったもので、これも認められている。性暴力を受けて妊娠した場合も。
    なお、人工妊娠中絶は、「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」に限って行うことができる。現行では満 22 週未満までである。

 

23 日本では人工授精、体外受精ともには認められていない。
  • ✕ともに認められているが、法的に結婚している夫婦のみに認められる。
    なお、人工授精では、精子を管で直接子宮に注入することで体内で受精が起こり 、体外受精では、予め採卵した卵子と、採精し処理された精子を同じシャーレに入れ、体外で受精を起こす。
    また、夫以外の第三者から提供された精子を子宮内に注入して妊娠をはかる「非配偶者間人工授精」も認められている。 

 

24 代理母は不妊夫婦のために別の女性が代わりに出産するもので、日本でも認められている。

 

25 代理母による出産が行われると、生まれた子の親権や養育権をめぐって争いが起きうるが、現状では、出産した人が法律上の母親になる。
  • 民法においては、法律上の母親は「子を産んだ女性」となっている。 これを代理出産に当てはめると、代理母が法律上の母親となる。
    ただし、前問で確認したように、法制化されている海外で代理出産を行う必要がある。そのため、「養子縁組」というかたちをとるそうだ。
    なお、問題文にあるように、代理母を認めている海外でも、生まれた子の親権や養育権をめぐって争いが起きることはあるようだ。

 

26 医療へ応用する研究が進められてきたES細胞は、受精卵の利用などに伴う倫理的問題が指摘されている。
  • 〇ES細胞(胚性幹細胞)は、「受精卵」の一段階である胚盤胞から取り出した内部細胞塊から単離された細胞で、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(多分化能)を持ち、 ほぼ無限に増殖させる事が出来るため、再生医療への応用に注目されている。しかし、「受精卵の胚の解体」などによりつくられるため、受精を生命の始まりとみる立場からは倫理的な問題が指摘されている。

 

27 iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、その作成にあたってヒトの受精卵などの胚を壊す点で、倫理的な間題をめぐる議論がある。
  • ✕人間の皮膚や血液などの「体細胞」に、ごく少数の因子を導入し、培養することによって、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力をもつ「多能性幹細胞」に変化する。これがiPS細胞(人工多能性幹細胞)と呼ばれるもので、再生医療を実現するために重要な役割を果たすと期待されている。無論、リスクも含めて倫理的な課題がない訳ではないが、「ヒトの受精卵などの胚を壊す」ことで形成されるものではない。