【速修】⑫紛争・難民・軍縮・領土問題(3)領土問題
52 1951年のサンフランシスコ平和条約で日本が放棄した千島列島の中に北方四島は含まれない、とするのが現在の日本政府の立場である。
- 〇承知のように北方領土問題は遅々として解決に向かわなかった。そして、現在のウクライナ問題から、当分の間交渉はできない状態に。この問題文は、基本的な日本の立場を確認したもの。1951年サンフランシスコ平和条約において、日本は千島列島は放棄。しかし、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の北方4島は放棄していないとし、これらを日本固有の領土とし、ソ連→ロシアが不法占拠しているとしている。なお、サンフランシスコ条約をソ連は署名していない。従って、日本の主張そのものをそもそも認めていないということになる。
53 1956年の日ソ共同宣言において、ソ連は、平和条約締結後に歯舞諸島および色丹島を日本に引き渡すことに同意した。
- 〇既に触れたが、日ソ共同宣言の結果、国交回復したが、宣言は「正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結交渉が継続される」こと、およびソ連が歯舞・色丹を日本に「平和条約が締結された後、現実に引き渡す」ことを規定している。従って、4島のうち近い2島は返還を期待しているが、その前提としての平和条約締結の動きとなっていない。
54 1965年の日韓基本条約締結以後、ソ連は、歯舞諸島、色丹島を含めて領土問題は解決済みであるという態度をとるようになった。
55 1998年の日ロ首脳会談で、領土問題を協議する「国境画定委員会」と、北方四島に関する「共同経済活動委員会」の創設が合意された。
- 〇この問題を含め上記の4題は2000年の政経問題。「時事問題」として出題されたものだが、相当意識して時事問題をチェックしていないと回答できない。この問題はもう問われることがなかろう。正しいのは正しい。なお、北方領土問題は以降一度も出題なし。現社での出題もなし。今後も出題の可能性は低いが、現状の認識だけはもっておこう。なお、2018年のプーチン・安倍会談では、日本政府は大きな方針転換をしたとされる。56年の宣言は「2島」引き渡しを明記しているが、一方で「4島」には触れていないので、「4島返還」から「2島先行返還」を軸とした交渉に大きく舵を切ったと言われている。「2島先行」は4島の帰属を確認し、まず近い歯舞群島と色丹島の「2島」を返還し、残る国後、択捉は協議継続ということだったようだ。しかし今やこれも頓挫。ロシアが一方的に交渉の中断を通告。
56 竹島については、1952年に、李承晩韓国大統領が「海洋主権宣言」を行って、いわゆる「李承晩ライン」を国際法に反して一方的に設定し、同ラインの内側の広大な水域への漁業管轄権を一方的に主張するとともに、そのライン内に竹島を取り込んだことに起因する。
57 尖閣諸島を中国が実効支配しており、日本は国際司法裁判所への付託を提案しているが、中国がこれを拒否。
58 軍事演習等の事前通告などによって、国家間の不信や誤解を軽減・除去し、双方の安全を図ろうとする取組みは、信頼醸成措置と呼ばれる。
59 国連開発計画(UNDP)は、その報告『人間開発報告書』で、開発の新たな枠組みとして「人間の安全保障」を提唱した。
- 〇1994年に出された『人間開発報告書』で初めて提唱された。その後について、「日本政府の発意と国連事務総長の支持により、「人間の安全保障委員会」が創設された。」「日本政府は、国連において「人間の安全保障基金」の創設のために主導権を発揮した。」は、いずれも〇。人間の安全保障に日本が積極的であったことが問われている。一方で、「世界人権会議(ウィーン会議)では、女性や子どもの人権の確立だけでなく「人間の安全保障」も主なテーマとして議論された。」は✕。世界人権会議は1993年に開催されたものだが、取り上げられることはめったにない。これらは、2007年現社の問題だが、消去法で世界人権会議を✕として選ばせるものであった。「人間の安全保障」ではなく、「少数民族の人権保護」が主なテーマとして議論されたということであろうが・・・、判断が難しい酷な問題であった。ただし、ちょうど2007年に、国連で「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択されたので、ある意味では「時事問題」であった。ちなみに、現社では2016年にも、「先住民族や少数民族の権利を保護することの重要性を明記したウィーン宣言は、国連人権理事会において採択されたものである。」という問題も出でいる。国連人権理事会ではなく「世界人権会議」なので✕ということになるが、どうも「世界人権会議」「ウイーン宣言」を結構重視しているようだ。教科書ではほとんど扱われていないのにね。
60 人間の安全保障では、人間の生存や尊厳等に焦点が当てられており、環境破壊や人権侵害などの脅威も安全保障上の課題として取り上げられている。
- 〇ここのところ「人間の安全保障 Human security」が重視されてきた。これはこれで正しい。が、一方で、今、国家による安全保障 National security の脆弱さが再び課題としてあがってきた。人類は、いつになったら成熟した存在になるのだろうか? どうすれば、成熟することができるのか? 特別に悪い人間は殺してもいいのだろうか? どうしたらその憎しみから脱却できるのか?・・・君たち受験生も、学びの機会を得ている今だからこそ、深く、広く学び、そして大地に深い根を張り、多くの命を養うことのできる大木になってほしい。受験勉強つらいかも知れないが、大木になるための一里塚だ。地球を救い、未来の子どもたちに希望を与えるために・・・頭を鍛え、心も耕せ。・・・以上をもって第1部の「政治編」とする。今後、さらに修正加筆していくが、プーチンの戦争が今すぐにでも終わることを祈りながら。