【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【今日の時事問題】格差の実相 その1

前回、所得格差を示す「ジニ係数」、2021年度の「当初所得」のジニ係数が、悪化していることに触れた。

 

データで見る所得格差

所得の種類

・「当初所得」とは、税や社会保険料を支払う前の所得のこと。
・「可処分所得」は、税や社会保険料を差し引いた、手取り額のこと。
・「再分配所得」は、当初所得から税や保険料を差し引き(→可処分所得)、

     年金などの社会保障サービス分を加えた所得のこと。

  低所得者は、当初所得 < 再配分所得 となり

  現役の高所得者は、当初所得 > 再配分所得 と再分配で逆に所得が減少

       してしまうこともある 

当初所得階級別世帯割合

その「当初所得」はどのような状況なのか?
厚生労働省が発表している
所得再分配調査」から、以下のようなデータを抽出してみた。
これで、およそ30年間の推移も分かる。

これをグラフ化してみた。

グラフから読み取れること

このグラフ、あるいは数値を見て、どのような変化が見て取れるであろうか?

3つあげるとすると、どんな点を指摘するであろうか?

おそらく以下の3点かな、と思われる。

 

■低所得層が増加してきていること。
→ これだとジニ係数が高くなるのも頷ける・・・
  日本は本当に格差社会になってしまっている

高所得者層は減少気味であること。
 ※ただし、2021年は少し増加したけど

■全体的に世帯収入自体は地盤沈下していること。

 

平均所得が低下していることに、「えっ、これって本当?」と引っ掛かりを感じた受験生もいたはず。
ただ一つだけ注意しておきたいことは、これはあくまで「世帯の所得」。

と言うことはどういうことか?
そう、「世帯が小さくなってきている」。端的に言えば、「単独世帯」が増加し
ているということであろう。
単独高齢者世帯や一人親世帯の場合、所得がかなり厳しい状況であることが予測される。

 

ちなみに、2021年の当初所得の「平均」が423万円。
「中央値」はそれよりやや低いものと予想されるので、仮に400万円だとすると、その半分の200万円あたりが「相対的貧困線」かと推測される。
その200万円以下の状況をもう少し細かく見ると・・・2021年の場合

  ■50万円未満        26.4%

  ■50万~100万円未満    6.6%

  ■100万~150万円未満    5.7%

  ■150万~200万円未満   4.7%

  

何と50万円未満が25%以上も占めているのだ。
その多くはおそらく「高齢者の単独世帯」であろう。

国民生活基礎調査の結果

昨年発表された厚生労働省国民生活基礎調査によると、高齢者の単独世帯は742万7000世帯で、高齢者世帯の28.8%で、全世帯のおよそ14%近く。女性の割合が高く、女性の老齢年金はおおかたのところ低く、家族の支援がなければ「生活保護」がないとやっていけない状況も多かろう。

しかしながら、こうした高齢者の単独世帯は、福祉の支援が入っているとはいえ、「見えにくい」存在だ。貧困は確実にあるのだけど、ないことにされてしまいかねない。声なき声がかき消されている現実があるのではないか。

 

また、高齢者「以外」の単独世帯も全世帯の22%程度占めるが、中には「ワーキングプア」と呼ばれる、働けども苦しい生活を余儀なくされている勤労層もいる。
さらに、ひとり親家庭の場合も、厳しい状況にあろう。「自己責任」として、支援のないケースもあるのではないか。また8050問題の世帯などもこの中に含まれる場合もあろう。

このあたり明確なデータを探し当てることができないが、いずれにせよ、こと当初予算については、世帯の1/4が極度の貧困状態に、またそれも含めて、半数近くの世帯が不安定な状況に置かれているという現実なのだ。

 

世帯構成の変化

世帯構成の変化も受験生なら把握しておきたい。



上記折れ線グラフには、「高齢単独世帯」も追加してみたが、1990年の4%から10%も高くなっており、このあたりが「当初所得」における低所得層の増加の背景であろう。

 

所得再分配調査報告書

しかし、一方で、社会保障サービスの結果、「再分配所得」では、格差はある程度は是正されることになる。その状況が分かるのが、厚生労働省が出している「所得再分配調査報告書」の以下のグラフだ。

この結果、低所得者層については、100万円未満の層が33%から5%に減少している。27%の人たちは100万から250万あたりのところに底上げされた結果となっている。総務省の家計調査では、全世帯の平均消費支出はおよそ240万円。となるとやはり250万未満の層は、最低限度の生活を維持するのに精一杯であろう。

読解問題

以下の文が正しいかどうか、判断してみよう。

・「社会保険や税による所得再分配で・・・100万円以上800万円未満の世帯の割合が増加した。」

・「所得分配後の世帯分布は当初所得の分布より中央に集中している」

 

グラフの読み取り問題で、こんな正誤問題が出ることがあるが、これ自体はいずれも正しい。
所得再分配調査報告書」に、書かれた文言でもある。「中央に集中している」という表現はやや曖昧で判断しにくいが、問題として出された場合は、おそらく、明らかな誤りを含んだ別のものがあるはずなので、とりあえずこいつはカッコにくくって、別に仕込んである誤文を見つければよい。

 

なんてなことで、話が逸れたので立て直すことにして・・・
最後に、しかし一方で、「再分配」によって格差はある程度是正されてはいるが、

「年間消費支出÷年間収入」は、

収入が低いほど・・・高い数値になるor低い数値になる・・・

どちらだと思う?

確かに収入の高い人はより消費はするだろうけど、当然ある程度は抑えて貯蓄、あるいは投資に回そうとするのではないか?ところが、収入が低い人は余力がない。平均的な収入の世帯では、年間消費支出÷年間収入は65%程度と聞いたことがあるが、収入が低いと年間消費支出÷年間収入は90%を超えてかかり、余裕などないということになるのでは。

 

と言うことで何が言いたいかと言うと、年間の所得だけでなく、貯蓄あるいは金融資産なども見ないと、格差の実相はまだまだ明らかにされないということ。

次回は、金融資産の格差についても調べてみたい。