【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【今日の時事問題】格差の実相 その2

 

  前回最後に「再分配所得」の階級別世帯割合のグラフを提示した。

fukuchanstudy.hatenablog.com

 

厚生労働省が出している「国民生活基礎調査の概況」(2022)という資料を見つけ出した。

www.mhlw.go.jp

これは共通テストでも活用されそうな予感がする。

各種世帯の1世帯当たり平均所得金額の年次推移

その一つが、以下の、各種世帯の1世帯当たり平均所得金額の年次推移グラフである。

 このグラフで、受験生諸君はどんなことを「語ること」ができるだろうか?

以下、「教員と生徒」との対話を書いてみた。

対話問題形式の問答

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このグラフでどんなところに注目したい?
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このグラフは「各種世帯」別の統計というところが肝ですよね。まず目立つのはやはり「高齢者世帯」の平均所得が低いということですかね。 
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そうだね。「高齢者世帯以外の世帯」の半分しかないよね。
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うちも、ちょっと離れたところにおばあちゃんが一人暮らしをしていますけど、もう仕事はしていませんので、年金暮らしです。でも、畑を耕し、節約しながら、それでも元気にやっています。
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それはいいね。元気が一番。高齢者の場合、子育てにお金をかける必要がなければ、食べてさえいければ・・・といったところがあるからね。
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それに対して、「児童のいる世帯」は、子育てにお金がかかるから、だから一番所得が高いのですね。
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そうだね。現役で共働きだとかなりの所得になるよね。また、このグラフは「再分配所得」だから、「児童のいる世帯」にはあるものが加味されているけど、分かる?
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えっ・・・
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ヒントは「手当」
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あっ、児童手当ですか?
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そう。現在、岸田内閣は、この児童手当を拡充しようとしている。
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でも、先生、「児童のいる世帯」は、全世帯平均よりかなり高いですよ。
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そうだけど、出るものも大きいよ。すぐにではないけど、子どもが大学に行くために貯金したりする必要もある。
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私の家も、大学進学にむけて貯めてもらっています。それに塾のお金も。
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ありがたい話だよね。でも、「児童のいる世帯」のなかには、ひとり親家庭もあり、ひとりだと世帯収入は厳しい・・・
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確かに「児童のいる世帯」全体の所得は高く出ているけど、この中でも相当な格差があるんでしょうね。
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そう、「大事なものは目に見えないんだよ」
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先生出ましたね、得意の言葉が・・・
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そう、このフレーズ大好き。じゃ、もう一つ、このグラフから見えること、読み取りたいのが・・・このグラフは、「推移」を示したものだから・・・
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あっ、先生、所得が右肩上がりになっていない・・・横ばいか、むしろ右肩下がりという点ですか?
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その通り。およそ30年も日本では賃金が上がっていないことが何度か話題になった。
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他の国は上がっているのに・・・と聞きました。
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そうだ。では、なぜなのか?この点はまたしっかりと勉強したいけど・・・

ただ、今回、このグラフのスタート地点と、ピーク時のことだけは触れておこうかな。

まず1985年頃というのは、経済的にどんな時代だったか、勉強した?

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確かもう高度経済成長は終わっているはずですよね。
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そうだね。1973年のオイルショックで終わり。そして1979年には第二次オイルショック。でも日本は技術革新で1980年代は安定成長していた時期だ。そして、このグラフには、それぞれ最高値、ピークがどこであったかが示されているけど・・・全世帯の場合は、1994年・・・これって何?

 

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先生、これは分かります。バブル景気のはず。
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そうだね、バブル景気は1986年から91年までと言われているけど、その後バブルが崩壊、「平成不況」に突入していったんだ。ただ、グラフを見る限り、所得への影響はやや遅く出てるようだけどね。このグラフは「再配分所得」、つまり社会保障制度によって維持された所得だからかな。 経済成長率のグラフだったらもっと顕著にバブルの崩壊がわかるほど変化しているけどね。
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先生、でも、以降も所得は横ばいか、「全世帯」平均なんかは、完全に右肩下がりになっていますよ。これが、「失われた30年」ってことですか?
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よく知っているね。「失われた10年」どころか、「失われた30年」と成長のない時代は続いてしまっているんだけどね。
今回は深入りしないけど、このグラフを使って、経済の歴史的な展開を答えさせるような設問もあり得る。でもまぁ、それは置いとくとしても、「失われた30年」を実感してしまうグラフだね。
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先生、でも、一部の裕福な人はいるんじゃないですか?もう少し、格差の状況も可視化したいんですけど。
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分かった。じゃ、次に、現在の所得の分布状況が分かるグラフを見てみよう。

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先生、以前、「再分配所得」のグラフを見たことがありました。それは1000万円以上は一括りだったんですが、このグラフでは1000万円以上は段階的に見事な軌跡を描いてますね。
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計算すると1000万円以上は12.6%になるようだが、きれいな右肩下がりになっているね。でも、10世帯中1世帯ぐらいしか1000万円を超えていないんだという感想をもってしまう。と言うのは、うちは二人共教員をしていたから、現役時代はおそらく1000万円を超えていたはず。でも、裕福だという感じはなかったからね。家のローンに追われていた面があったからかな。
でも、さすがに、2000万円以上は少なくなるね。1.4%か。100人に1人程度か。
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先生、でも、これはあくまで、1年間の所得ですよね。このうち所得の多い人は「不動産」を取得したり、株で儲けたりと、資産ということになれば、もっともっと格差はひどいのではないでしょうか?
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君、鋭いね。じゃ、後で金融資産の資料を探してこよう。ただ、その前に、このグラフのことをもう少し補足しておくけど、このグラフでより大切なのは、高所得のところではなくて、低所得者層のところ。まずは平均所得より低い人が6割もいること。
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5割じゃないんですね。
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とんでもない高所得者がいると平均所得を引き上げる。そのため、そうなるんだね。そこで、「中央値」を基準とする見方もある。「相対的貧困率」と呼ばれるものがあり、これは、「中央値」の「半分以下」の所得しかない人たちの占める割合。ただし、これは「等価可処分所得」という、ある計算式で変形した数値で求めるもので、今回のグラフは「再配分所得」。だから、中央値が423万円だから211.5万円以下は相対的貧困層というふうにはいかない。けれど、2割近くは生活に追われていると予想される。
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生活保護はどの程度の状況の場合受給できるのですか?
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住んでいる場所と世帯の状況によって違うんだ。東京都、単独世帯の場合が、収入月額13万以下。年額だと156万以下が対象ということになる。
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このグラフで見ると、150万円以下の世帯は10%程度ありそうですが・・・
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現在生活保護世帯は164万世帯だと聞いたことがある。今回の資料に出ていた全国の世帯総数は 5431 万世帯ということだから、計算すると・・・3%程度かな。
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所得が少ない世帯全部が認められている訳ではないということですか?
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そうだね。生活保護世帯の半分は高齢者世帯ということだけど、高齢者の場合、1年間の所得は年金だけで低くても、これまでの貯蓄や退職金などがあり、ある程度の生活水準を維持している場合は、生活保護の対象にはならないケースもある。それから、生活保護はあくまで「申請」しなければ認められない。また、生活保護になると車を保持できないなど規制があり、それで、希望しないケースもあると聞いたことがあるよ。
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そうなると、セーフティネットからもれている人も出てきているということですね。
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そうだね・・・格差の実相はなかなか掴めない。
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先生、「大事なものは目に見えないんだよ」、ですね。
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おっ、君もなかなか言うようになったな。