ウンチクコーナーを設定しました。
社会科だけでなく、英語や国語の勉強にもなるよう、ウンチクを垂れます。
矛盾
【意味】つじつまが合わないこと
AとBが相反している状況のこと
矛盾という言葉の成り立ち、故事成語は承知の通り
例:「黙って、しゃべろ」
英語では2種類の言い回しがあるようだ
Contradiction (相反する)
contra = against dict = say
・the difference between one's speech and action,called contradiction
Inconsistent(発言が前回と違う…首尾一貫していない)
in = 否定の接頭辞 con-sist 成る、両立する
・He made an inconsistent comment.
二律背反
【意味】二つの矛盾する内容のうち、AとBがどちらも妥当性をもち、両立し得ない状況のこと
矛盾の一種
ドイツ語のAntinomie(アンチノミー)の訳語 哲学用語
「社会政策の課題は公平性と効率性との二律背反関係を解決することである」
equity efficiency
葛藤
【意味】心に相反する欲求が同時に起こり、どちらを選ぶか悩むこと
心理学用語
Conflict conともに flictぶつける
ジレンマ
Dilemma
・ジ(ディ)=二つの
・レンマ「全体をまるごと直観によって把握する」知性
【意味】自分の思い通りにしたいことが二律背反に陥り、「板挟み」になった状況
どちらを選んでも不利益が生じるため悩んでいる状態
二律背反の一種
be in a dilemma ジレンマに陥る
※どれも好ましくない三つのうちから、一つを選ばなければいけない、という三者択一の窮地は、トリレンマ(trilemma)と呼ぶ。
トリプルのレンマ国際金融のトリレンマ:
①国際的な資本移動の自由化、
②固定為替(かわせ)相場制(あるいは安定的な為替相場制)、
③自立的な金融政策の遂行という三つの政策を同時に実現することはできない、
という国際金融論の命題。
トリレンマの原義は三者択一ないしは三重苦であるが、この場合は三者のうち一つだけが選択できないという意味で使用されている。
パラドックス (逆説)
【意味】矛盾するようで、「実はつじつまが合っていること」
AとBが相反するようで実はしていない
一見矛盾、実は真理
一般に真実だと想定されていることの逆を述べて、そこにも真実が含まれていることを伝える表現法でもある。
※逆に、一見正しそうに見えるが誤っている論理は、「詭弁」
Paradox para-反対の dóx: 意見
接頭語Paraはagainst「反対の」という意味とbeside「そばに」という意味の二つがある。
・against「反対の」の意味の用法として、「逆言法」を意味するパラレプシス (paralepsis)
「お礼の言葉もありません」といった、言わないといって実際には言う表現法のこと。
・beside の例としてparallel para そばにallel お互い→ お互いそばに並んで立つ = 平行な
なお、パラリンピックのパラの由来は「paraplegia(パラプレジア:脊髄損傷による下半身麻痺)」と「Olympic(オリンピック:総合競技大会)」を合わせて造った言葉だったが、今日では、parallelと同じようなニュアンスで、並び立つももう一つのオリンピックという意味で使用されるようになったとのこと。
最も端的なパラドックスが・・・「急がば回れ」
Make haste slowly. More haste, less speed.
英単語も、接頭語や接尾語、語根などを知っておくと、たくさんの単語を類推で判断し、速読読解できるようになる。これも急がば回れの一種かな。
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
有名なパラドックスに、ゼノンのパラドックス(アキレウスと亀のパラドックス、飛んでいる矢のパラドックス)があるが、分かりづらいので内容までは触れないこととする。
代わりに、マックス・ウェバーが明らかにした歴史的なパラドックスを紹介する。
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
「カルヴァンの説く予定説・・・救われるかどうかは予め決まっている。では、どうしたら救われるかどうかが分かるのか?・・・神の栄光実現のために禁欲的に働くしかない。職業※に没頭することが天命・・・それができる人が、そしてそこで得られた富こそが、実は選ばれていることの証しなのだ」
※職業はドイツ語ではBERUF・・・神から授かった使命・天職という意味
→その富が神の栄光実現のために「拡大再生産」へと費やされることに
プロテスタンティズムの「職業倫理」が、資本主義の「精神」へと転化
営利の追求を敵視していたプロテスタンティズムの職業倫理が、実は結果的には営利を追求する近代資本主義の生誕に大きく貢献した。一見矛盾するように見えるものが重なりあった、それは歴史上稀にみるパラドックスであった。
・・・世界史選択者は覚えておくとよい。
※数学的「背理法」
数学でもう習ったかな?
【意味】ある判断を否定し、それと矛盾をなす判断を真とすれば、それから不条理な結論が導き出されることを明らかにすることによって、原判断が真であることを示す証明法。
以下の問いに背理法を用いて挑んでみよう。
A、B、Cという営業マン3人がいる。そのうち1人だけが商談で成約にこぎつけたのだが、各人は次のように発言した。
A:成約できたのはBではない。
B:成約できたのはCではない。
C:成約できたのは私です。
ただし、発言の内容が正しいのは実際に成約できた1人だけである。
さて、誰が成約にこぎつけたのか?
背理法で考えると…答えは( )。・・・分かるかな?
【発展】トレードオフ(trade‐off)
【意味】同時には成立しない二律背反の関係を意味する経済用語。
目的に向けて、一方を成立させればもう一方が成立しないといった、二つのあり方の関係を表す。
増税によって国の歳入が潤沢になれば、国民皆保険による医療費負担・年金・雇用保険などの社会保障が充実し国民の生活は豊かになる しかし増税すれば国民の負担は増加する事になり、増税案は反対され社会保障のさらなる充実が難しくなってしまう。
なお、先に触れた公共性equityと効率性efficiencyもトレードオフの関係にあるとも言える。
現在、効率性をより重視する風潮が強いが、本当にそれでよいのか? 効率性あるいは生産性ばかりが重んじられると、社会に様々な歪が生じてしまうのでは? 地方では多くの小学校が統合され、地域に元気が失われつつあるが、これで本当によいのか?
「トレードオフ曲線」(フィリップ曲線)
完全雇用と物価の関係をグラフで表すと反比例の形になる。完全雇用を目指し失業率が低下すると企業で働く人が増え、企業が商品やサービスを生み出すためにかかる費用が増え、その結果商品やサービスの価格が高騰し、物価が上昇することになる。 一方で物価を下げるためには企業は費用を抑える必要があり、コストカットの方法として雇用を控えるようになれば失業率が増加することになる。雇用と物価は両立が難しいトレードオフの関係であるということになる。
「アンビバレント」ambivalent
同じ対象や事柄に対して、一人の人が相反する感情を同時に抱くこと。
「両義的」:現代文でもよく使われる言葉
「母親に対して愛情と憎悪のアンビバレントな感情を持つ」などと、正反対の感情を同時に抱くことを表現するときに使う。
※接頭辞「ambi-」「両方」あるいは「周囲」の意 「両生類」amphibia
西洋哲学
西洋哲学は、二項対立的な捉え方をする
プラトン以来、主観・客観 精神・身体 理性・感性 具体・抽象 普遍・特殊などなど、白か黒かと、対立的にとらえるという特長がある。そして、どちらかを優れたものとしたり、正・反→合と止揚する、折衷案的な思考方法(これがヘーゲル流の「弁証法」)をとったりもする。
こうしたモデル的な捉え方に異議申し立てをした現代フランスの哲学者が、ジャック・デリダ。フクフクちゃんが学生時代に原書で格闘した哲学者でもある。数年前のセンター試験でも倫理・政経で出題された。以下がデリダの「脱構築」に関する選択すべき正文である。
「理性と狂気などの二項対立を立て、一方を他方より優越させる伝統的な論理は、値に序列を付け、劣るとされた側の価値を貶めてしまう。そうした論理を内側から突き崩し、組み替え続ける「脱構築」が必要である」。
もはや、男・女という二項対立的な図式に当てはまらないのが人間であることは承知の通り。デリダやフーコーといったフランスの哲学者は、こうした二項対立に揺さぶりをかけ続けることで権力にたてつき、マイノリティーを勇気づける営みを推進したと言える
(文系選択者は3年次に「倫理」で学習することになる)。
オリンピックとパラリンピック。二つが並置された訳だが、現在ではさらに、障がいがあろうがなかろうがともに皆がスポーツを一緒に楽しもうと、パラスポーツという言葉が、健常者も障害者People with disabilitiesも同じルールの下で行うスポーツ、という広い意味をもつ言葉として用いられるようにもなった。
多様性Diversityの共生Symbiosisである。
dis 異なる別々の versus 方向 → 多様
syn共に bio 生きる
We should have a symbiotic society where everyone can live with or without disabilities (regardless of disability)、and free of gender or race.
Whether they are with or without disabilities, I regard all people as individuals to be respected.
・・・こんな英作文が書けるようになるといいね。