【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【今日の時事問題】社会保障について その5

老齢基礎年金の基礎知識

 共通テストでは、当然様々な知識が要求される。たとえば老齢基礎年金一つとっても以下のようなことが知識としてストックされているかどうか問われる。

 

◯老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取ることができる。

 

◯老齢基礎年金は、老齢基礎年金は20歳以上60歳未満の国民が加入しなくてはならず、学生も加入対象から除外されていないが、学生である期間は免除申請できる。

 

◯会社員・公務員などに扶養される主婦や主夫も老齢基礎年金の強制適用対象であるが、保険料の納付が免除される場合もある。

 

◯老齢基礎年金は、賦課方式によるもので、高齢者世代に支給する年金を、その時点の現役世代から徴収した年金保険料で賄う方式である。

 

◯老齢基礎年金は一律の保険料を納付しなければならないが、保険料は物価や賃金の伸びに合わせて調整され変動する。

 

◯将来の現役世代の保険料負担が重くなりすぎないように、賃金や物価が上昇するほどは年金額を増やさないよう調整をする、年金の給付水準を抑制する制度が導入されている。ただしデフレの時は発動されない。

 

◯老齢基礎年金支給の財源の1/2は公費負担である。

 

いかがであろうか、高校生諸君。老齢年金なんて遠い先のことで関心が低いかもしれないが、この程度は知っておきたい。

 

対話問題

ところが、共通テストになって、単に知識だけではなく、「知識を前提にした判断力」を求めた問題が多くなってきた。

その際、よく使われるのが、教員と生徒との「対話」の形式をとった問題である。

このブログでも、この形式のものをどんどん作りたいと思っているが、とりあえず、社会保障について、以下、今回は、猛暑で、問題を作るだけのエネルギーがないため、とりあえず「仮想の対話」のみ作成してみよう。

 

※下線部分は知識として問われる可能性が高い。

※波線部分が「提案」として問われるような問題もあり得る。

 

生徒 : 先生は定年退職後、再任用教員として働いているんですよね。

教員 : 本当は悠々自適に晴耕雨読の生活をしたいけど、65歳にならない と年金が出ないんでね。

生徒 :  年金だけで生活できるようになるんですか?

教員 :  65歳以上の単身無職世帯に必要な生活費は最低14万円、65歳以上の夫婦のみの無職世帯だと、日常生活費は最低25万円程度が必要だそうだ。うちは夫婦ともに教員だったから、二人とも年金が出るようになったら、基礎年金に加えて、2階建て部分の年金があるため、年金だけでも何とかやっていけそうだとふんでいるけどね。でも、基礎年金だけの人はとてもじゃないけど厳しい・・・。

生徒 :  基礎年金だけの人はどの程度の年金なんですか?

教員 :  20歳から60歳まで年金を納入した人だと、現在は月6万5000円程度だそうだ。ただし、その年金から医療保険料や介護保険料が天引きされるため、受け取る額はもっと少なくなる。そのため、年金だけではとてもじゃないけどやっていけない・・・蓄えが2000万円程度ないと老後破産するなどと報じられたことがある。

生徒 :  そうなると働き続けなくてはならないということにもなりますね。

教員 :  そうだね。元気で、働きたい意欲のある人は、年金をもらいながら 働くこともできるよ。しかし、病気や介護で働くことが難しい場合は、厳しいね。

生徒 :  そんな場合、生活保護を受ける人も多いのではないですか。

教員 : 確かに単身高齢者世帯の生活保護受給者が増えている。老齢年金が実は平均で月額5万程度なので、支援がなければ当然生活保護を受けないと生きていけない。ただし、生活保護費も、給料や年金などによる収入がある人は、それを差し引いた金額。だから、あくまで、ぎりぎり最低限度の生活を余儀なくされるけどね。

生徒 先生、その生活保護はすべて税金でまかなわれるんですよね。

教員 : そうだよ。「公助」。でも、実は、基礎年金も半分は公費負担、つまり税金が投入されているんだよ。

生徒 : えっ、そうなんですか。年金は、保険料だけで賄っていると思っていました。

教員 : 本来は保険料が主財源の方針だけれど、給付基準を維持するために、また保険料負担を軽減するために、現在は基礎年金については1/2まで公費負担の比率が高まったんだ。ただし、厚生年金は保険料だけで、公的資金は投入されていないけどね。

生徒 : 先生、「国民年金の空洞化」ということが問題視されていたということを聞いたことがあります。年金制度の将来に対する不信感から、自営業の人達の中には年金を納入しない人が増えていると。あるいは、現在非正規の人が増えて、その未納も増えているとのこと。

でも、税金が費やさるなら、入らないと税金による公的な支援を受けられないことになりますよね。この公的負担が1/2もあることはあまり知られていないのでは?

教員 : そうかもね。また、基礎年金の保険料は、定額のため「逆進性」が強い。厚生年金のように所得比例ではないからね。しかも天引きではなく「納付」が原則のため、どうしても保険料未納・滞納が出てくるという面もある。そうなると、老後の所得保障制度としての年金制度を機能不全に陥らせることにもなるよね。

生徒 : 先生、だったら、むしろ保険料を所得比例にして、税金をもっと投入して、誰もが最低限度の生活ができる15万程度に基礎年金の支給額を増やしたらどうですか?そうなると、年金に入らずにいる人達も制度に呼び込むことになるのでは。また、高齢者もその程度の額が支給されるなら、家族に負担をかけることなく施設に入れるのでは?

消費税なんて、収入に関係なく誰にも課せられているのだから、消費税を財源に基礎年金を充実してはどうなんですか。

教員 :  確かに、税方式化に向けた制度設計を求める声もある。基礎年金部 分を最低保証として全額を国庫負担で賄う方向が分かりやすく、合理的だという意見もある。しかし、財政が赤字で、税負担がさらに増えれば、いよいよ日本の財政は硬直化する。だから、やはり、拠出型の社会保険方式を堅持すべきだという意見もある。

生徒 : でも、私達が納める社会保険料は、自分のための積み立てではなく、

現在の高齢者を支えるためのもので、少子高齢化が進んで、私達の世

代の負担が今後どんどん大きくなってきていると聞きました。

教員 : そう、積立方式から、賦課方式に移行した。

生徒 : 賦課方式は、どのような方式なんですか?

教員 : 年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意する方式のこと。現役世代から年金受給世代への仕送りに近いイメージだとよく言われる。賦課方式は、現役世代の賃金を原資としているために 賃金水準に応じた財源を確保することができ、激しい経済変動にも比較的強いというメリットがある。これはよく試験でも問われるよ。逆に、積立方式はインフレに弱い。日本も国民皆保険発足当初は積立方式だったけど、激しいインフレで貨幣価値が下がり、賦課方式に移行してきたという経緯があるんだよ。

生徒 : でもデメリットもありますよね。

教員 : そう。年金受給者と加入者世代の比率によって保険料が決まるため、年金受給者が増えれば、現役世代の保険料が増えたり、年金の削減が必要となったりすることがデメリット。かつては3人から4人の現役世代で支えていたけど・・・おって現役世代1.5人で1人の高齢者を支えることになる。また、支給年齢が60歳から65歳に引き上げられたけど、さらに、今後は70歳になるかもよ・・・

生徒 : いやな時代に生まれたな・・・って、正直思います。そう考えると、少子高齢化対策の必要性を強く感じます。で、私達の世代は、払った保険料に応じた年金を受け取ることができるのですか?

教員 :あくまで長生きすればの話だけど、我々の世代は払った保険料の3倍近くももらえるらしい。貯金していてもこんな額をもらえないよ。でも君たちだって、長生きすれば、払った保険料の1.5倍は受け取ることができるらしいよ。

生徒 : 先生、「らしい・・・」とはひどいな。

教員 : ごめんごめん。でも、将来は不透明。また、そもそも「保険」というのはあくまで不確かな将来の「リスクに備える制度」だということが出発点なんだ。社会保険は、万が一の際に個人に対する負担を軽減するための「共助」であって、もうけるための「金融商品」ではない。「元は取りたい」という思いはあるだろうけど、あくまで相互扶助によって、社会全体で疾病や失職などのリスクをカバーしたり、老いのリスクによる貧困を防いだりするものなんだ。

   で、さらに、医療などについて不安がある人はガン保険などの民間の保険に加入したり、子どもが小さい時は万が一に備えて高い生命保険にも入ったりするしね・・・。掛け捨てになる保険も多いけど・・・

生徒 :そうか・・・あくまで「リスクに備える制度」が保険ということですね。

教員 :そう。たとえば、働けなくなった老後の期間が長くなればなるほど、リスクは高まる。その分、多く老齢年金がもらえるというふうに考えるかもしれないけど、むしろ、その分、介護・医療で出費がかさむと考えるべき。だから、「介護保険」も加わったし、また、一方では「自助」も必要だと言われだした。家庭科で、iDeCoや積み立てNISAといった「自助」のことも習ってないかい。

生徒 : 習いました。

教員 : こうした制度についても知っておいて、老いのリスクも想定して「自助」も考えていく必要性もあるよね。でも、これができる人はある程度経済的に余裕のある人。となると、やはり、「共助」「公助」が必要で、いつどんなリスクを背負うか分からない、だから、やはり、「共助」「公助」の年金・生活保護の制度については、大切なセーフティーネットとして堅持すべきだと思うよ。これって・・・遺言のひとつかな・・・。

生徒 :  先生、そんなこと言わずに、もっと、頑張ってください。

教員 : ありがとう。若者と話しをすると楽しいよ。健康寿命を伸ばすかもしれないから、もう少し、私も、教員生活を楽しもうかな・・・後期高齢者の75歳を超えて元気でいれば、「元が取れる」らしいからね・・・長生きしないと損だもんね。

生徒 : えっ、先生、「元を取る」とか「損だとか」・・・年金は、元々「金融商品」でなかったはずでは???言っていることが矛盾していませんか?