【今日の時事問題】社会保障費について その2
前回、国民全体の所得に占める「税金」と「社会保障費の負担」の割合「国民負担率」が50%近くなっていることに触れた。
潜在的国民負担率
さらに、「国民負担率」に次世代の国民負担となる財政赤字分を加えて算出したものを「潜在的国民負担率」と呼ぶそうだが、日本はより高い数値が出るこの「潜在的国民負担率」を50%以内とする「政府の指針」があるとのこと。これもぜひ知っておきたい。
で、この50%という数値、これが国際的に見て低いのか、高いのか?
世界で最も高齢化が進んでいる国・・・そのため日本の負担率が高いのではないか・・・と思う受験生もいることであろうが
・・・日本の国民負担率は実はOECD諸国のなかでも相対的に低水準。
高福祉高負担
受験生なら、「高福祉高負担」という言葉を想起したい。
「福祉国家」を標榜するところは、「高福祉高負担」で「国民負担率」が高い。スウェーデンやデンマークなどの北欧が典型的であるが、特に「税負担」の比率が極めて高く、所得に関係なく「均一年金」であることが大きな特徴だ。
ただし、国民負担率としては北欧以上に高いのがフランス、何と70%に近い。フランスの場合は、「事業主の社会保険料負担」が高いのが特徴で、日本のように、企業が「内部留保」を溜め込み従業員に還元しないのとは対照的。
一方で、この対極の「低福祉低負担」にあるのがアメリカ。国民負担率は30%程度で、「公的医療保険制度」については、高齢者および障害者、低所得者を対象としたものに限られていることも承知の通り。
で、日本は、こうした中、「中福祉小負担、あるいは中負担」と呼ばれる。従来は「小負担」であったが、社会保障の水準を維持するために、現在は「中負担」ということであろうが、あくまで「中福祉」というところは変わっていない。ある意味、そのため、負担が増しているにもかかわらず、福祉水準が停滞しているのではないかといった印象を与え、不満が出つつあるのではなかろうか。
その際、「中負担」とするために引き上げられたのが何か?
受験生諸君、これは分かるよね?
そう、「消費税」である。
消費税について
ここで消費税の推移について触れておくと
1989年 導入 3%
1997年 5%
2014年 8%
2019年 10%
このうち、2014年・2019年の消費税率引き上げに際しては、引き上げ部分は「社会保障財源に充てる」とされた。
「現役世代など特定の世代に負担が集中せず、税収が景気などの変化に左右されにくく、企業の経済活動にも中立的であることから、社会保障の安定財源として適している」との理由だった。
ただし、「消費税が増えた分だけ社会保障費がその分増えたか」と言うとそうでもない・・・といった指摘もあり、実は、増えた消費税収入は、他の一般歳出に使われているとのこと。
と言うことで、実際は、医療で言うと「窓口負担の増加」、年金で言うと「支給開始年齢の引き下げ」など、「低福祉」化でしのいでいるのではないかという指摘もある。
そうした中、現在、政府は、「全世代型社会保障」というものを標榜した改革を模索しだした。人生100年時代の到来を見据えながら、高齢者だけでなく、「子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで」広く安心を支えていくため、年金、労働、医療、介護、少子化対策など、社会保障全般にわたる、「持続可能な」制度のスケッチが求められている。
このあたり、共通テストで狙われる大きな山場となりそうなので、次回以降、少しずつ触れていこう。