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[【今日の時事問題】社会保障費について その4

「全世代型」社会保障

「全世代型」社会保障という言葉は美しい。

しかし、その実現のためには様々なハードルがある。
岸田内閣が、「次元の異なる少子化対策」を打ち出したのも「全世代型」社会保障の一環であろうが、問題の一つは財源。

 

政府は、「児童手当の拡充」などのために、24~26年度の3年間を「集中対策期間」とし「医療保険料への上乗せ」で年1兆円程度、さらには、「社会保障費の歳出改革」、つまり削減で5年かけて年1兆円強を確保することを検討しているとのこと。

医療保険料への上乗せ」ということであるが、これは将来的に国民1人あたり月500円程度「支援金」として徴収するもののようだ。
要するに「増税」と実質何も変わらない。しかし、増税となると抵抗感が出るので、「支援金」。
しかも「天引き」であるため負担感を感じさせない。ただし、それも急には抵抗があるので、当面は「つなぎ国債」(「こども特例公債」)で賄うという方針らしい。何とも手の込んだ手法で「少子化対策の社会化」を進めようとしている。

 

社会保障費の歳出改革」は、来年度に改定される診療報酬や介護報酬の抑制などが想定されているようだが、そうなると医療や介護の人材不足に拍車をかけかねず、「医療・介護が崩壊する」との反発もあるとのこと。
社会保障制度を支える人材やサービス提供体制を維持することが「全世代型」社会保障の実現のためには不可欠だと思うが・・・
そんなことして本当によいのかどうか?

問題は財源

財源がないのは分かる。しかし、必要なら、もっと幅広い視野で財源を斟酌すべきではないか。社会保障社会保障のパイの中でだけで分け合っても意味はない。
場合によっては、世代間の対立さえ起こしてしまいかねない。

改めて問いかけたい。「アメリカからトマホークを買う必要があるのか?」

防衛費GDP1%≒5兆円から2%≒10兆円に増やすことが閣議決定で決められてしまったが、この増額分を「次元の異なる少子化対策」に充てればいいのではないのか・・・
これは国民の多くが抱く素朴な思いであろう。

 

「税の使い道」について、もっともっと国民的議論が必要なのではないか。

また、社会保障だけでなく、教育や中小企業、農業分野など、未来を切り拓くのに本当に必要な分野に公的資金を投資したいものである。

しかし、そうなると、いよいよ国家予算が不足する。

 

そうすると、一方で、「支出の見直し」だけではなく、日本社会の活力を高める、稼ぐ力をアップさせるための政策推進も不可欠ということになる。

ところが、現在の日本には残念ながら稼ぐ力が不足している。

 

閉塞感をもたざるを得ないが、稼ぐ力を回復させ、公正に分配する、この両輪を強力に進めることが何よりも「政権」に求められている。

そのためには、高齢者の「ホモソーシャル」な関係が中枢を握っているという政権の構造を脱構築していくことが不可欠だ。

要するに、「全世代型」政治、多様な立場からの意見の交換、「公共の交響」、が求められているということでもある。

社会保障の再構築

やや話がそれてしまった。話を社会保障制度に戻そう。

で、確かに、「子育て世代」に対する支援は必要であろう。これは否定しない。

しかし他方で、現在は、「家族の形態」が多様になってきている。未婚者にとって、「少子化対策」支援は何らの恩恵ももたらさないように感じさせるのではないか。無論、社会保障の担い手を創出するという意味で、自分の老後と無関係ではないが、「児童手当の拡充」自体は自分とは関係のないものだ。

結婚したくても非正規のため、ワーキングプアのため結婚もできないという人も多い。そういう人にとっては、労働条件の整備こそ、まず政治にやってもらいことであろう。

また「8050」問題という言葉を聞いたことがあるだろうか? 「80」代の親が「50」代の子どもの生活を支えるという世帯が増えているという。背景は子どもの「引きこもり」であるが、生活に窮するケースが多い。こうした世帯に対する支援についてはまだ手つかずだ。

要するに、「児童手当の拡充」に見られるような「お金を支給さえすればよい」といったバラマキ対策ではなく、地域で包摂的に支援する体制や、働ける環境の整備といった、幅広い視点での社会保障の再構築も求められている。

様々な家族の形態があるなか、いかに、「誰ひとり取り残さない」社会保障を構築するか、これは難題である。しかし、これを追求していかないと、日本に未来はない。

 

若者よ、未来はバラ色ではない。しかし、熟議し、協働し、合意形成に努め、将来世代にも成長の果実を届けよう。そのためには、今の我々一人一人が「成熟」する必要がある。まずは学び続けよう。