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【今日の時事問題】日本のポジティブ・アクションの取組

ポジティブ・アクションとは

アメリカではアファーマティブ・アクションと呼ぶが、日本やヨーロッパではポジティブ・アクションという言い方をする。
大きな違いはないが、「社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することにより、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置」(内閣府)

といった捉え方である。

www.gender.go.jp

部落差別の解消のための特別対策事業、障害者の雇用を進めるための障害者雇用促進法などもその一形態と言えるが、後者については「暫定的な措置」ではないので、狭義の捉え方だとポジティブ・アクションにはあたらないことになる。
ただし、「実質的な機会の平等を実現するための合理的な別異取り扱い」といった定義なら、該当するであろうし、障害者に対する「合理的配慮」あたりも含まれるものと考えられる。

 ところで、ここで強調しておきたいのが、日本の場合、ポジティブ・アクションと言うと、男女共同参画を進めるためのものといった捉え方が一般化してしまっているという点である。
「社会的・構造的な差別」は、女性差別以外にもあるが、たとえば外国人差別、性的マイノリティに対する差別に対するポジティブ・アクション・・・なんてなものはほとんど想定されていない。
また、貧困家庭の子どもたちに対する無料塾などもポジティブ・アクションの一つであろうが、そのような捉え方で、様々な格差是正の取り組みを総括して、再構築していこうなどという営みも聞かない。

 ある意味、男女差別に特化した偏向的な捉え方であるが、それはそれ、とりあえず置くこととして、女性に対しては、以下のような法律でポジティプ・アクションを推進しようとしていること自体は評価したい。
2015年に制定された「女性活躍推進法」(10年間の時限立法)や 、2018年の男女の候補者の数をできる限り均等にすることを各政党に求める「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)がそれである。

男女共同参画にかかわるポジティブ・アクションの手法

内閣府では、男女共同参画を進めるポジティブ・アクションの手法として以下の3点をあげている。

(1)指導的地位に就く女性等の数値に関する枠などを設定する方式
○クオータ制
(性別を基準に一定の人数や比率を割り当てる手法)等

(2)ゴール・アンド・タイムテーブル方式
(指導的地位に就く女性等の数値に関して、達成すべき目標と達成までの期間の目安を示してその実現に努力する手法)

(3)基盤整備を推進する方式
(研修の機会の充実、仕事と生活の調和など女性の参画の拡大を図るための基盤整備を推進する手法)

日本ではクオータ制は採用されていないが、ゴール・アンド・タイムテーブル方式に基づいて、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標(平成15年6月20日男女共同参画推進本部決定、『2020年30%』の目標)を達成するため、ポジティブ・アクションを推進し、関係機関への情報提供・働きかけ・連携を行ってきた。
これは、当時の小泉首相ダボス会議で演説したものであるため国際公約にもなっていたが、しかし、残念ながら、目標達成にはほど遠く、30年までに先送りしているところ。

女性優遇・・・これってOK?

 なお、ここで、男女雇用機会均等法とのからみに触れておくと、たとえば募集に際して「女性歓迎」といった表現は、原則としては、「労働者の募集及び採用に係る性別を理由とする差別を禁止し、男女均等な取扱いを求めている」均等法の観点からは禁止されるものと解すべきである。
ただし、過去の女性労働者に対する取扱い等が原因で男女労働者間に事実上の格差が生じ、女性労働者の割合が「4割」を下回っている場合、格差が存在していると判断される場合は、女性のみを対象とするまたは女性を有利に取り扱う措置(ポジティブ・アクション)は、法違反とはならないとされる。
ポジティブ・アクションの観点から、「女性歓迎」といった表現もできなくはない、ということになる。

 これを踏まえ、以下の場合は○か✕か、といった判断問題の出題もあり得よう。

■練習問題(男女雇用機会均等法

 「営業部で営業事務の募集を考えています。営業8名(男性)に対し、営業事務は現在女性2名です。女性のみ採用ということは法に抵触しませんか?」

受験生諸君、いかがであろうか?これは✕。
営業部としては男女比が8:2ということで、女性費比は2割となるので、「女性歓迎」も○のように思えるが、営業事務職という職種で見ると、女性比率は100%、そのため、ポジティブ・アクションを適用することはできないという判断になる。このような判断を求めるのが共通テスト。

間接差別はNG

また、ポジティブ・アクション自体からは離れるが、男女雇用機会均等法に規定されている「間接差別」、一見性別が関係ないように見えるルールや取り扱いでも、運用した結果どちらかの性別が不利益になってしまう扱いのことにかかわる出題も想定される。
労働者の募集または採用に当たって、

①労働者の身長、体重または体力を要件とすること
②採用、昇進、職種変更にあたって「転居を伴う転勤に応じること」を要件とすること
③昇進にあたって「転勤の経験」を要件にすること

この三点が間接差別と明記されている。形式上は男女差がないものの、一方の性別が不利になるような間接的に差別にあたる内容であるため、禁止されている。

 

■練習問題(間接差別)

こうしたことを踏まえ、以下の問に取り組んでみよう。

現在でも社会には根強い男女差別がある。特に,表面上は男女の差別には見えない制度や慣習が,実質的に差別を生み出したり,男女を差別するために利用されたりしている場合を「間接差別」といい,直接的な差別と並んで是正が求められている。企業による間接差別の例として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。
① A社では,新卒者向けの求人情報を男子学生だけに郵送し、女子学 生からの問い合わせには返信していない。
② B社では,残業や転勤を昇進のための重要な評価基準にしているの で、家事や育児の責任を多く負わされやすい女性は昇進しにくくな っている。
③ C社では,最近男性社員に比べて女性社員の人数が増えたので,男 子用と同数だった女子用トイレの数を増やした。
④ D社では,事務職の採用選考で,容姿の評価を目的とした面接試験 を女性だけに課している。

 

間接差別は②。
①と④は「直接差別」。
③はむしろ女性の就業を後押しするもの。これを男性に対する間接差別などとは捉えないように。

 絶望的なジェンダーギャップ指数

  受験生諸君が働き出す数年先には、男女共同参画、というより、「ジェンダー平等」の時代が実現できていればと思うが・・・
残念ながら、日本のジェンダー平等への取組は鈍い。2023年のジェンダーギャップ指数、男女平等の達成度合いのランキングで、日本は世界146カ国中125位と、前年から9つもランクを下げ、過去最低となった。

この現実をどう変えていくか。女性及び同性愛を排除することによって成立している「ホモソーシャル」な関係が中枢を握っているという社会構造を、様々なところから脱構築しないとね。