「三つで括って覚える現社の倫理」 ⑥現代思想
①実存主義は、本来はキルケゴールとニーチェが重要だが、かつてはサルトルが頻出。②構造主義も重要。③フランクフルト学派、いずれも人名と主張の骨格を結びつけておくこと。現社では、アドルノの「権威主義的パーソナリティ」、フロムの「自由からの逃走」、リースマンの「孤独な群衆」・「他人志向型」が繰り返し出題されている ロールズとセンも今後より一層取り上げられてくるはず。この現代思想は絶対に落とせない分野
実存主義 その1
近代社会における不安、個性の喪失、疎外から人間を救い出そうとする思想が開陳
実存 → 「本来の自己に目覚め、真実を求め続けていく存在」に立ち返ることを説く
・客観的な真理ではなく、かけがえのない自分にとっての真理こそが大事
→ 不安と絶望の中で、「」の選択によって、
「神の前に一人立つ単独者」こそが主体性を回復した真の実存
・キリスト教を「弱者の道徳」と批判、
キリスト教道徳から人間を解放するため、「」と宣告
→ こうして陥ったニヒリズムを克服するため、「永劫回帰」の中でその運命を積極的に愛し、新しい価値を創り出す「」を理想
実存主義 その2
① ※有神論的実存主義
・「状況」(死、苦しみ、争い、罪など)における挫折を通して実存を回復、挫折に耐えつつ、実存的交わり(の闘争)を通じて超越者(包括者)との交わりも実現できると説く
②
・人間は世界に突如として投げ出された「 - - 存在」、
様々な存在と関わりながら、世界のうちに存在している
→ 一方で、人間は「死への存在」である
→ ところが、このことが「不安」を呼び起こす。人間は、死への不安から逃れるため、周囲の人々に同調するだけのダス・マン(世人)へと頽落
→ しかし、日常に埋没したあり方に疑問をもち、自分が「死への存在」であることを直視し、「良心の呼び声」に耳を傾け、自分の置かれた状況を引き受ければ、本来の自己に立ち返ることができる
③
・「実存はに先立つ」
つまり人間は道具と違って最初から本質が規定されている訳ではない。偶然にも世界に投げ出され、その本質は非決定的で、いつでも自らをつくり自らを選択することができる、その意味で人間は自由であるが、さらに言えば「の刑に処されている」、それ故に、不安も生まれる。しかし、その不安にたえ、主体的な決断をすることこそ、本来的な人間の生き方であり、しかも、自己の自由なる選択は、自己自身のみならず全人類を拘束()する。それ故、責任を伴った社会参加、連帯が必要だと説き、様々な運動(たとえばアフリカの飢 餓救済運動など)に自ら参加した
構造主義 その1
これは「現社」では問われないかもしれないが、「現代文」に必要な知識なのでやや詳しく解説しておく
・言語(<記号)は、
「 シニフィエ 」(意味るもの・内容)と、
「シニフィアン」(意味るもの・呼び方(文字・音声))
から成るが、その結びつきは「的である」と主張した
→ モノが先にあり言葉が後から付与されたと考えるのが常識的記号観であったが、また、世界の客観的区分があってそれに言葉が貼り付けられた(必然的な結びつきがある)と思われていだが、
・・・そうではなく、モノと言葉ではが先にあり、しかも、その結びつけは恣意的であり、その恣意性故に、人間がな言葉を生み出す(差異化する)ことによって世界を「分節化」してきたと、言語の「コペルニクス的回転」を図った。
→ 「言語が世界を作る」
・言語(ランガージュ)は、
「 ラング 」(社会に共有された規則・文法の体系)」と、
「パロール」(個人的な発話)から成り、
「」によって「」が規定されていると主張した
→ となると、自由で主体的だと考えられていた個人の思考も、歴史的、社会的に形成されてきた言語の体系=「構造」によって無意識のうちに規定されているということになる
→ 以降、「構造主義」呼ばれる知的営為を生み出すことに
②
・構造主義の提唱
ソシュールの影響を受け、人間の主体性を疑い、その行動や事象を目に見えない思考の枠組み=「構造」から解明しようという思想的立場「構造主義」を提唱した。
人間の主体性を説く実存主義を徹底的に批判
・親族関係や神話のうちに「構造」を発見、
例えば近親婚を避けるべきだとする(タブー視する)婚姻の仕組みは、結果として広範囲な親族関係を形成するのに役立っているとし、文化や歴史の深層に普遍的に存在している様々な「構造」の解明を研究者に呼びかけた
・文明社会の思考も、未開社会の思考=「の思考」も優劣はつけられない、と西洋中心主義を批判
③
・歴史の中に埋もれている構造を発掘する知の考古学を推進、各時代で異なる考え方の特徴である「エピステーメー」を抽出し、人間を主体とみなす考え方は、近代の発明に過ぎないとした
・「理性」を尺度とし、病気や狂気、犯罪といった「反理性的なものを排除」してきた近代の「エスピテーメー」と、病院、監獄、学校などが、それに加担し、近代的秩序から逸脱することを「」とみなす価値観を広め、そのような価値観に無意識のうちに服従し、「権力」関係を再生産していく「主体」としての人間を痛烈に批判した
・「神は死んだ」というニーチェの眼差しを引き継ぎ、主体的な人間というものは妄想でしかないとし、「の終焉」を予告した
フランクフルト学派
一方で、ヒットラーを生んだドイツでは、「理性」を見直し、それを復権させようとする営みが展開された
①ホルクハイマーと
・近代の「理性」は、与えられた目的を合理的に実現する手段を追求する
「的理性」と成り下がってしまった。
・人間のめざす目的や価値こそを批判的に吟味するのが理性の意義であると、
「的理性」の復権を訴えた。
・「主義的バーソナリティ」の批判
は、カリスマ的権威に同調し、その配下に自らの存在意義を見いだそうとする大衆の社会的性格を批判
②
『』の中で、大衆は、
自由にともなう責任の重さに耐えきれず、自由を放棄し権威に盲従していると批判
③
政治制度や経済制度といった「システム」が生活世界を支配してしまい、人間は非主体的になってしまっている。
→ 社会の基盤を討議するようなコミュニケーションを復権させるため、「」を発揮しなければならないと唱えた
・『』の中で、「大衆」は、他人の意向や評判を気にして同調的な行動をとる「型」であると批判。
ヒューマニズム
①ガンディー
・インド独立の父
・不服従・非協力でイギリスからの独立を勝ち取る
不殺生の実践
・アフリカでの医療奉仕 への畏敬
③マザー=テレサ
・インドにて「死を待つ人の家」を設立し、貧しき人々の看躍を実践 無関心に警笛を鳴らす
差別と偏見との闘い
①
・「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」
女性の主体性回復を主張
・「私には夢がある」
アメリカ合衆国で黒人差別に対し平和的に公民権成立に寄与
③ サイード
・東洋を得体の知れない他者として位置づける「」を徹底的に批判
現代の政治哲学
①ロールズ
・少数者を犠牲にしかねないイギリス功利主義を批判
・無知のベール
古代ギリシアで議論された「正義」というテーマを、社会契約説を復権させつつ(原初状態 → のベールと仮想して)再検討
・公正としての正義
・平等な自由の原理 ・・・基本的権利はに分配すべき
・を容認する原理・・・のほうが正義に適う場合もある
・公正な「機会均等」原理
→ 機会均等を図ったの上での不平等は仕方がない
・「」原理
→ 不遇な者の境遇改善のための不平等は是認できる
= アファーマティブ・アクションを哲学的に基礎づける
→ 「の平等」 ≒ 実質的平等の実現
②セン
・ロールズの正義論が財の再配分に偏重していると批判
・潜在能力()というキーワードを掲げる
→ 人生の選択肢を広げるために必要な機能(健康であること、教育を受ける等)
この潜在能力(ケイパビリティ)という概念により福祉のあるべき姿を提示
→ 国際的には、潜在能力の開発を含む「の安全保障」を提唱。