【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【今日の時事問題】民主主義の危機?

 

民主主義とはなにか?

私の「三つで括って覚える」では、以下の三点を挙げた。

国民主権の原理に基づき、国民の意思に従って行われる政治
 → 話し合うことが大事

ハーバーマスの言う「対話的理性」、
 アーレントが求めた「活動」を通じた公共性の復権

②満場一致とはなりにくいので「多数決」の原理をとることもあるが・・・
 → これまた話し合うこと
   そして「少数者の意見」も尊重することも大切

※J.Sミルは「多数者の横暴」の危険性に警笛を鳴らす

③公正な選挙こそ民主主義の源である・・・
 → 選挙も大事だが、
 「市民が当事者意識をもって主体的に政治参加すること」こそが民主主義だ

アメリカの民主政治に感動したトゥクヴィルはこのことを強調
・多様な国民の意見を吸い上げた「合意のための」不断の努力がなされているかどうか?
・「多数者の横暴」に陥っていないか?
・代議員制だけではなく、国民の直接政治参加の場が広く確保されているか?

fukuchanstudy.hatenablog.com

「異例の」決定

ここのところ、幾つかの「不文律」が破られ、「異例の」決定が粛々と進められてしまっている。残念ながら、安倍政権、菅政権、そして岸田政権になって、次第に、より一層民主主義に危機が迫っているように感じる。

原子力規制委員会

今年2月、原子力規制委員会は、原子力発電所の運転期間を実質的に延長する政府の方針を受けて、老朽化に対応するための新しい制度の採決を行ったが、委員の1人が反対して全会一致とはならなかった。これまで全会一致が不文律であったのに、「異例の」多数決で決定してしまった。

www3.nhk.or.jp

LBGT理解増進法

そして今回、議員立法も、本来、全会一致が「不文律」であったはずなのに、LBGT理解増進法は、会期末が迫っていることに併せて、法として成立させること自体を優先するかたちとなった。これも「異例」のことのようだ。

 議員立法は全会一致が原則とされ、賛否が割れたまま採決されるのは異例だ。法整備を求める市民団体などが「当事者に寄り添う内容になっていない」と批判を強める中で衆院を通過した。

引用元:時事通信 LGBT法案が衆院通過=与党、16日成立目指す

sp.m.jiji.com

議員立法について

ここで、議員立法について確認しておきたい。

内閣提出法案が、政権与党の内閣が自らの政策を実行に移すために法案を各省庁の官僚に起案させて内閣総理大臣の名前で国会に提出するものに対して、

議員立法は、実生活の必要性から、国民の間から出てきた要望を吸い上げたものが多い。
野党議員からも立法化できるし、党を超えて作られるものもある。
少数者を守る法律も多く、その意味でも極めて重要なものである。


しかし一方で、一部の利益のみに通ずる危険性もあるため、公正さを担保する必要もあり、発議要件は厳しく、さらに、委員会で各会派の全会一致を「不文律」としている。

また、政府提出法案が優先され、議員立法は会期後半での審議に回されてしまうため、時間切れで廃案になるものも多い。

発議要件

発議要件については試験に問われることもあり得るので確認しておこう。

・予算を伴わない場合は
 衆議院20名以上、
 参議院10名以上の賛成で提出

・予算を伴う場合は衆50名、参20名・・・と厳しい

ところが今回のLBGT理解増進法は、複数の案が出され、結局、全会一致とならず、4党による与党修正案、言わば「妥協の産物」が、「多数決」によって成立してしまった。

しかも、その内容は、差別を解消していこうものから大きく離れ、当事者にとっては到底受け入れることができない、「多数派に配慮」したものに大きく変容し、「差別増進法」との批判さえ出ている。

news.yahoo.co.jp

若者は、性的マイノリティへの理解が進んでいるはずだが、性的マイノリティへの偏見や差別感を解消することができない一部の声によって、趣旨が大きく変わってしまった感が否めない。

党議拘束

しかも、本会議では「党議拘束」。
党議拘束とは、「政党」が、「所属議員」の表決行動を予め拘束することである。

受験生諸君も知っていると思うが、アメリカは党議拘束せず、個々の議員の判断が優先される。

ところが日本は同調圧力。しかし、与党の中にもこの法案に疑問をもった議員もいたはず。中には、そもそも理解増進を受け入れないということで採決時に退席した与党議員もいたと聞くが、これは職場放棄であり、問題外である。

www3.nhk.or.jp

そもそもこのような「人権にかかわる法案」に党議拘束をかけるべきではないのではないか。

多数決と民主主義

最後に、以下のような記事を目にした。
大阪にいる中国の総領事が、性的マイノリティを特異な存在だと見なし、「今は明らかに絶対少数が絶対多数のわれわれを実質強制している。西側がずっと主張してきた多数決の民主主義の基本に反する邪道だ」と投稿したそうだ。

www.at-s.com多数決は決して民主主義そのものではない。
マイノリティの権利擁護を、自分たちの権利喪失とみなす、損失回避バイアスに陥った老害、新しいレイシズムがあちらこちらで闊歩しだしている。民主主義の危機である。

若者よ、民主主義が何たるかを学び続けよう。ハーバーマスアーレントロールズなどの思想からも学び取ろう。
そして確信しよう。社会は変えることができる、山は動く・・・と。

「市民が当事者意識をもって主体的に政治参加すること」こそが民主主義。

今は、机上で眺めるしかないが、おって、仲間に加わってほしい。