【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【今日の時事問題】法案成立とねじれ国会

ねじれ国会だったら

前回、侮辱罪の厳罰化を含む刑法の改正が可決したことをみた。

 

fukuchanstudy.hatenablog.com

 

今日、15日に閉会した国会での法案の可決状況全体についてはどうであったかというと、政府が「内閣法制局」を通じて作成・提出した法案は今国会では61本。これが全て成立したそうだ。

 

全て成立するのは何と、1996年以来26年ぶりとのこと。その背景の一つに、参議院選挙を見据えて、「与野党対決型」法案の提出を絞り込んだことがあるようだ。野党が一本化して反対し、成立の見込みが立たないかもしれないような法案は避けたということか。私権制限をめぐり与野党対立が予想された「感染症法改正案」や、昨年廃案に追い込まれた「入管法改正案」も提出されなかった。これはこれで、どうかな?

 

ただし、最重要法案であった「経済安全保障推進法案」は早い時期から審議に入り・・・なぜ重要法案は早い時期なのか?は後に触れるとして・・・野党の抵抗も予想されたが、維新の対案を並行審議し、最終盤には立憲の修正案も議論。修正協議を経て、立憲と維新は衆院採決で賛成に回った。与党側が修正協議を打診し、野党の主張の一部を法案の付帯決議に盛り込むことで可決に至っている。このように、附帯決議あたりに盛り込むことで軟着陸することも多いということだ。

 

しかし、もし「ねじれ国会」であった場合、参議院が法改正に与しないことが当然ある。国会に関しては、実は、これが最も試験で問われる部分である。以下の問題にも取り組んでおこう。

 

法律案について衆議院参議院で異なる議決がなされた場合、必ず両院協議会を開かなくてはならない。

 

→✕
法律案の場合、両院協議会の開催は任意。開催するかどうかの実質的な決定権は衆議院にある。両院協議会は、衆議院参議院から選ばれた10名ずつの協議委員で組織され、各議院の協議委員の「3分の2以上」の出席のもと開かれる。

両院協議会において、出席協議委員の「3分の2以上」の多数で議決されたとき、両院協議会の成案となる。

 

頻出問題で「法律案について衆議院参議院が異なる議決をした場合、両院協議会での成案が得られると、それが直ちに法律となる。」という出題もあった。これも✕。

ここでは両院協議会を必ず開かねばならないと言っている訳ではないが、後段の「それが直ちに成案になる」が誤り。「直ちに」という強調構文もヒントになって怪しいなと感じるとは思うが、

 

成案は、その後、両院の本議会で議決されなければ国会の意思とはならない。二段構えの過半数超えが必要である。しかし、このように両院協議会を経て成案に至るケースは稀であり、成案をみた直近の法案は、細川連立政権時代の1994年の「政治改革法案」である。で、最後に、ではなぜ、そもそも法律案の場合、両院協議会開催は任意なのか?これに答えられるであろうか?次の問題を通じて、「あっそういうことか」となるといいが・・・

 

法律案について衆議院参議院で異なる議決がなされた場合、衆議院過半数の賛成で再可決されれば法律となる。

 

→✕
先に見たように、両院協議会は任意であるが、もう一つの可決の仕方が、衆議院での再審議である。衆議院だけに認められているもので、衆議院の優越を意味するものであるが、3分の2以上の多数で可決しないと法律にならない。

法律案は、予算や条約より成立させるためのハードルは一段高い。与党が2/3を占めないと難しく、そのため、こうしたルールに基づいて成立した法も数少ないが、2008年の「新テロ特措法」などがある。

 

しかし、一方で、両院協議会を通じた制定も難しいし、時間もかかる。そこで、会期期間が少なくなった時、この方法だと、会期中成立もあり得る。ということで、法案成立に至る可能性を残すためのルールであると捉えることができるのではないか。与野党対立、あるいは、ねじれ国会で法案成立が滞ると、それはそれで問題であるからだ。ただし、あくまで2/3という高いハードルにはしてある。こういう微妙なバランスのうえに、このルールはある。どうだろうか?「あっ、そういうことか」と思ってもらえただろうか。

 

衆参両院の議決が異なる法律案は、両院協議会でも成案が得られない場合、衆議院の議決が国会の議決となる。

→✕
前項でも触れたように、両院協議会による成案か衆議院における2/3以上の賛成が必要であり、✕。

このように、ちょっとした文言を変えて、繰り返して出題されている問題である。

 

衆議院で可決し参議院で否決した法律案が法律になるためには、再度、衆議院で総議員の3分の2以上の賛成を必要とすると憲法は規定している。」

これも✕。両院協議会による成案の道もある。

 

なお、2021総選挙の結果、現在は、自民・公明の与党は「2/3」に達していない。そのため再可決は難しい。一方でねじれてはいないので、衆参両院の議決が異なるようなことはまずないだろうから、与党にとってはとりたてて心配する必要はない・・・ということになるのだろうが。

 

参議院衆議院が可決した法案を受け取った後、60日以内に議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。

→✕
★2022政経で出題されたばかりの問題。

繰り返し見てきたように、法律案は、ねじれた場合は両院協議会による成案か衆議院における2/3以上の賛成が必要である。

では、参議院がなかなか議決しなかたら・・・ということで、「60日ルール」のことを知らなかったら、この問題には答えられない。

60日以内に議決しない時も、ねじれと同様、両院協議会による成案か衆議院における2/3以上の賛成か、どちらかが必要で、自然成立とはならない。実は現代社会の教科書にはこのことの記載がない。しかし、政経の教科書にはしっかり記載されてはいる。けれど、読み流していたらこれも記憶に残らない。そこで、「60日ルール」といった言葉で、強調しておくと、記憶に残るのではないか。

 

なお、参議院が60日以内に議決しない場合、衆議院はこれを否決したものとみなす。「みなし否決」と言う。

センター政経で、「衆議院の可決した法律案を受け取ってから一定期間内に参議院が議決しないときは、衆議院参議院がその法律案を可決したものとみなせる。」というものもあった。

可決したものではなく、「否決したものとみなす」が正しい。こんな、よくよく読まないと罠にハマるような問題もある。
なお、この60日ルールがあるから、重要法案はできるだけ早い時期から審議入りさせる・・・ということも理解できるはず。

 

 

会期中に議決に至らなかった案件は、次の国会で継続して審議することが義務付けられている。

→✕
審議がつくされれば議決し、会期が終わっても審議がつくされていなければ、審議未了として廃案にされ、「会期中に議決に至らなかった案件は、後会に継続しない」とされている。これを「会期不継続の原則」と言う。

 

「継続しない」ということであるが、もう一度審議することができないという意味ではなく、衆議院で可決され、参議院で継続審議になり廃案となった場合、もし、もう一度議決を目指すのなら、衆議院の前回での可決はなかったということになり、もう一度審議し直すという意味である。そのため、廃案を目指す野党は、国会で審議拒否等の時間を稼ぐ戦術を採る。

 

一方、与党は「強行採決」を断行したり、法を可決させるために「会期」を延長させる作戦に出ることがある。通常国会は1回しか延長できないので、延長幅は最大何日までという決まりはないため、与野党が延長幅をめぐって攻防することもある。既に見たように通常国会は150日。当初は予算案が主な審議対象になるので、法案審議は中盤以降ということになる。委員会の審議を経て本会議での採決ということなので、時間はかかる。ところが、審議が伸び伸びになり、さらに参議院での審議が進まないとなると会期中の成立が難しくなる。だから60日ルールというものがあるということになるのだ。

 

どう?これで60日ルールの意味がわかったのでは?60日間たっても審議されなかったら、「みなし否決」とし、2/3以上で決定できるように、ということなんだ。で、時間不足であれば、会期を延長する・・・このように、いろいろなことがつながると、「あっ、そういうことだったのか」とすっきりするのでは?これが勉強することのひとつの意義である。・・・なお、昨年の通常国会は、逆に、野党がコロナ対応のため会期延長を主張したが、与党は延期せず閉会した。では、これはなぜか?これに答えられないようでは困ったものだ・・・ということになる。

 

受験生、忙しいのは分かるけど、社会に、政治に関心をもたないと。ちなみに、分からなければ質問してほしい。私のブログに質疑応答を掲載するから。

 

最後に、現在は「ねじれ国会」ではなく、衆議院参議院で意見が割れることはあり得ないので、上記のことは受験生にはピンとこないところもあろうが、実は、ねじれこそ、単純な多数決による採決ではなく、議論をより深めることができる可能性をもち、民主主義の観点からするとより健全ではないかという見解もある。
参議院を「衆議院カーボンコピー」とするのか否か、それを問う参議院選挙が近づいてきた。