【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【速修】⑥国会・内閣・裁判所(1)三権分立

01 国会は唯一の立法機関と規定されているが、内閣の政令制定権、最高裁の規則制定権など例外が認めてられている。
  • 〇何度か言及するかも知れないが、「例外」はよく試験で狙われる。内閣の「政令」は後に再び触れるが、とりあえず、最高裁の「規則」とともに、例外の一つであることを確認しておきたい。最高裁の規則については、訴訟の「手続き」に関するルールが主なものであるが、この他、地方自治体で制定される「条例」も例外の一つ。なお、内閣の政令に関連して、「内閣は、憲法および法律の規定を実施するために、省令を制定することができる」という文章が出たことがある。「省令」は、各省大臣が担当する行政事務について、法律・命令を施行するため、又は法律・政令の委任に基づいて定めるルールであり、「政令」の下位ルールとは言え、「法令」の一種である。しかし、ここでは内閣が制定としているので✕ということになる。内閣はあくまで「政令」。細かな問題だが実際にセンター政経で出題されている。現社はあまり細かな知識は求めてこないが、倫政組はできるだけ深く知ろう。かと言って現社組がその必要性がないと言っている訳ではない。後には、侮ることなかれ現社、といった問題がいくつか出てくる。

 

02 衆議院、参議院の議長はそれぞれ内閣が指名する。
  • ✕各議院ごとに選挙で「選任」される。一般的に議院第一会派の長老格が選任されることが多い。なお、ここで言葉にこだわると、議長については、憲法では「選任」という言い回しになっている。それぞれ両議院で選ばれ、「任命」されるということである。天皇に「任命」権があるのは、内閣総理大臣最高裁判所の長官、ということで行政と司法の二権の長であということはぜひインプットしてもらいたい事項であるが、ところが、立法の長である両院の議長については、天皇に任命権はない。これはなぜなのか、という素朴な疑問が生じてくる。ところが、これに対する明確な答えがないようなのだ。「議長は同等者間の代表に過ぎないため、その任命と解任は議会の自治に委ねられているから」とか、「天皇の国事行為には内閣の助言と承認が必要だが、議長の任命は選出に内閣が関わらないため、国事行為の対象外となるから」といった説明があるようだが・・・。

 

03 内閣は、国会議員の辞職勧告を行なうことができる。
  • ✕国民が選んだ議員を、国民が直接選んだ訳ではない内閣が辞職勧告することは、国民主権に反する。あくまで国会内で辞職勧告決議案が出される。ただし、辞職勧告は、「院外での不祥事に対して」出される議会の意思表示だが、あくまで自発的な辞職を促すもので、法的拘束力はない。「過半数」の賛成が必要とされる。可決されたケースは4例だが、いずれも辞職を拒否している。除名処分は、「院内の秩序をみだした議員」が対象とされ、これは法的拘束力をもつ。過去に2例だけある。除名する場合には、所属する議院において、過半数ではなく、出席議員の2/3以上による議決が必要である。要するに、議員は国民が直接選挙で審判を下すことができるので、そちらに委ねるべきであるとの思惑で、辞職勧告のハードルは高くしてある。

 

04 衆議院については、内閣によって解散させられることはない。
  • アメリカの大統領制では大統領に議会の解散権はないが、日本の場合、衆議院については内閣による解散があり得る。それが二つのケースがあるということは承知の通りかと思う。内閣不信任案が衆院で可決された時の「対抗策である解散」(69条)と、内閣の助言と承認による「天皇の国事行為としての解散」(7条)である。このうち後者については、「首相の専権事項」「伝家の宝刀」などと言われるが、ただし、憲法は、首相にはどんな解散でもできるとも、逆に恣意的な解散はできないとも書かれていない。また7条解散については、後に見る「苫米地」判決もある。それって何?という受験生もいるかと思うが、いろいろなことが重層的に結び付けられるようになったら本物。そのためには、一歩一歩、積み重ねるしかない。

 

05 内閣は、衆議院で不信任の決議案が可決された場合でなくとも、自らの判断で衆議院の解散を決定することができる。
  • 〇前に見たように、内閣は天皇の国事行為に対する助言と承認を通して衆議院を解散することができる、という憲法運用が定着している。これを易しく言い直すと左のような文章になる。〇である。

 

06 内閣は予算の作成、外交関係の処理のほか、内閣法制局による審査を経て法案を国会に提出することができる。
  • 立法権は国会にあるが、法案は内閣も提出することができる。議員立法より多く、成立率が高い。所管する各省庁から案が作成され、「内閣法制局」で様々な角度から審議され、閣議決定を経て、国会に提出される。なお、現代社会では、「内閣が国会に法案や予算案を提出することは禁止され、議員のみに法案や予算案の提出が認められるようになった。」なんていうトンデモナイ問題が出されたりする。もちろん✕。

 

07 内閣総理大臣は天皇が任命する。
  • 〇先に触れたように、天皇の任命は二権、行政と司法の長のみ。

 

08 両議院に国政調査権があるが、国会の権能を行使するためのものに限られ、内閣の独立性を侵害するような調査はできないとされている。
  • 三権分立の観点から、「内閣の独立性を侵害するような調査はできない」とされている。公務員の職務上の秘密について調査することや、資料請求の際に過剰に情報の開示を求めることなどが該当する。森友問題は調査の対象となった。が、文書改ざん等、一方で、国政調査を軽んじたことが批判されている。

 

09 司法権にかかわる事項については、国政調査はできない。
  • ✕できない訳ではない。ただし、三権分立の原則から、司法権の独立を侵害するような国政調査は認められていない。裁判中の裁判内容を批判するような調査や、判決の当否を判断するような調査は認められていない。なお、現社ではトンデモナイ問題が出る。「国会が国政について正しい情報を有していないとの批判にこたえるため、国会活性化法によって、初めて両院に国政調査権が認められた。」もちろん✕。

 

10 内閣不信任は、世論調査に基づいて衆議院が決議できる。
  • 衆議院が出せるが、世論調査に基づく訳ではない。衆院議員「50人以上の賛成」があれば発議できる。可決されたのは過去4回。なお、●2021現代社会第2日程で衆議院のみに決議権があるという超基礎問題が出題されている。

 

11 司法権は裁判所に属するが、行政機関のなかには準司法的手続きとしての前審を行うことができるものもある。
  • 労働委員会などの「行政委員会」に裁決・審判などの準司法的作用が付与されている。裁判によらず労働審判委員会が主体となって審判を下す労働審判法も制定されている。ただし、「終審」ではない。あくまで終審は裁判所である。

 

12 行政機関が審判を行うことは、その判断に不服のある者が裁判所に訴えることができる限り、許される。
  • 政経の問題であるが、読解力と連想力が要求される問題である。連想すべきは「行政機関は、終審として裁判をおこなふことができない」という憲法の条文。「終審でないならば行政機関も裁判を行うことがあり得る」と解釈することができるが、それも、あくまで、問題文のように、裁判所に訴えることが保障されている限りにおいて・・・ということになる。

 

13 最高裁判所長官は内閣が指名する。
  • 〇国会が内閣総理大臣を指名し、その内閣総理大臣が組閣した内閣が最高裁裁判官を指名する。このツートップのみが天皇の任命対象。このような構図をインプットしてしまおう。ところが、では、なぜ、最高裁長官は内閣なのか、国会でもいいのではないか、というこれも素朴な疑問が生じるのではなかろうか。しかし、この答えも、実は確定したものはないが、考えられるのは、内閣に最高裁判所長官の指名権がないと、内閣の裁判所に対する権限がなくなってしまうからという理由か。相互に抑制し合う三権分立という観点からということになる。なお、長官以外の裁判官の「任命」権も内閣にあり、これを抑制の補強とみなせば、割とすんなりと納得できるのでは?繰り返し出題されているが、●2021現社第1日程でも出題された。

 

14 最高裁の裁判官は、国会が設けた弾劾裁判所や国民審査によって罷免されることがあり得る。
  • 〇指名・任命する権利は内閣にあるが、弾劾裁判権については国会にある。その権利まで内閣にあると、内閣が司法の人事権を全て掌握してしまうのでそれは避けてある。また、他方では、国民審査という制度によって、主権者である国民によって、直接罷免されることもあり得る。国政では議員や首相に対するリコール制度はないが、こと裁判官に対して一種のリコール制度が導入されているということになる。だからこそ、「司法権の独立」と「裁判官の独立」ということがことさら言われているのであろう。

 

15 高度な政治的判断に基づいて行なう行為は司法になじまないという統治行為論は、司法権の独立に基づいた考え方である。
  • ✕駄作問題かも知れないが、論理的な考えれば明らかに✕と判断できるはず。司法権の独立とは結びつくまい。なお、統治行為論は、国民主権原理の観点から、国民に選ばれた訳でなく間違った判断をした際の責任も負えない裁判所より、国民に選挙で選ばれた政府の立場を尊重するという「司法自制の原則」に基づくという考え方がある。しかし、これを支持するかどうかは意見の分かれるところであろう。なお、「裁量論」という考え方もあり、これは後に触れる。最後に個人的な意見だが、三権分立の中にあって司法権は内閣・国会の権限による人事的な緊張関係下に置かれているが、だからこそ「司法権の独立」がことさら重要視されている、しかし一方で、だからこそ、裁判所には萎縮せずに「憲法の番人」として国民のために気概をもって審査してほしい。

 

16 通常国会は毎年1月に召集され、150日間と期間が定まっており、延期できない。
  • ✕1回だけ延長できる。延長期間は与野党間で審議 では、何のために延長する必要があるのか? 後にその理由について述べるが、「延長」にも意味がある。それを探らないで1回だけの延長を覚えることにとどまっていてはそれこそ意味がない。常に、学んでいる事項の意味を探る姿勢をもつこと、これが高得点の秘訣でもあり、今後君たちが自己実現し、社会を変革していくための Spring boardだ。 

 

17 内閣総理大臣が通常国会で行う施政方針演説は、その年の内閣全体の基本方針を示すものである。
  • 〇令和4年通常国会では、岸田首相は「施政方針演説」を行い、新しい資本主義等について方針を語った。「所信表明演説」は衆院選後の特別国会、臨時国会の冒頭、会期中に首相が交代した際に、首相が国政の方針を説明する演説で、これとは区別される。

 

18 衆議院が解散されると40日以内に総選挙を行い、選挙から30日以内に特別会を招集しなくてはならない。
  • 〇特別会は「総選挙」後30日以内に招集される、首相を選ぶためのものである。なお、衆議院議員の任期満了による「総選挙」後に招集される場合は特別会ではなく、臨時国会として扱われる。ただし、日本国憲法下で任期満了による総選挙を実施したのは、三木内閣時の1976年だけである。従って、「総選挙後」は「特別会」としておいて問題ないかと思う。

 

19 特別会の召集があったときは、内閣は総辞職しなければならない。
  • 〇前で見たが、特別会は解散「総選挙」後30日以内に招集される。それまでは、内閣は職務を全うしなければならない。そして、特別会招集時に総辞職し、新たな首相を選ぶことになる。解散総選挙時辞職する訳ではないことに注意。

 

20 衆議院の解散後、国会の議決が必要になった場合、新しい衆議院議員が選挙されるのを待たなければならない。
  • ✕国会の議決が必要になった場合は、内閣は、参議院の「緊急集会」を開くことができる。これについては後にもう少し踏み込むが、緊急集会は、これまで2回しか開かれていない。しかし、衆議院解散後に政治的空白が生じないようなしくみが用意されている。