【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【今日の時事問題】日本の国家予算 その5(公財政教育支出)

国家予算自体から離れるが、これまで防衛費が対GDP比1%から2%へ拡大中・・・

fukuchanstudy.hatenablog.com

 

「家族関係支出」も2%程度、ということに触れた。

fukuchanstudy.hatenablog.com

公財政教育支出

では、政府・地方公共団体が教育にかけている支出「公財政教育支出」はどの程度なのだろうか?

公財政教育支出には、教育機関に対する直接支出と、家計に支給され教育機関が管掌する教育関連の公的助成が含まれています。
(中略)
この指標は、政府が教育をどの程度優先しているかを、それ以外の領域-医療、社会保障、防衛、安全保障など―への投資との比較で明らかにしています。

引用元:OECD
https://www.oecd.org/tokyo/statistics/public-spending-on-education-japanese-version.htm

「公財政教育支出」は、OECDでも比較されるデータで、教育サービスに対する公財政支出、大学での研究・開発に対する公財政支出、給食や学生寮などの補助的サービスに対する支出からなるようだ。

日本の公財政教育支出の対 GDP

「公共サンプル問題」の、第3問Ⅲ【資料4】が公財政教育支出についてのものであった。後述するが、良問なのでぜひ取り組んでほしい。www.dnc.ac.jp

そこでは、以下のような数値が挙げられていた。

日本の公財政教育支出の対 GDP 比(2017年)は、
 ・小中高が合わせて   2.6%
 ・大学・高等専門学校が 1.4% のようだ。
合計4%ということで、防衛費の2倍にあたる。

 

これを多いと捉えるか?少ないと見るか?
また、国際的に見て多い方なのか、それとも少ない方なのか?

世界の公財政教育支出の対 GDP

これまで教育を受けてきた受験生、想像できると思われるが・・・
国際的に見ると、日本は教育に金をかけていない。

OECDの平均
 ・小中高が合わせて   3.5%
 ・大学・高等専門学校が 1.4% 計4.9%。

主だった国の状況は以下の通り。
・イギリス 4.3% 2.0% 計6.3%
アメリカ 3.6% 2.6% 計6.2%
・フランス 3.7% 1.5% 計5.2%

 

となると、日本の場合、「家計」にしわ寄せが来る。
教育にお金がかかること、これも少子化に歯止めがかからない理由の一つであろう。

公財政教育支出が少ない理由?

国際競争の中で生き残って経済成長をある程度維持するためにも、教育が必要である。共生社会を実現するためにも、教育に待つところが大きい。

では、日本はなぜ教育に金をかけないのだろうか?

ひとつ考えられることは、日本では、教育の成果が個人の努力や「家計の経済力」によって獲得された「私的利益」と見なされてしまいがちで、教育の持つ「社会的・公共的意義」に対する認識が薄くなってしまっているからではないか、ということである。
そのため、義務教育だけでなく、高等教育も公費で推進していこうとする「合意」が形成されず、そのため「家計」負担が大きくなっている。

 

 なお、教育は、「外部経済」の一例である。
「外部経済」というのは、利益(プラス)をもたらすものではあるが、あくまで、「市場を通さずに」ということで、「市場の失敗」とされる。

 

※以下、やや理解しづらいかも知れないが・・・

「教育を受けることは、本人のためだけでなく、技術水準の向上など社会貢献につながる」。

しかし、教育はある意味では任意なので、「義務教育」とするなどし、国が公費を支払って行わないと浸透しない。だから、かなりの部分、公費負担となる。政府が市場の失敗を補正する必要があるということだ。

ところが、一方で、将来の社会貢献のプラスについては対価は払われないので、教育の「社会的・公共的意義」、政府の補正の意義が見えづらくなってしまう。

 

 日本は、ここのところ特に「公共性」より「効率性」を重視する風潮が強く、そうなると、学校の統廃合が断行されたりし、「効率性」の観点から公費負担を削減しようというベクトルが働き、ある程度は公的に支援するが、あとは「自己責任」・・・、こうした新自由主義の所以ではないか、ということである。

 

若人よ、君たちも「コスパ」「タイパ」を重視していると思うが、効率ばかり追わずに、持続可能なかたちで「公共性」も慮ってほしいなと思うが、いかがか?

若者自身が「社会を変革するために学ぶんだ」と叫んで、教育のもつ「社会的・公共的意義」が正当に評価されないと、大学等の高等教育機関の無償化も進まないぞ。

 

なお、私のこのブログも、公共のための無償の営み・・・
大いに活用してほしい。

 

公共サンプル問題

最後に、今回、「公財政教育支出」については、「公共サンプル問題」を引き合いに出したが、これは高3生も参考になる。


夏休みにはぜひ取り組んでほしい問題だが、「公財政教育支出」を含んだ最後のⅢは良問。

以下の5つの資料の解読をさせた上で、「経済的不平等などが教育に及ぼす影響について」生徒同士の会話文を埋めさせるものとなっている。

・読解力、数学、科学分野において基礎的習熟度に達している子ども(15 歳)の割合(2015年)
・児童・生徒,学生一人当たりの年間教育支出(2017年)
・子どもがいる世帯における相対的所得ギャップ(2014年)
・公財政教育支出対 GDP 比(2017 年)
・ESCS 指数1単位上昇による,読解力,数学,科学分野の PISA テストのスコアの差(2012年)

※ESCS 指数・・親の学歴、親の職業、家庭の財産、文化的所有物(美術品及び古典文学作品)、教育資源という5つの指標に基づき算出されるもの

 

 少し前「親ガチャ」という言葉が注目されたが、日本も、家庭の経済的格差が子どもの教育に及ぼす影響は大きくなっており、「義務教育において、授業料の無償だけでなく、給食費、教材費その他の必要な支出についても、手厚く経済支援を行う」ことや「学校教育において、子どもが、多様な価値観や考え方などに触れ、職業体験や文化活動など、様々な経験を積むことができるようにする」といったことを選択するものとなっている。

 

問題自体は難しいものではないが、気概のあるもので、好感が持てる。
ぜひ目を通してみよう。