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【今日の時事問題】「為替介入」に関して、あれこれと確認しておきたいこと

ついに踏み切った為替介入

「円安が止まらない」というコラムを書き出したのがこのブロクを始めた3月下旬。
それから半年、ついに、9月下旬、政府が「為替介入」という「伝家の宝刀?」を抜いた。

www.boj.or.jp

 

急激な「円安」を止めるため、外国為替市場から「円買い」を実施し、円をレアものにしようとする操作を断行した。


この円買い操作のためには、手持ちの「外貨準備」を切り崩し、ドルを売る必要性がある。この円買い・ドル売りの為替介入は、1998年以来で、24年ぶりとのこと。

www3.nhk.or.jp

 

1998年の為替介入

1998年と言うと、バブル景気崩壊後、景気が低迷する中、不良債権問題も浮上、日本の円安・株安が世界経済に悪影響を与える恐れがあると危惧された時期であった。そのため、日本の単独実施だけでなく、日米による「協調介入」も行われた。


今回の為替介入は、日本の単独実施にとどまり、また、欧米も、一応、「容認」しているとのことだが、アメリカはインフレを抑えるため、「ドル高」を志向しているので、協調介入はありそうにないとのこと。

 

※物価高と通貨高はシーソーの関係にあることを想起せよ!!!

fukuchanstudy.hatenablog.com

 

また、各国が静観しているのは、それだけ日本の存在感が薄くなってしまっている、国際経済における日本の経済の地盤沈下が進んでしまった裏返しでもあるという指摘もある。

 

受験生なら知っておきたい「プラザ合意

この為替介入に関して、受験生としてぜひとも想起しておきたいのが、1985年の「プラザ合意」。

これは、アメリカの貿易赤字を削減するためのドル高是正を、G5各国が合意し、協調行動をとったもの。ドル安にするため、日本は円高を「容認」したが、円高誘導という点では今回と同じベクトルであり、円買い・ドル売りを実施した。この結果、円高によって輸出が不利になるという懸念から、金融緩和が行われ、この結果、「バブル景気」が生じたという、超重要項目である。また、この円高で、企業が海外に工場を移転、日本国内の「産業の空洞化」を招いたものでもあった。

 

受験生なら知っておきたい「外貨準備高」

今回は、急激な円安で、海外へ移転していた工場が「国内回帰」という現象が生じている中で実施された円買い・ドル売りであるが、これを実施するためには、十分な「外貨準備」がないといけない。

 

「外貨準備高」というのは、「国際収支」の学習の際に学ぶもので、「金融収支」を構成するものの一つ。これが現在、日本が、中国に続く世界第2位保有国であることは、受験生なら知っておかなくてはならない。

 

なぜ日本は外資保有しているのか。

政府と日銀が保有しているのだが、ではなぜ、ここまで外貨を保有しているかというと、実は、今回とは逆のベクトルである、「円売り・ドル買い」の「為替介入」を政府・日銀が、円高対策として、これまで結構頻繁に行ってきたからだそうだ。

 

円売り・ドル買いの場合は国債発行を通じて国内の金融市場から円を調達し、介入に充てるそうだ。

これまで「円買い・ドル売り介入」は32回にとどまる。

これに対して、「円売り・ドル買い介入」は他国にはそう大きな影響を与えないためか、何と319回も実施したとのこと。ただし、2011年を最後に介入はしていなかったようだが・・・このため、「外貨準備高」が膨れ上がってきたのだそうだ。

 

受験生なら知っておきたい「アジア通貨危機

この「外貨準備高」に関連して、受験の頻出項目である「アジア通貨危機」についても触れておきたい。

これは1997年にタイの通貨バーツが急落したことから発生したもので、その背景は、1990年代の東南アジアは世界の成長セクターと呼ばれるほど高度成長を遂げていたが、欧米のヘッジファンドがタイの通貨バーツに空売り(高く売って安く買い戻す)を仕掛けたことにより状況が一変。バーツを始め東南アジア各国の地域通貨が溢れ出し、暴落、深刻な不景気となったもの。それぞれ通貨の急落に対応できるまでの「外貨準備高」がなかったため、暴落を防止することができなかった。その後、タイについてはIMFの支援が入ったが、インドネシアでは政権が倒れたり、韓国やロシアにも飛び火するなど、様々な影響が出た。

 

日本の「外貨準備高」

この点、日本は十分な「外貨準備高」があると思いきや、ところが、為替介入に活用されるのは、財務省所管の外国為替資金特別会計・政府保有分約180兆円だが、外貨準備の大半は米国債などの証券で、国際決済銀行(BIS)などへの預金は約19兆円にとどまるそうだ。

 

米国債を売却して介入資金にするのは国際協調の観点からハードルが高いとのことで、円買い・ドル売り介入には、資金面でも限界があるそうだ。

 

日本の外国為替市場の1営業日あたりの平均取引高は、現時点のドル円レートで換算すると54兆円規模とのこと。

 

介入規模がどの程度のものであったのか、まだ公表されていないが、かつてドル売りで1回の介入で2兆円程度のことがあり、それを準用して推測しても、取引高の4%程度のものでしかない。「投機」的な動きを阻止する意味合い程度で、為替相場の流れを替える効果はほとんどないのでは・・・という指摘もある。

 

今回の円安は、日米の金利差の拡大・・・これはもう理解しているとは思うが、この構造的な差が解消しない限り、今回のような単独為替介入では、今後、数回実施されたとしても、アメリカの金利上昇が止まる→円安も止まる・・・までの時間稼ぎにすぎないのではという論もある。

 

受験生諸君、いかがであろうか?いろいろなことが繋がり、「そういうことか!!!」と分かった感が高まっているだろうか?こまかい数字などは覚える必要はない。ただ、書いてあることの意味が理解できさえすればよい。
なお、国際経済がまだ未習の受験生は、また後日、もう一度このコラムを読んでほしい。

頑張れ受験生。時間はどんどん過ぎていく。一つ一つ確実に押さえよ。
夜明けは近い。

 

追記 今朝27日の朝刊によると、市場推計だと、今回の円買い介入は3兆円規模とのこと。すぐに使える預金の15%程度をつぎ込んだ模様。