【知っ得】経済分野の計算問題 ③比較優位
前回、機会費用について扱った。今回は機会費用を用いながら比較優位について深める。
比較優位について
それぞれ得意なものに「特化」して生産し、「貿易」しあった方が有利だという、リカードの比較生産費説。
以下の状況でどのように考えると効率が良いか、考えてみよう。
【問題】※「コメント」の指摘を受けて設問を若干変更しました。
以下のような作業状況の従業員に対して、どのような分業体制をとるのが合理的か。以下から選びなさい。
①AさんとBさん、1時間ごとに計算書・伝票の作業を交替する。
②Aさんは計算書を主に、Bさんは伝票を主にと、分業する。
③Aさんは伝票を主に、Bさんは計算書を主にと、分業する。
④すべてAさんの作業量が多いので、Bさんを解雇する。
【解説①】
簡潔に、Aさんは、Bさんに対して、
・計算書の作業効率は3倍、
・伝票の作業効率は1.5倍
→ だからAさんは計算書に、Bさんは伝票に・・・
→ ②ではないか・・・と考えることもできるかも知れないが
「機会費用」・「比較優位」という視点で、面倒だけど、丁寧に確認してみたい。
その際、「機会費用」とは、「ある財1単位の生産を増やすときに犠牲となる他の財の量」と捉えて、以下のように考えてみよう。
【解説②】機会費用で考える
計算書作成はAさんがやる方が、犠牲となる伝票が少ない
→Aさんは計算書に比較優位をもつ
伝票作成はBさんがやる方が、犠牲となる計算書が少ない
→Bさんは伝票に比較優位をもつ
計算書、伝票ともにBさんの方が作業効率が低いけど、
Bさんは実は「伝票は得意」・・・
ということで、解答としてはやはり②。
作業効率が悪いからと言って、Bさんを解雇してはいけないよ!!!
得意なことを任せれば・・・
「誰一人取り残さない」、SDGs・・・
ということになる・・・こういうことを言いたいために作り上げた問題でもある。
※以下は、「コメント」での指摘を受けて、202年12月に一部加筆修正をしました。
で、実際、結果として全体の作業量はどう変化するかも確認しておこう。
ア) 午前4時間は二人とも計算書、午後4時間は二人とも伝票
という時の全体の作業量と
イ) 8時間全てBさんは伝票に、Aさんには2時間は伝票、6時間は計算書に
という時の全体の作業量と
ウ)それぞれBさんは伝票に、Aさんは計算書に専念(特化)
という時の全体の作業量を比較してみよう。
ア | 午前 | 午後 |
Aさん | 計算書12枚 | 伝票120枚 |
Bさん | 計算書3枚 | 伝票80枚 |
合計 | 計算書15枚・伝票200枚 | |
イ | 午前 | 午後 |
Aさん | 伝票60枚計算書6枚 | 計算書12枚 |
Bさん | 伝票80枚 | 伝票80枚 |
合計 | 計算書18枚・伝票220枚 | |
ウ | 午前 | 午後 |
Aさん | 計算書12枚 | 計算書12枚 |
Bさん | 伝票80枚 | 伝票80枚 |
合計 | 計算書24枚・伝票160枚 |
アとイを比較すると計算書、伝票ともにイの方が増えていて、比較優位の視点を取り入れて分業すると、いかに生産性があがるということが分かるであろう。
ただし、ウの「特化」した場合は、計算書については突出して増加するが、伝票は減っている。イがよいのか、ウがよいのか、これは簡単な比較はできないが、状況によって、バランスを考えながら分業する・・・ということにでもなるのであろう。
なお、この問題の設定では、ウの特化が最も合理的とは言い切れないので、問題文を当初は「特化して分業する」としていたが、「Aさんは計算書を主に、Bさんは伝票を主にと、分業する。」という表現に変更した。4択としては②を選ぶ以外にはないと思うが、いかがであろうか?