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【深める】判決文を用いた問題 ④夫婦別姓についての判決

夫婦別姓について、民法750条の規定が憲法に反するかという裁判を題材に演習にチャレンジ。

 

民法第750条
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

憲法第14条1項
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

【問題】夫婦別姓訴訟

次の文は夫婦別姓に関する平成26年最高裁の判決文の一部である。

www.courts.go.jp

 

上告されたことのうち、平等権を規定した憲法14条1項にかかわる部分を抽出してみた。

(1)この部分の冒頭と最後の部分を示すので、この間の文章を、以下のア~エの文章から三つ選び、論理的に整合性の取れた順に並べ変えなさい。

論旨は,本件規定が,96%以上の夫婦において夫の氏を選択するという性差別を発生させ,ほとんど女性のみに1不利益を負わせる効果を有する規定であるから,憲法14条1項に違反する旨をいうものである。憲法14条1項は,法の下の平等を定めており,この規定が,事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは,当裁判所の判例とするところである。

 

ア 我が国において,夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても,それが,本件規定の在り方自体から生じた結果であるということはできない。

イ 夫婦同氏制について,婚姻に際し当事者の一方が意に反して氏を改めるか婚姻を断念するかの選択を迫るものであり,従前の氏に関する人格的利益を尊重せず,また,婚姻を事実上不当に制約するものであると評価して,いわゆる選択的夫婦別氏制の方が合理性を有するとする意見があることも理解できる。また,男女共同参画社会の 形成の促進あるいは女性の職業生活における活躍の推進という観点からの施策として,選択的夫婦別氏制の導入を検討すべきである。
ウ もっとも,氏の選択に関し,これまでは夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況にあることに鑑みると,この現状が,夫婦となろうとする者双方の真に自由な選択の結果によるものかについて留意が求められるところであり,仮に,社会に存する差別的な意識や慣習による影響があるのであれば,その影響を排除して夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは,憲法14条1項の趣旨に沿うものであるといえる。
エ 本件規定は,夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており,夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって,その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく,本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。

 

そして,この点は,氏を含めた婚姻及び家族に関する法制度の在り方を検討するに当たって考慮すべき事項の一つというべきであり,後記の憲法24条の認める立法裁量の範囲を超えるものであるか否かの検討に当たっても留意すべきものと考えられる。

 

(2)以下の設問に答えなさい。
1 原告は、夫婦別姓により女性が不利益を負わせられる形になっているとし訴えている。どのような不利益を負う危険性があり得るか、該当すると考えられるものを、以下から一つ選べ。


①改姓によって、それまで積み上げてきた旧姓でのキャリアが評価されなくなるので、職場では旧姓使用を余儀なくされること
②夫婦同姓に苦痛を感じる人が、婚姻の届出をしない共同生活、いわゆる事実婚をした場合、相続権や税法上の特典がなくなること
③結婚や離婚、再婚ごとに姓名が変わると、一体感をもって新たな家庭を築くという喜びを持つことができにくくなること
民法では「夫又は妻の氏を称する」と述べ、「機会の平等」は保障されているが、「結果の平等」が保障されていないこと

 

2 男女差別に関連し、以下のa~cのうち、実際に裁判所から出された判斷として正しいものの組み合わせを、以下の①から⑧の中から一つ選べ。


a 男性と女性とで定年に差をつける社内規定は違法で無効である。
b 女性が結婚や出産で転職を余儀なくされている現状に無策であることは行政の怠慢である。
c 女性のみに再婚禁止期間を定めた民法は、母体保護のためのもので、適法である。

 

① aのみ正しい
② bのみ正しい
③ cのみ正しい
④ aとbが正しい
⑤ aとcが正しい
⑥ bとcが正しい
⑦ 全て正しい
⑧ 全て誤り

 

3 この夫婦別姓の判決では、「( )で議論し判斷すべきである」と指摘された。空欄( )に入るものを以下から選んで記号で答えなさい。


①審議会   ②行政委員会    ③国会   ④国民

 

 

解説・解答

(1)について

この問題は、並べ替えとしてはこれまでの二つの例とやや違って、三段論法的な組立だけでなく、留意点まで触れた構成になっている。

従って、やや難しい、一方で、間逆なものが一つだけ入って入るが関係ないものはカット。

4つのうちから3つを並べ替えるというもので少し易しくなっている。


どう?並べ替えられたであろうか?

イントの一つは、前2回とも初っ端の「一般論」が並べ替えの文の中にあったのに対して、今回は、最初の括弧でくくった前段の中に組み込まれていることに気づいたかどうか・・・

法14条1項は,法の下の平等を定めており,この規定が,事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである。」という部分がそれ。

 

婚外子相続差別違憲決定の選択肢オの末尾が全く同じ言い回しで、これは最高裁判決の定例文句のようだ。・・・

 

だから、今回は、「当裁判所の判例とするところである。」の続きと結論を見出すということになる。
で、前後したが、この問題、つまり夫婦別姓問題は、承知の通り、「合憲」。

つい先般も合憲判斷とされたが、この判例文はその前に出されたもの。

www3.nhk.or.jp

いずれにせよ、前2問とは違って、違憲ではないので、「もっとも」といった、結論以外のことが付加されていることになるんだ。

 

で、とりあえずアから読んでいくと・・・こいつは「結論」じゃないかな。ズバリ言っているもの。

 

イは・・・これは真逆の立場じゃないかな・・・

さらに、「選択的夫婦別氏制の導入を検討すべきである。」と強気のコメント。

先に触れたように裁判所は、三権分立という原則から立法の裁量を重視しているはず・・・

引っ掛かる部分があるのでとりあえずカット。

 

ウは・・・おっと、「もっとも・・・」
なんじゃこりゃ~ こんな展開ありかよ・・・

そうか、最後の文章に 「そして・・・」の文章があるから、もしかしたらこいつが最後に来るかも・・・

とりあえず考えといて・・・

 

エを読んでみると・・・
「夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており,夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって,」

何と、差別的取扱いでないということの根拠を示している・・・

ということは、こいつが、結論の前か?

 

そうなると、結論がアだからアの前にエがくる。

そして、「もっとも」のウに転じて、括弧書きの「そして・・・」につながる・・・

どれ、もう一度それで通じるか読んでみよう・・・OK!!!

 

論旨は,本件規定が,96%以上の夫婦において夫の氏を選択するという性差別を発生させ,ほとんど女性のみに1不利益を負わせる効果を有する規定であるから,憲法14条1項に違反する旨をいうものである。憲法14条1項は,法の下の平等を定めており,この規定が,事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは,当裁判所の判例とするところである。

 

エ 本件規定は,夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており,夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって,その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく,本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。

ア 我が国において,夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても,それが,本件規定の在り方自体から生じた結果であるということはできない。

ウ もっとも,氏の選択に関し,これまでは夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況にあることに鑑みると,この現状が,夫婦となろうとする者双方の真に自由な選択の結果によるものかについて留意が求められるところであり,仮に,社会に存する差別的な意識や慣習による影響があるのであれば,その影響を排除して夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは,憲法14条1項の趣旨に沿うものであるといえる。

 

そして,この点は,氏を含めた婚姻及び家族に関する法制度の在り方を検討するに当たって考慮すべき事項の一つというべきであり,後記の憲法24条の認める立法裁量の範囲を超えるものであるか否かの検討に当たっても留意すべきものと考えられる。

ということで答えは エ→ア→ウ

 

(2)1について

こなれた問題にまではなっていないが、②が正しい。

①は旧姓使用を余儀なくされているという表現はどうか、

③は「一体感をもって新たな家庭を築くという喜びを持つことができにくくなる」というのは夫婦別姓の場合への批判として出される観点、

④は「結果の平等」はあまりにも論理の飛躍がありすぎ・・・

ということで本番の問題にはならないような雑な設問ではあるが、思考訓練のために提示してみた。

(2)2について

2はaのみ正しい。

日産自動車定年差別訴訟」という有名な判例がある。

www.courts.go.jp

bは「行政の怠慢」などという判例はあり得ない。

承知の通り、行政に対しても裁判所は極めて慎重。

立法権に関しても、「立法の裁量権」という言葉を用いて、あくまで国会に委ねる姿勢が強い。

(2)3について

その典型例が夫婦別姓の裁判では、「国会」で議論することを求めたのが、せめてもの「気概」であった。