01 ドルを基軸通貨とするIMF(国際通貨基金)体制は、1944年のブレトンウッズ協定に基づいて成立した。
02 IMF(国際通貨基金)体制は第二次世界大戦前の為替切下げ競争が、世界経済の停滞をもたらしたという反省を踏まえて形成された。
03 ブレトンウッズ協定では、固定為替相場制が採用された。
- 〇まずは安定性が求められた。
04 ブレトンウッズ体制は、金とドルの交換を前提にし、ドルと各国の通貨を固定相場で結びつけるものである。
05 IMFが固定為替相場制の下で基軸通貨をドルとしたのは、アメリカが経済的に優位であったことを背景としたものであった。
06 IMF(国際通貨基金)は、為替管理の撤廃を促し、経常取引の自由化を推進する、国際収支危機に陥った国に対して短期資金を融資する、融資対象国の経済政策の運営を監視するといった役割を担っている。
07 IMF(国際通貨基金)は、経常収支赤字により流動性不足に陥った国に無条件で融資を行うことで、当該国の債務返済を円滑化する機能を有する。
- ✕さすがに無条件ではない。様々な条件をクリアすれば融資。
08 国際復興開発銀行IBRDは第二次世界大戦後、IMF(国際通貨基金)、GATT(関税と貿易に関する一般協定)とともに、世界経済の復興や発展に尽力した。
09 国際復興開発銀行の貸付けにより、日本は東海道新幹線の建設を行った。
10 国際復興開発銀行の貸付けは、相手国が発展途上国の場合には、利息の支払いを求めない。
- ✕政経の問題だが、判断に迷う。もしこれが正しいとすると、実は中国はあくまで「発展途上国」なので、利息を求めないということになるが、さすがにそれは容認されまい。あくまで準商業的な融資を行う機関。ただ、実際は、状況によって、低利貸付、場合によっては確かに最貧国に対しては無利子融資もあるようである。途上国の異なる発展段階や多様な資金需要に応じるため弾力的な対応をしていると捉えておこう。なお、第二世界銀行と呼ばれるのが国際開発協会(IDA)で、ここは最貧国に対して超長期・低利の融資及び贈与等を行っており、役割がやや違うようである。なお、DAC(開発援助委員会)は,OECDの下で発展途上国援助の調整と促進を行うために設立された組織。この三つの組織の違いも頭に入れておこう。
11 発足したばかりのÍMF体制の下では、通貨当局は、為替相場の変動を、IMFで決めた平価の上下1パーセント以内に抑える取決めとなっていた。
- 〇固定為替相場制ということであるが、±1%という枠はあった。教科書の欄外に記載あり。
12 固定相場制のIMF(国際通貨基金)体制が崩壊した背景には、日本や西ドイツの経済的台頭、ベトナム戦争によるアメリカの対外軍事支出の増加などがあげられる。
13 1960年代には、アメリカの金準備高が減少しドル不安が高まった。
14 1970年代の初めに、アメリカは金とドルとの交換を停止した。
- 〇1971年、ニクソン大統領の時であった。
15 円やマルクは、1971年のスミソニアン協定に基づいて、ドルに対して切り下げられた。
- ✕ドル不安を背景にドルの価値が下がり、円も1ドル360円から240円に「切り上げ」られた。
16 スミソニアン協定では、変動為替相場制への移行が合意された。
17 変動相場制は、為替市場の時々の通貨需要・供給によって、金と各国通貨価値との平価が決まるものである。
- ✕「ドル」と各国通貨価値
18 変動為替相場制度は各国の経済力の変化に対応できるメリットがあるが、他方で投機的な動きによって市場が不安定になるデメリットもある。
- 〇メリットを3点。①変動為替相場制は、各国の通貨価値を外国為替市場の「需要と供給」にまかせてしまう制度であり、各国の経済実勢が為替レートに反映される。円高になるということはその時の日本経済に勢いがあるというシグナルであり、円の購買力が高いことを意味する。それを指標に経済活動を検討できる。②また、国際収支の不均衡が為替相場の変動によって自動的に「調整」される。円安になると、輸出価格を下げるので輸出を増加させ、他方では輸入価格を引き上げて輸入を抑える効果をもち、収支赤字を改善することができる。③固定相場制では為替レートを維持するために他国、特にアメリカの金融政策に追随せざるを得なかったが、変動相場制に移行することで、自国の金融政策に大きな裁量権を持つことができるようになった。一方で、デメリットも。為替リスクにより為替差損が生じる場合があることや、投機行為で大きく相場が変動し通貨危機を引き起こす場合もある。現在生じている、「悪い円安」など、為替レートの「急激な変化」は貿易環境の混乱や自国の経済状況を悪化させることもある。
19 変動為替相場制は、固定為替相場制に比べると、貿易の不均衡を拡大する機能をもつとされる。
20 1973年以降は、変動為替相場制に移行したため、各国の通貨当局による外国為替市場への介入は不可能となった。
- ✕プラザ合意以降は、基本的には変動相場制を基調にしつつも、情勢によって適宜市場に介入する協調介入体制が定着している。
22 キングストン合意において、変動相場制が承認されるとともに、金に代わってSDR(特別引出権)の役割を拡大することが取り決められた。
- 〇この時、SDRは金に代わる準備資産とすることが決められたが、別のところで触れたように、期待どおりにはなっていない。
23 ドル安が世界経済の不安定要因となる懸念が強まったので、1985年為替相場を是正するためにプラザ合意が結ばれた。
- ✕「ドル高」是正である。ところでなぜ「ドル高」になったのであろうか?おそらく今の受験生なら、現在ドル高・円安なのだが、その原因については分かっているはず。そう、アメリカが金利をあげたから。だから多くの国々の人がアメリカの銀行に預けようとドル買い・・・そのため現在ドル高、その裏返しとして円安となっている。実は、この時も、アメリカは高金利政策をとって、アメリカへ資本が流入、ドル高となっていた。ところがドル高だと貿易が伸びない。そのため、アメリカは貿易赤字が拡大、結果として経常収支も大幅な赤字となっていた。一方で、政治的にはレーガン時代「新冷戦」と呼ばれる軍事費増大の状況にあり、財政収支も赤字。これが世にいう「双子の赤字」。そこでとりあえずはドル高を是正しようということで、協調介入のため、日本も含めて先進5カ国の蔵相・中央銀行総裁が集まり、ドル高是正の合意が交わされた。この結果、日本については円高が進み、これを起点に副産物としてのバブル経済が生まれてくることになることはもう承知のことかと。なお、日本にとって、プラザ合意はやむを得ない選択だったとの見方もある。米国内で高まりつつあった対日制裁の機運を抑制し、貿易戦争を回避した面もあったという見方である。
24 先進資本主義各国はこの合意に基づき、為替市場に協調介入し、ドル相場の適正化を図った。
- 〇日本だけではなく「西ドイツ」などもマルク高になるよう介入
25 プラザ合意後、アメリカの貿易収支は黒字へと転じた。
- ✕日本の貿易収支・経常収支が黒字のままでであったのと同様に、アメリカの貿易収支・経常収支も赤字のままであった。と言うより、米国の貿易収支は1970年代に赤字化し、以降も赤字、それどころか近年さらに大きく拡大している。
27 急速な円高による輸入増大から、日本の貿易収支が赤字になり、産業空洞化が懸念された。
- ✕輸入増大ではなく「輸出が不振」で貿易収支は確かに悪化した。ただし貿易赤字にはならず。また、産業の空洞化も論理的な整合性がなく、何とも意味不明の文章。
28 急速なドル安が進んだため、為替レートの安定をめざし、ルーブル合意による政策協調が行われた。
29 サミット(先進国首脳会議)は、冷戦の終焉をうけて世界規模の問題に対応するために開始された。
30 G7(先進7か国財務相・中央銀行総裁会議)は、通貨問題など国際経済問題を協議するために開始された。
31 アジア通貨危機は、バーツの値下がりによる投資資産の減価を見越した外国投資家が、タイヘの投資を引き揚げたことを発端にして生じた。
32 90年代後半のいわゆる「アジア通貨危機」の際にはIMFは、直接関与せず、代わって日本が危機に陥った国々に二国間援助を大幅に拡大して経済的支援を行った。
- ✕これもとんでもない問題だが、経済的に低迷している日本にそのような力はない。日本も支援はしたが、下に示すようにÍMFが支援に入った。
33 アジア通貨危機では、IMF(国際通貨基金)の指導の下で協調して資本移動を規制した。
34 アジア通貨危機発生当時、外国投資家がアジアヘの投資と同時に中南米などへの投資も引き揚げたため、アジア以外の新興経済諸国地域にも危機が伝染した。
35 危機後、ASEAN+3(日本・中国・韓国)では、同様の危機が起きた場合に備え、金融面で協力し合う体制が整えられた。
36 2008年に世界同時不況を引き起こしたリーマン・ショックは、アメリカのサブプライム・ローンの不良債権化が引き金であった。
- 〇日本にも大きな影響を与えたリーマン・ショックだが、これは正しい。以下4択で一つだけ誤りである。
37 サブプライム・ローンは低所得者向けに貸し付けた住宅ローンで、この債権などを束ねた証券化商品が売り出されていたが、そのリスクが不透明になっていた。
38 住宅バブルが崩壊し、住宅価格が下落したため、サブプライム・ローンの返済が滞り、不良債権化した。
39 サブプライム・ローン問題を契機に、IMF(国際通貨基金)により資本の自由な移動が原則として禁止された。
- ✕さすがに資本の自由な移動の「禁止」はない。と言うことで、4択としては、サブプライム・ローンなどの理解は問うているものの、実は、それとは別のところの常識的な判断力があるかどうか・・・というように、肩透かしの問題も時々ある。そういうこともあると頭の片隅においておこう。
40 アメリカではリーマン・ショックをうけて、銀行の高リスク投資などを制限する法律が成立した。
41 G7による金融サミットが開催され、金融機関やヘッジファンド、タックスヘイブンに対する規制・監督を強化することなどが決められた。
42 ユーロ危機は2009年の秋、ギリシャの新政権がその財政赤字は、それまで信じられていた対GDP比で3.7%ではなく12.7%である(後に15.6%に訂正)と発表したことを発端として発生した。
43 ギリシャ財政危機では、財政状況が悪化したギリシャの国債利回りが高騰した。
- 〇高騰という言葉につられて単純に〇と判断した生徒が多いと思うが、よく考えると財政危機なのに利回りがよくなるというのはどうだろうか?✕かな・・・という生徒もいるはず。しかし実は〇。国債は「価格と利回りは反対の動きをする」 債券価格が下落すると利回りは高くなる。財政悪化すると当然その国の債権は危ないので信用度が低くなり、価格は下落する。ところがそのため一方で利回りは高くなる。ギリシア・ショックの際、10年国債の利回りは42%だったとのこと。つまり、利回りがいいので買って!!!、ということになるんだけど、一方でその分だけギリシア政府は後々に負担がかかるので不健全。なお、現在ギリシャは財政面でも立て直しが進み、国債の利回りも1%を割り込んできたそうだ
44 EUでは、ギリシャの財政危機を契機に、各国の「金融政策」を各々の国でばらばらに行うのではなく一元化を図ることで、為替相場を安定させようとした。
45 管理フロート制に移行した中国では、貿易拡大によって人民元の為替相場を徐々に切り下げてきている。
- ✕「切り上げ」を余儀なくされているが、まだ優遇されているとアメリカからさらなる切り上げの圧力を受けている。