【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【速修】経済の正誤問題 ⑨貿易・資本移動・国際収支(2)国際収支

17 1990年代以降、外国からの直接投資と輸出を促進するために政策的に設けられた工業地帯である輸出加工区が設定されるケースも出てきた。原則として製品の輸出を条件に、工場を設置しようとする外国企業に対して、税制、事務手続き、工場用地取得などで優遇措置をとる地区のことである。
  • 〇「輸出加工区」は教科書に記述はないが、かつてセンター試験で問われたことがある。輸出主導型経済成長を目指す国の間でかなり広がりを見せている。現在、この「輸出加工区」で、労働法の適用が免除され、労働組合活動や団体交渉に制限が課されているところがあり、ILOが問題視している。サプライ・チェーンにおいても「ディーセント・ワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)の保障が不可欠であり、このあたりの問題も含めて出題される可能性がある。

 

18 2000年代以降、日本に対する海外からの直接投資が急速に進み、世界で最も投資される国となった。
  • ✕とんでもない問題を作ってしまったが、これは大ウソ。外国企業に買収された電機メーカー、保険会社等もあるが、日本に対する直接投資が少ないことが実は課題としてあげられている。投資コストが高いことも理由の一つ。日本が円高基調であったことについては、いろいろなところで触れているが、円高だと海外の国々からすると自国通貨の購買力が低くなり、投資しづらいということになる。

 

19 日本は世界最大の対外直接投資の国である。
  • ✕貿易立国から投資立国へということを強調してきたが、直接投資そのものについては世界一ではない。もしそうなら必ず教科書に記されているはず。2021年データでは、アメリカとドイツに次ぐ3番手。4番手が中国であるが、今後中国が拡大していくものと思われる。対外直接投資「残高」についてはアメリカ、オランダ、中国で、日本は8番手。ちなみに、オランダには節税のしくみがあり多国籍企業がオランダを通じて世界各国に投資しているとのこと。なお、日本は、しかし、海外純資産は世界一で、世界最大の債権国であることは後に触れる。

 

20 短期の資本移動の中には、ヘッジファンドの急激な流入・流出のように世界経済を不安定化させるものがある。
  • 〇証券投資については、企業だけでなく、投資家、なかでも機関投資家や富裕層から私募により資金を集めるヘッジファンドによって急激な変化が生じることがある。その典型的な通貨危機が1997年にタイで発生した通貨危機である。インドネシア,韓国など,他のアジア諸国にも波及した。なお、一時急激に進んだ日本の円安も投資家の投機的な円売りドル買いが影響したとされる。

 

21 資本を回収する場合は、証券投資の方が直接投資よりも困難である。
  • ✕「直接投資」は海外に工場をつくること等なので、簡単には引き上げられない。証券投資は都合の良いタイミングで資本を簡略に回収できる。

 

22 国際収支は、国際間の経済取引の受け取りと支払いの勘定を、通常1年間にわたって総合的に記録したもので、ストックの面からの指標である。
  • ✕「フロー」の面からの指標・国の家計簿。

 

23 経常収支は一国の対外的な収入と支出の差額を表すもので、内需が国内総生産を上回るとマイナスとなる。
  • 〇「経常収支」の一部に「貿易収支」があり、これが黒字、赤字と言われるように、経常収支自体も「差額」を表すもので、赤字となったり、黒字となったりする。後段については、「経常収支は国内総生産内需の関係で決まる」、「GDP内需」という計算式を頭に入れておきたい。結果、稼いで、使って残ったおカネということになる。なお、内需というのは、「消費、投資・政府支出」である。「内需拡大」の必要性が言われつつ、なかなか消費意欲が高まらない日本であるが、ある意味では、そのため経常収支が黒字であるとも言えなくない。なお、アメリカの場合が消費意欲が高く、内需が莫大 → そのことも一因として経常収支は何と赤字。

 

24 経常収支=貯蓄-投資が成り立つとすると、経常収支が黒字であれば、貯蓄は投資を上回り、その差は海外に投資されることになる。
  • 〇これがこれまでの日本のタイプである。逆に、アメリカは、経常収支が赤字で、国内は貯蓄不足なので、外国からの投資の流入でそれを埋め合わせるというかたちをとる。

 

25 金融収支は、対外投資などに関する収入と支出の差額を表すもので、経常収支がマイナスになると、その分だけ対外純債務が増加し、金融収支もマイナスになる。
  • 〇経常収支が「カネ」勘定であるのに対して、金融収支は、「資産」の増減である。経常収支が黒字になった日本の場合は、そのおカネを外国に貸し、資産を獲得すると、金融資産はプラスとなる。逆に、経常収支がマイナスになったアメリカは、そのため多くのドルが流出するが、世界の中心であるアメリカに多くの国が投資してくる。それはアメリカにとって「借金」なので、そうなると金融収支もマイナスとなるが、借金しながらでも経済を拡大していくことになるので、それはそれでよし・・・。このあたりの流れをぜひとも理解しよう。なお、国によって、多少のズレが生じる場合もあるが、経常収支が黒字であれば金融収支も黒字、経常収支が赤字であれば半優秀死も赤字と捉えておこう。

 

26 金融収支が黒字の国は、対外資産の増加分が対外負債の増加分を上回ったことを意味するため、資本が流出した国である。
  • 〇論理的判断力が必要。これは正しい。黒字なのに「資本が流出した」というマイナスイメージ的な言い回しにひっかかりを感じたかも。しかし、資本自体は海外へ出ているのは間違いない。一方で、その海外投資から出た「配当や利益」が「カネ」として金融収支の方に戻ってくるというしかけとなっている。それが、次の問題となるが、このあたり分かりづらい。図で示したものをブログにアップしているので、目で確認しておこう。

 

27 経常収支は、貿易・サービス収支と第一次所得収支、第二次所得収支からなる。海外への投資から得た配当や利子は、第一次所得収支に該当する。
  • 〇以下、経常収支、金融収支の内容検討に入っていくが、経常収支は貿易収支だけではない。もう一つ大事なのが、「第一次所得収支」。これは、日本の経常収支が「黒字」である大きな要素で、「海外投資から得た配当や利子」である。日本は金融収支に該当する直接投資や証券投資に投資し「資産」を獲得、その資産から、この利子や配当を得ているという流れとなっている。

 

28 金融収支は、直接投資・証券投資・金融派生商品・その他投資・外貨準備からなる。海外の会社の買収は直接投資に該当する。
  • 〇問題文は簡単に判断できる正文だが、以下のことを確認しておきたい。日本は、積極的に海外への対外投資をし、「資産」を獲得している。一方で、アメリカには多くの国が対外投資をし、アメリカにしてみれば対内投資をされて、「資金」を提供されているということになる。

 

29 日本からの旅行客が、パリのレストランで食事をする。→ サービス収支(経常収支)のマイナス
  • 〇サービス収支も経常収支のひとつ。海外への支払いはマイナス。

 

30 日本企業が、ドイツの映画会社の株を買い取って経営権を取得する。→ 証券投資(金融収支)のプラス
  • ✕「経営権の取得」の場合は「直接投資」。株ということで「証券投資」だろうと思わせる、とても意地悪な問題。

 

31 アメリカで出版されている経済学の教科書を、日本にいる学生がインターネット取引を利用して購入する。→ 貿易収支(経常収支)のマイナス
  • 〇サービス収支か貿易収支か・・・の判断問題。「教科書はモノ」なので貿易。

 

32 著作権などの知的財産権の利用料は、国際収支において第一次所得収支に計上される。
  • ✕これは「サービス収支」。日本が海外に支払う場合はマイナスに計上する。第一次所得収支は、あくまで、対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等。なお、日本はこのサービス収支は赤字基調。観光立国を目指す日本、コロナ前は観光はインバウンドで黒字だったが、著作権は相当海外へ支払っているのであろう、全体としてはあくまで赤字。

 

33 イギリス国債に投資した日本の投資家が、その国債の利子を受け取る。→ 第一次所得(経常収支)のプラス
  • 〇もう間違っちゃだめだよ。

 

34 日本政府がODA(政府開発援助)で,アフリカの国々に食糧品や医薬品購入のための資金援助を行う。→ 資本移転等収支のマイナス
  • ✕「海外への物資の無償援助」は「第二次所得収支」。発展途上国への社会「資本」のための無償資金協力は「資本」移転等収支。ややこしいが、「資本」という言葉に着目。

 

35 海外の子会社から部品を調達しても、子会社なので、企業の本国の経常収支はマイナスとはならない。
  • ✕子会社と言えども海外企業なので貿易収支はマイナス計上

 

36 国内に短期滞在している労働者への給料は、国際収支において、第二次所得収支に計上される。
  • ✕第一次所得収支  マイナスに計上

 

37 為替相場の安定等のために利用される外貨準備は、国際収支において、経常収支に分類される。
  • ✕金融収支に位置づけられる

 

38 国内の経済主体が国外に保有する金融資産から得られる利子や配当は、国際収支において、金融収支に計上される。
  • ✕金融・金融でだまされないで。あくまで、経常収支の「第一次所得」

 

39 貿易収支の中に、海外に建設した企業からの利益も含まれる。
  • ×貿易ではなく「第一次所得収支」

 

40 日本の貿易収支は黒字基調であったが、近年赤字となった年もある。

 

41 日本の金融収支は赤字基調である。
  • ✕黒字基調。

 

42 日本は経常収支、金融収支ともに黒字だが、アメリカは経常収支・金融収支ともに赤字である。
  • 〇黒・黒の国と赤・赤の国があり、結果世界全体では±ゼロ。
    なお、アメリカの赤・赤の理由はアメリカが消費大国のためドルが出ていって経常収支が赤 一方でその借金を他の国が肩代わりしてくれるような形で、アメリカに投資、ドルがアメリカに戻ってきて、それがアメリカの次の消費意欲のバックボーンとなっているという構図 

 

43 日本のサービス収支は赤字だが、アメリカのサービス収支は黒字である。
  • 著作権の権利利用料等も含むサービス収支についてアメリカが大幅な黒字であることを知っておこう。
    と言うより、たとえば音楽をとってみると、我々は洋楽を聞くけど、アメリカ人は演歌は聞かないよね。ただ時に80年代のシティ・ポップがアジアで大人気なんてなこともあるけど。日本は著作権については払い手であると自覚としておこう。

 

44 海外への出稼ぎ労働の増加は、経常収支を改善させる傾向をもつ。
  • 〇これもあせらず確認しよう。海外への出稼ぎ労働の増加というのは、日本では考えにくい。こんな場合、例えばベトナムの人々を連想すれば良い。ベトナムの人々が稼いだものを本国に仕送りするしよう。経常収支は「稼ぐ力」なので、当然プラスになる。

 

45 発展途上国の社会資本形成のための無償援助は、金融収支を改善させる傾向をもつ。
  • 発展途上国の社会「資本」形成のための無償援助は「資本移転等収支」であって「金融収支」とは別。

 

46 外貨準備は、対外的な決済手段であるドルや金、SDRなどを、為替介入の必要性が出てきた時に使用するために、中央銀行や政府が保有しているものである。
  • 〇日本は中国に続いて外貨準備を保有している。今回急激な円安、そこで為替介入を実施したが、それに外貨準備として保有していたドルを投入した。なお、形態としては主に「外国債」という資産で保有している。

 

47 SDR(特別引出権)を保有するIMF(国際通貨基金)加盟国は、一定の条件の下に、SDRを用いて他国から外貨を入手することができる。
  • 〇ドルだけではなくIMF特別引き出し権のSDRも外貨準備高となる。交換可能なのはアメリカドル、ユーロ、日本円、イギリスポンド、そして新たに中国の人民元が加わった。IMF出資金に応じて配分され、日本はアメリカについで世界第二位のSDR保有国。なお、中国も近年大量に保有。ドルに次ぐ「第2の国際通貨」として期待されたが、外貨準備という金庫に入れられたクーポンでしかないという批判もある。

 

48 外貨準備率が世界で最も高いのは中国で、中国が通貨・元の価値が引き下がらないようドル買いを行ってきた結果であるとされている。
  • ✕承知のように、中国の貿易黒字が急拡大した。また、海外からの投資も大幅に増加し、中国企業が輸出で得た代金である外貨、主にドルを国内で自国通貨の「元(人民元)」に戻したりすることは、元相場の上昇につながる。元が高くなると中国の輸出産業にとっては不利なので、ドル買い・元売りの「為替介入」を繰り返してきた。具体的には、米国債を大量に購入してきたが、その結果、急激に米ドル保有高が増え、2006年には日本を抜いて外貨を最も保有する国となった。

    で、問題文は「元の価値が引き下がらないように」というところが誤り。元の価値が「引き上がらない(上昇しない)ように」、あるいは「人民元のレートを実際の価値よりも割安に固定するため」だったら正しいが。全体的には正しいように思える文章であるが、落とし穴が隠されている。
    なお、そもそも、中国の為替制度は実は特殊である。そのことについては別のところで言及する。

 

49 「対外純資産」は、国際収支の金融収支から計算される指標で、日本の政府や企業、個人が海外に持つ金融資産を示す「対外資産」の金額から、海外の政府や企業、個人が日本に持つ金融資産を示す「対外負債」の金額を差し引いたものである。純資産が大きくなると、国として海外で稼ぐ力を示す代表的な指標である経常収支の改善につながる。
  • 〇まとめの問題として、問題文としてはなりたたないような長文を掲載してしまったが、正しい。
    対外純資産は「ストック」の指標であるが、毎年の経常黒字という「フロー」が蓄積された結果でもあるが、後段にあるように、対外純資産が増えると、第一次所得として経常収支の改善にもつながる。日本は30年以上も続けて世界一の対外純資産をもつ国としての地位を保ち続けている。300兆円を超えるプラス。2位がドイツで、3位が香港、中国は4位だそうだ。
    しかし、これが本当に誇るべきかことなのかどうか?国内から国外への証券投資や直接投資が旺盛だということは、国内への投資機会が乏しいということでもある。日本企業が「縮小し続ける国内市場に投資をするより、海外企業の買収や出資を通じて市場を買うほうが中長期的な成長につながる」と判断した結果とも言える。しかも、その資産を内部留保として確保するだけで、賃金上昇へとまわしていない。こんな意味のない純資産なんて必要ないのではという批判もある。

 

50 アメリカは世界最大の純債務国である。
  • アメリカは、対外負債のほうが対外資産より2000兆円余り多いそうだ。これは日本の国家予算の20年分。しかし、アメリカは世界最大のGDPを誇り、消費大国である。基軸通貨国の特権として、ドルを増刷すればよい訳だから、いささかも動じたところがない。
    一方、日本は世界最大の債権国であるが、世界最大の債権国が、世界最大の債務国の通貨(ドル)建てで、自国の対外債権を保 有しているという事例は、歴史上いまだかつてなかったそうだ。ところが現代は「為替リスク」があり、実は、その債権も為替変動で大きく変動する。具体的には「円高」となるとどうなるか?

    まずはそもそもは、円高基調であったから「対外投資」に打って出た。しかし、ドル建てで保有しているということは、円高・ドル安だと債権の価値は下落してしまう。実は、だから、日本は急激な「円高」にならないような金融政策を推進してきた訳でもあるんだ。この政策は円高が「輸出」に不利だからということもあるけど、これも隠れた背景。と言うことで、次章では為替、円高・円安について確認しよう。受験生が一番苦手とする箇所だが、超頻出分野である。