【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

共通テスト 現代社会 政治経済 倫理 倫政 時事問題 試験対策

【今日の時事問題】格差の実相 その6

吹き出し右側用のアイコン
先生、前回、「若者が・・・」と言っていましたが。「若者」の就業状況はそんなに悪化しているのですか?

fukuchanstudy.hatenablog.com

吹き出し左側用のアイコン
いや、悪化という訳ではない。実は、近年はむしろ持ち直してきているんだ。で、「若者」、ここでは15歳から24歳までとすると、君は、この「若者」と、40歳前後の言わば「働き盛りの人」、それから「定年前」の60歳前後の人、この3つを比較すると、どの年齢層の「失業率」が一番高いと思う?
吹き出し右側用のアイコン
「失業率」ですか?そうですね。うーん。やっぱ「若者」でしょうかね。
吹き出し左側用のアイコン
なぜそう思う?
吹き出し右側用のアイコン
昔のように、終身雇用ではなく、今どきの若者は、より待遇のよいところを求めて転職することも多くなっていると聞きます。そのため、一時、職を離れることもあるから・・・それと、そうそう、ミスマッチで、せっかく勤めたのに、自分に合わないと、短期間で辞めてしまう人もいるのでは?それと、多くはまだ親がいるので、多少失業期間があっても、何とかなるのでは?
吹き出し左側用のアイコン
なるほど、若者サイドの意識という点に目をつけたか、なかなか鋭いぞ。確かに、転職も辞さないという変化も生じているよね。と言うより、新入社員の3人に1人は何と3以内に離職しているそうだ。「石の上にも3年」ではないんだね。で、年齢別の完全失業率の推移のグラフを見てみよう。
下の、独立行政法人労働政策研究・研修機構のホームページのグラフを見てみると・・・

www.jil.go.jp

吹き出し右側用のアイコン
先生、ずっと、若者の失業率って高いんですね。特に2000年前後はとても高い・・・10%、10人に1人は失業状態・・・そんな時期もあったんですね。
吹き出し左側用のアイコン
教科書には出でこない言葉だけど、「就職氷河期」と呼ばれた時期もあったんだ。バブル崩壊後の1993年から2005年卒の年代がそれにあたるんだけど、この時期、ほとんどの企業で新卒採用枠が大幅に絞られたんだ。そのため、就職浪人というかたちを取った人もいた。現在30代後半から40代の人たちで、それも、たとえ就職できたとしても、正社員ではなく、やむを得ずに派遣社員やフリーターといった非正規社員で社会に出るようになった人も少なくないんだ。

と言うことで・・・なぜ、若者の方が失業率が高くなりかねないかと言うと、若者ほど「景気動向の影響を受けやすい」ということだろうね。

若者の意識だけでなく、「企業の都合」ということだ。

吹き出し右側用のアイコン
先生、それはなぜですか?若くて、バリバリと働くのに・・・
吹き出し左側用のアイコン
でも即戦力ではない面もあるよ。それに、最も大きな背景は、景気が悪いからと言って今の従業員を解雇する訳にはいかないよね。そうすると採用のところで調整をするしかない。だから、どうしても「最若年層」は雇用の調整弁として、景気動向の影響を受けてしまうんだ。2008年のリーマンショックや、2011年の東日本大震災後も、高校現場では、就職難を相当心配したものだよ。
吹き出し右側用のアイコン
でも、先生、現在は、失業率は低くなっていますよね。
吹き出し左側用のアイコン
2022年現在は全体が2.6%、そうしたなか、やっぱり若者が一番高くて4.4%・・・
吹き出し右側用のアイコン
しかし、以前と比べると失業率は低くなっていますよね。でも、先生、景気が回復したとは聞いていませんが・・・
吹き出し左側用のアイコン
アベノミクスの成果」などと言う人もいるかも知れないけど、私はそうは思わない。おそらく、「労働力不足」がその背景ではないかな?
無論、高齢者も年金だけでは食っていけないので働く人も多くなってきたけど、そもそも「現役世代」という労働力人口自体が減少。また「若者」だって少子化の進行で、母体自体が減っているから、自ずと失業率も下がっているだけではないのかな?
吹き出し右側用のアイコン
失業率が下がったと言っても、いろいろな要因があるんですね。「ほら、失業率が下がっただろう、アベノミクスの成果だ」・・・そう簡単に言えないということですかね。
吹き出し左側用のアイコン
そうだね。数字だけでの短絡的な判断は危うい・・・
吹き出し右側用のアイコン
先生、数字と言えば、諸外国の失業率の状況はどうなんですか?
吹き出し左側用のアイコン
厚生労働省のホームページを見てみようか。

www.mhlw.go.jp

吹き出し右側用のアイコン
えっ、他の国は失業率、特に若年層はとっても高いんですね。日本はむしろダントツで失業率が低いじゃないですか・・・
吹き出し左側用のアイコン
確かにそうなんだ。失業率の低さという面では、実は、日本は諸外国に対して大きなアドバンテージを持っているという指摘もある。
けれど、これまた数字のマジックがあるかも知れないよね。君はなぜ日本の失業率は低いと思う?
吹き出し右側用のアイコン
やはり、従来の、「日本型雇用」が原因かと・・・
吹き出し左側用のアイコン
どういうこと?説明してみて。
吹き出し右側用のアイコン
年功序列型賃金」と「終身雇用制度」・・・だから、より給料の高いところを求めて転職なんてなことをしない・・・だから失業率が低いんじゃないでしょうか。今はかなり変わってきていますが、やはり、そういう雇用形態が根強く残っているからでは。
吹き出し左側用のアイコン
おっいいぞ。自分なりに説明できたね。そうそう、現役世代全体をみると、基本的には、従来の「年功序列型賃金」と「終身雇用制度」だと、冒険しない人も多いんだろうね。

それと、日本の場合、労働組合が、労使対決ではなく、企業独特の「企業別組合」として、雇用継続や労働条件などの交渉を担当し、職を失わずに働ける環境の維持を図ってきたことも大きいよ。その分、賃上げ要求はおとなしめだったけどね。

それと、「新卒一括採用」制度。これで、レールに乗れた若者は、多くは、とりあえず失業の心配なく、一応安定雇用ということになる。これが、日本の場合、若者の失業率が相対的に低くなっている大きな背景かな?

ただし、先に見たように、一方で、実は若者の離職率が高くなってきているけどね。でも、欧米では「ジョブ型雇用」が一般的で、だから若者の失業率は日本よりもかなり高い。

 

吹き出し右側用のアイコン
先生、「ジョブ型雇用」って、どういうものですか?
吹き出し左側用のアイコン
職務内容と求めるスキルを限定して採用する雇用形態のこと。
日本でも、医師や薬剤師、看護師など「資格」がないと働けない仕事はたくさんあるけど、いわゆる一般企業の場合、「新卒一括採用」制度に加えて、多くは、メンバーシップ雇用と言って、採用後に職務を割り当てる形が主流。
一方の、「ジョブ型雇用」は職務に応じたスキルがないと雇用されないので、技術的な熟練度が低い若年層にはどうしても不利になる。これが日本以上に若者の失業率が高い背景かな・・・。
しかも、欧米の場合、「終身雇用」ではないので、職務が終了した場合、雇用契約によっては解雇される可能性がある。だからどうしても全体としても失業率が高く出るのではないかな?
吹き出し右側用のアイコン
先生、日本型雇用の方が楽・・・って思ったりします。学生時代遊んでいてもいいし・・・
吹き出し左側用のアイコン
私も、遊んでばかりいたけど・・・いや、そういうことではなくて・・・
でも、ここで考えてほしいのが、失業率の低さ≒雇用の安定と引き換えに、失ったものがあると思うだが・・・意味分かる?

 

吹き出し右側用のアイコン
うーん、分かりません。
吹き出し左側用のアイコン
ヒントは・・・失われた30年。
吹き出し右側用のアイコン
と言われても・・・
吹き出し左側用のアイコン
そうだよね。ぴんとこないかも・・・。答えは「高賃金」。それと「良好な労働環境」。
吹き出し右側用のアイコン
先生、意味が分かりません・・・
吹き出し左側用のアイコン
そうだよね、・・・このからくりって、見えないものね・・・そう、「大事なものは目には見えないんだよ」・・・
でも、雇用の安定と引き換えに、低賃金を余儀なくされているのではないか・・・ということだよ。日本の賃金が20年以上も上がっていないことが指摘されたのはごく最近。しかし、企業は「内部留保」をがっぽりと貯めている。でも、賃上げなしも、雇用の安定を保障しているからいいじゃないの・・・という論理。
吹き出し右側用のアイコン
なんだかいやだな・・・
吹き出し左側用のアイコン
それに、「長時間労働の蔓延」「責任が重い割には低賃金」「転勤・転籍・出向を強いられる」といった問題もあり、決して「良好な労働環境」とは言えないよ。
吹き出し右側用のアイコン
失業率が低いといっても、内実は問題だらけということなんですね。
先生、それから、正社員はまだしも、非正規の人はもっと厳しんじゃないですか?働いても働いても豊かになった実感が得られず・・・
吹き出し左側用のアイコン
おっ、君、鋭いね。そうなんだよね。低賃金と、雇用の継続が不確かな不安定さの中に置かれている。
吹き出し右側用のアイコン
先生、非正規の人って、何%程度なんですか?
吹き出し左側用のアイコン
おっと、乗ってきたね・・・
でも、この話や・・・そもそも失業率についても、もう少し掘り下げておく必要があるから、今日はここまでにしておこうよ。次回、また仕切り直そう。
吹き出し右側用のアイコン
はいー。長時間労働はストレスで、効率が悪いですからね、先生。