01 イギリスの経済学者リカードの比較生産費説は、国際分業と自由貿易の意義を説明するものであった。
02 比較生産費説は、各国は自国にとって有利な生産条件の商品に特化して生産した方が、全体として増産した結果になるという理論上の説である。
- 〇特化前と特化後の「計算問題」は超頻出。出題されたらラツキーと確実にこなそう。分業したほうがよい結果になるという「お約束」なので、難しく考えないこと。
03 水平貿易とは、一方の国が原材料を輸出し、他方の国がそれを輸入した上で加工した完成品を輸出する貿易の形態を指している。
- ✕これは「垂直的分業」で、主に発展途上国と先進国との間の貿易形態。
04 各国が相互に工業製品の完成品や部品を生産し、同一産業内で貿易し合うことは、国際分業の観点から、垂直的分業と呼ばれる。
05 比較生産費説に立脚すると、労働力の賃金が安い発展途上国では、労働集約型産業より、大規模な海外資本に基づく資本集約型産業の方が有利であると考えられる。
- ✕労働力の賃金が安いので、人間の労働力に頼る割合が大きい「労働集約型」が有利。
06 一国の輸入品の価格に対して輸出品の価格が上昇すると、その国の交易条件は悪化する。
- ✕読解力・論理的な判断力が必要な問題。理解できたであろうか?
交易条件とは財1単位の輸出でどれだけの財を輸入できるかを表す。輸出価格が高いほど多くの財と交換できるので、設問は✕。輸出品の価格が上昇すると、輸入品をやや多く獲得できる。
07 ドイツの経済学者フリードマンは、自由貿易論は先進国の論理であると批判し、保護貿易政策が必要であると主張した。
08 発展途上国が将来の発展を目指して製造業を育成するため、その製品の輸入品に対して関税を高くすることは保護貿易政策にあたる。
09 セーフガード(緊急輸入制限)を発動して自国産業を一時的に保護することは、WTO(世界貿易機関)のルールでは認められていない。
- ✕「例外」として認められている。日本は2000年ネギなどの農産物3品目について中国に対してセーフガードを発動した。
10 世界的にみると、国際的な資本取引の総額は、貿易取引の総額より大きくなっている。
- 〇政経の2002年問題だが、正しいそうだ。
ただし、これに対する解説についは申し訳ないが自信がない。調べてみたが分かったのは以下のこと。
世界全体のGDPは現在85兆ドル。世界貿易(輸出と輸入)の総額はここのところ40兆ドル前後とのこと。貿易がGDPの半分近くの額になることになる。一方で「国際的な資本取引」で連想するのは、「実物資産」にかかわる「直接投資」や、「金融資産」にかかわる「証券投資」あたりではなかろうか。
しかし、それぞれ年間では2兆ドル程度のようだ。累積した残高だとそれぞれ30兆ドル規模らしいけど、フローとストックの比較はあり得ないので、そうなると貿易額の方が多いということになる。
では、なぜこの文が〇なのか。おそらく、直接投資・証券投資は「国際的な資本移動」。で、ここでは「国際的な資本取引」を、「外国為替市場の取引」と捉えている可能性が強い。「外国為替市場の取引」の1日あたりの取引量は何と7兆ドル。年間を通じれば、貿易総額をはるかに凌ぐ。そのような論文がネット上でちらほらと見えるので、おそらくそういう捉え方なのだろう。
が、それにしてもアバウトな問題すぎる。ただし、この理解でよいかどうか、この問題について明確な解説ができる受験生、社会人の方がいたらヘルプをお願いしたい。
11 貿易依存度(GDPに対する貿易額の比率を貿易依存度と呼ぶ。貿易輸出総額と輸入総額の合計値で国際収支ベースのものを用いるが、日本は50%を超え、貿易依存率は極めて高い。
- ✕日本が貿易立国から投資立国へとシフトしてきたことを別のところで触れてきたが、日本の貿易依存度は30%を切っていてかなり低い方。エネルギーや食料を海外に頼っているため、その印象から〇と判断する受験生も多いのでは。
なお、アメリカはもっと低くて20%。一方ドイツは貿易大国で70%。特に輸出が多い。この貿易依存率についてはまだ出題されていないが、今後は要注意。
12 1960年代のOECD(経済協力開発機構)への加盟以降、日本は資本の自由化を段階的に実施してきた。
- 〇ただしなかなか進まなかった。本格的に進んだのは1990年代後半の日本版金融ビックバン前後からである。まず貿易の自由化、次いで資本の自由化、さらには金融の自由化といった順で自由化が進んだ。
13 多国籍企業が進出先の国や地域で工場を建設したり、現地の企業を買収し子会社化したりすることは、直接投資に含まれる。
14 労働コストの削減を目的として発展途上国に進出した多国籍企業は、生産能力の拡大や技術移転などを通じて、進出先の工業化を促進した。
- 〇多国籍企業も技術移転等プラス面もある。
「企業の多国籍化は国家間での資本・人・技術の相互浸透をもたらし、企業間競争を激化させる側面がある。」も〇。
15 1980年代には日本の製造業は、貿易摩擦を避けるため対アメリカ投資を急増させた。
16 1990年代以降、巨大な市場や低い労働コストが誘因となって、改革開放政策を推進している中国に、生産拠点を設ける動きが盛んになった。