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【知っ得】囚人のジレンマ③経済活動と囚人のジレンマ(価格競争・外部不経済・フリーライダー)

囚人のジレンマは、「軍縮」と「環境保全」のジレンマだけでなく、経済活動のジレンマについても有効な理解のためのフレームともなる。

 

囚人のジレンマ」 顧客獲得と価格競争

客を獲得するためにファストフードが格安競争に陥りやすいこと・・・あるいは、なぜデフレ・スパイラルに陥ることがあるのか・・・を、以下の表で理解してみよう。

 

以下は競争を展開しているA社とB社というファストフード店が、「現状維持」、「値下げ」のどちらかの戦略を選択するかによって得られる利潤をそれぞれまとめたものである。

 

これまでの「囚人のジレンマ」の学習から、「互いを信頼し合えなければ、自分の利益を優先してしまい、結果として、全体(両者)にとっては望ましくない選択になってしまう」から、結論としては、両方ともが「値下げ」を選んでしまうはずである。値下げをしないで客を奪われるより値下げをして対抗した方が得策だと考えるはずだ。

 

一応、それでも確認しておこう。

あなたがA社だとしよう。

・B社が「現状維持」した場合、得なのは「値下げ」。

・B社が「値下げ」した場合も、得なのは「値下げ」。

従って、B社がどちらの選択をしようとも、A社は「値下げ」した方が得。

逆に、B社も同様。この結果、A社・B社ともに「値下げ」をしてしまう

 

ところが、結果的には、両社の利潤の合計は結果的にはどの条件よりも小さくなってしまう。

両社とも「現状維持」していた方が得策だったのに・・・ということになる。

こうして、いわゆるデフレに突入してしまう・・・ということになる。

そして、一度値下げが始まった結果、限界まで値下げしていくことが繰り返され、デフレスパイラルが起こってしまう。

 

回避策としてのトラスト・カルテル

しかし、これだと両社ともに倒産してしまう。では、この「囚人のジレンマ」から抜け出るためにはどうすればよいのか・・・

 

その解決策の一つが、「トラスト」や「カルテル」ということになる。

・「トラスト」は、相手を飲み込んでしまうこと。M&Aが盛んに行われるのもこの流れの一つであろう。そうすると値下げをしなくてすむ。もちろん禁止されているが、独占状況になれば、独占価格でもうけられる。

 

・「カルテルは、無駄に競争して価格をお互いに下げあってしまう前に、お互いが得をするように価格を高いところで維持する約束をすること。今回で言えば、相談して「現状維持」をしてしまうこと。

 

囚人のジレンマ」は、囚人故に相談ができないがために生じるジレンマ。しかし、もし、相談が可能であれば、また、相互が約束を守りあえば、両社にとって有利な状況に持ち込めるということだ。

 

ただし、「トラスト」や「カルテル」は、消費者にとってはマイナス。そのため法律で禁止されているが、原理的には、これがジレンマの解消方法の一つということになる。

 

で・・・では、現実にこのような状況がないかというとそうではない。寡占市場で競争相手が少ない場合は、闇カルテルはもちろん法的に禁止されているが、価格の「   」という傾向が生まれる。

 

この空欄にどういう言葉が入るか分かるかと思う。そう・・・価格の「下方硬直性」。

実は、こうした価格の下方硬直性までの流れを問うた問題が、2019年の現代社会で出題されているのだ。政経ではなく現代社会というところが驚きだが、ぜひこの2019年の解答番号15にはチャレンジしてほしい。現社恐るべし。

 

市場の失敗①:外部不経済

さらに、未出だが、「外部不経済」や「フリーライダー」といった、市場の失敗に関することにも触れておく。

 

 まず「外部不経済」というのは、「環境破壊」が典型例。これが、まさに「囚人のジレンマ」に該当する。

 

 2つの企業が、川の水を利用しながら生産活動を営んでいるとする.それぞれの企業は「汚水を処理する」か「汚水を垂れ流す」かの選択を迫られている。

・汚水処理には1の費用がかかる。

・また生産のために水を浄化するのに、汚水を垂れ流す企業が1社のときは1、汚水を垂れ流す企業が2社のときは2 の費用がかかるとする。

 

費用をかけるほど自社製品の販売価格は高くならざるを得ない。

利益は自社の販売価格だけでなく、相手企業の価格にも依存する。両社が同じ価格をつけたときはともに2、両社が異なる価格をつけたとき、低い価格をつけた企業は3、高い価格をつけた企業を0とする。

以下は競争を展開しているA社とB社が、汚水を処理するかどうかによって得られる利潤をそれぞれまとめたものである。

結果、これまでと同様に、両者とも「垂れ流す」という、本来は望ましくない選択をしてしまう。お互いが処理すればそれぞれ1の利益があがるが、垂れ流すと利益が2あっても2の浄化費用がかかって0となるが、しかし、自分だけが行動を変えても得をしない状態に陥っており、そこから脱出できなくなってしまうのである。

 

市場の失敗②:フリーライダー

次に、フリーライダーについて。フリーライダーとは「ただ乗り」という意味である。「公共財」という財やサービスを考える時にフリーライダーの問題が起きてしまう。公共財は、「非競合性、非排除性という2つの性質を持つもの」をいう。

・(非排除性):対価を支払わない「フリーライダー」の消費を排除できない

・(非競合性):多くの人が「同時」に消費でき、他の人の消費機会を減らさない

 

灯台」などがその典型である。しかし、「灯台」などは特に問題視されないが、「NHK・公共放送」については、「公共財」として維持するためには維持費が必要。そのため、一部「受信料」の負担を求めている。

 

しかし、下に見る表でみると、自分の利益を優先してしまう「フリーライダー」をどうしても排除できない構造となっていることが分かる。 

相手が支払う時は自分だけ支払わずにただ乗りした方が得だし、相手が支払わない場合は、相手の料金まで払うくらいなら見ないほうがましだ、と「支払わない」ことを選択することとなり、「フリーライダー」が出てしまう。結果、△、つまり質の悪い番組しか作れなくなり、公共財の質が劣化してしまうことになる。

 

ただし、かと言って、みんながフリーライダーになっている訳ではない。社会生活の維持のために協力したいという人や、払わなくても罰則がないが、社会的な規範や慣習により支払っている人もいる。ただし、フリーライダーは排除できないというジレンマがつきまとう・・・という問題なのである。

 

以上、「囚人のジレンマ」にかかわることを触れてきたが、大学の経済学では、「ゲーム理論」として「パレート最適」とか「ナッシュ均衡」といった言葉とともに、数学的に理解することになる。ここではあくまで高校生対象ということで深入りはしないが、大学の初歩段階で学ぶ事項を、それだけの素養があるかどうかということで、少し噛み砕いたり、あるいは導入として引き合いに出したりする問題が出題される傾向が今後強まってくると思われる。やや手強いが、9割を目指す受験生は、このあたりにも臆せずチャレンジしてみるとよい。

 

最後に、「囚人のジレンマ」と同様な現象は様々な場面にあるが、全てが「囚人のジレンマ」である訳ではむろんない。「じゃんけん」はぐー・ちょき・ぱー、どれを出そうとも一緒で、「囚人のジレンマ」とは構造が違う。

 

しかし、一方で、「囚人のジレンマ」のようなケースがあることは、以下のことを意味する。「個人個人が個々の効用を最大化するように最適な戦略をとれば、全体としての効用も最大になるはず。政府がやることは規制を緩和し自由な市場を開放することだ。」「自由競争こそ飛躍の源であり、そのうち神の見えざる手によって調和される」といった楽観論が当てはまらない場合も多いということ。そうなると、政府が補助金や規制などで利得表を書き換えて、全体としての効用の最大化が達成されるような方法を工夫しなければならないこともある。特に、「市場の失敗」の場合がそうだ。

 

では、先に見た「環境破壊」などの「外部不経済」に対しては、どのような対策があり得るか?

負担を市場の内部に取り込ませる、外部不経済の「内部化」が一例であり、浄水器の設置などを義務化する「直接規制」や、「課税」、「企業に補償させる」といった方法があろう。また、他方では、企業の技術革新による脱・環境汚染というのも、別のアプローチ方法として期待したいところだ。

 

このように、様々なジレンマを克服するために、政府のリーダーシップや、民間の知恵、様々な人間の叡智の協働が求められるのである。

 

受験生諸君も、将来、様々な社会的な役割を担う中で、「全体としての効用の最大化が達成されることが大事」という教訓をもとに、自分のできることを積み重ねてほしい。そのためにも、いろいろなことを学び続けていこう。