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【今日の時事問題】フランス大統領選挙(決選投票)と世界の大統領制

フランスの大統領選挙が決選投票になった。なぜなのか?

 そんな疑問すら持たずにニュースを聞き流している受験生も多いはず。

 「モッタイナイ」。

 「えっ、なんで?」と思うとこから、学びが始まる。

以下、世界の政治体制について、大統領制を中心に正誤問題にチャレンジしてみよう。

 

大統領制は、議会の信任に基づいて存立する政治体制で、そのため三権分立が強く貫かれている。○か?

→✕

議会の信任に基づくのは議員内閣制なので、そこだけでまずは✕。また大統領制アメリカを想定すると、確かに議院内閣制より三権分立が強く貫かれている。結論部分は一般論としては正しい。しかし、それは、議会の信任に基づいて存立するからではなく、議会とは別に、国民から選挙で選ばれ、それぞれ立法権、行政権をもつ、言い換えればそれぞれ権限が厳格に限定されているからである。こういった「論理的矛盾」も孕まれた文章になっていて、それが故に判断しにくくなっている。共通テストでも、こうした論理的矛盾を孕んだ問題文が出題される可能性があるので、変化球を見抜く選球眼も鍛えよう。

なお、後に見るように、同じ大統領制でも、三権分立とは言い難い体制もある。それを考えるとこの文章はますます✕。

 

アメリカの大統領は間接選挙で選ばれる。○か?

→○

実質的には直接選挙ではあるが、直接選ぶのは大統領選挙人なので、形の上では間接選挙。①最初に各党で予備選挙・党員集会で大統領候補を指名する「代議員」を選ぶ。②全国大会で代議員が「正副大統領候補」を選ぶ。③州ごとに大統領を選ぶ「大統領選挙人」を選ぶ。これで実質的に大統領が決定するが、④形式的ではあれ、大統領選挙人が投票・開票され、正式に決定。このように長いプロセスが必要だが、センター試験現社では「大統領選挙では、第一段階として、大統領選挙人が選出される。」これを○と判断させている。①②を捨象しているわけだが、まあ、「アバウト」をよしとする現社なので、これで○でもよしとするが、実際は○か✕かの形式には耐えられない問題。ただし、4択の場合は、こうした大雑把なものも組み込まれるので、心しておこう。

 

アメリカの大統領の任期は4年で、3選は禁止されている。○か?

→○

フランクリン・ローズベルトは戦争という事態もあり4選されたが、1951年の憲法改正によって、正式に大統領は2期までと定められた。なお、日本は憲法改正は全くなされたことがないが、アメリカはかなり改正されていることも知っておこう。

 

アメリカの大統領は議会の解散権をもつ。○か?

→✕

三権分立の原則によりできない。議員は任期内は職務没頭できる。

 

フランスやドイツ、ロシアにはいずれも大統領と首相がいる。○か?

→○

正しいが、それぞれ幾つか違いがあるので、それも理解しておきたい。以下の問題で。

 

フランスでは首相が大統領を任命する。○か?

→✕

逆。大統領が首相を任命する。「大統領制」は「国民が選ぶ」というのが大原則である。なお、フランスの場合はそれが故に「大統領制」であるが、大統領が「外交」を、首相が「内政」を担うことになっている。そのため、フランスの場合は、「半大統領制」と呼ばれることもある。

 

フランスの大統領は直接選挙で選ばれる。○か?

→○

アメリカと違って直接選挙である。また、アメリカは二大政党で二人の大統領候補の一択だが、フランスの場合は複数立候補することも可。そして、ここがポイント。「過半数を得た候補がいなければ上位2名で決選投票」。ここが冒頭に書いたことの背景。形式は日本の自民党総裁選挙と一緒だね。ただ違うのはフランスの大統領は「国民」による直接選挙ということ。なお、2021政経第2日程でこの「直接選挙」のことが問われている。

 

ドイツでは首相の権限が強く、大統領は儀礼的存在である。○か?

→○

ドイツの大統領は、儀礼的な存在である。ドイツの場合、大統領は「国民が選ぶ」という形ではないからだ。選出は、連邦議会議員と各州議会によって選ばれた同数の代議員により構成される連邦集会で選挙される。従って、ドイツには大統領はいるが、「大統領制」とは言わない。

 

ただし、儀礼的な存在ではあれ、西ドイツ・統一ドイツの大統領であったヴァイツゼッカーは存在感抜群であった。1985年の「荒野の40年」という演説は特に有名。「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。」とユダヤ人虐殺を直視することの大切さを訴えかけた。私も、現役時代、ずっと、この映像を生徒に視聴してもらっていた。歴史に残る名演説である。なお、首相の権限が強くても、あくまで大統領が「国家元首」である。

 

なお、一方で、権限の強い首相については、2005年から4期16年にわたり首相を務めてきたメルケル首相が引退し、ショルツ新首相に代わったことは知っているかと思う。では、この首相についてはどのように選ばれるのか?またドイツの内閣はどのような仕組みになっているのか?これも知っているであろうか?おそらく、曖昧ではないかな・・・。今回は大統領制に焦点化することにしてそこまで触れないが、とにかく、「時事問題」を通じて、その都度、その都度、理解してしまおうという姿勢が大事。そしてそれこそが合理的学習方法であることを心しておこう。

 

ロシアの大統領は任期2期とされているが、プーチン大統領はこれまでの任期をリセットし、改めて大統領に立候補できる改憲案を提出し、認められた。○か?

→○

こういうことができるというところが、権威主義国家のおそろしいところ。ちなみに、中国でも、国家主席は任期5年で3選禁止であったが、習近平国家主席によって任期撤廃の憲法改正が行われた。

 

プーチン大統領は2000年~2008年と4年2期の大統領を務め、2008年~2012年は首相、そして2012年から大統領に復帰、大統領を6年任期にし、3期目を務め、さらに2018年に4期目・・・ということで、首相時代も実権を握っていたとされるので、20年以上にわたってロシアのトップに君臨、しかも、憲法改正により、最大で2036年まで君臨できるという体制にしてしまったということ。もちろん2024年に大統領に立候補するかどうかは分からないし、現在のプーチンによる戦争によって、プーチン大統領の終わりの始まり・・・ということが言われるようになり、今後は不透明だが、それにしても特異な国である。

 

なお、ロシアには首相もいるため、フランスと同様に「半大統領制」と呼ばれることがあるが、現在の首相が誰か知っている受験生はほとんどいないのでは。それほど首相は影が薄く、ロシアでは、政治・軍事・外交などにおいて、大統領が、強大な最高権力を持つ。アメリカの場合は、大統領に議会の解散権はなく、大統領と議会が緊張関係をもつが、ロシアは大統領が首相を任命し、内閣の総辞職や議会の解散の決定権も大統領にある。首相は政府を統括し、政府としての活動を大統領に伝達したりする役割を担うが、フランスのように大統領は外交、首相は内政といった棲み分けはなく、首相の権限は限定的である。

 

 

 

 

ということで、大統領制を中心に見てみたが、大統領制ひとつとってみても、国々によって相当違うことが理解できたであろうか。現在、フランスの大統領選挙の最中ということで触れてみたが、むしろ、ロシアの特異性の方が浮き彫りにされたという感はあるが。

 

今回のフランスの大統領選について

ただし、やはり今は、フランスの大統領選挙が「時事」なので、そこをもう少し深堀りしておきたい。

既に、フランスの大統領は選挙で「過半数を得た候補がいなければ上位2名で決選投票」ということに触れたが、同じく今年行われた韓国の大統領選挙では、そのような形はとらなかった。上位2名は極めて接戦であった(48.56%と47.83%)が、あくまで一票でも多ければそちらが当選という形で、保守政権が誕生した。フランスの場合は、決選投票では逆転することもあるかも知れない。そうすると、選挙の決定方法で結論が違ってくるということになる。いずれにせよ、どちらかが過半数を獲得するので、原理的には、強い大統領としてスタートを切ることができるという訳だ。

 

※なお、2021年現社第一日程では、「決定方法」によって違いが出てくることに気づかせる、思考問題が出題された。ここでは触れないが、これは取り組む価値のある「良問」である。ぜひ、夏休みには取り組んでおこう。

 

ちなみに、韓国の大統領は再選禁止、フランスの大統領はアメリカと同様2期まで(任期は5年)といった違いもあるが、もう一点、フランスについては次のことも知っておきたい。

 

首相は大統領が任命するが、議会の多数党から選ばなければならないという決まりがある。議会選挙で大統領の対立政党が多数となった場合、対立政党の党首を首相にすることになる。その場合を、保革共存路線(コアビタシオン)と呼ぶが、かつてそのようになったケースもある。政権の安定か民意の尊重か、フランスは後者を選んでいるということになる。

 

最後に、大統領制をとっていない国ももちろんある。日本もそうだし、イギリスやスウェーデン、タイなどもそうだ。そこにはある共通性がある。どんなことだろうか?今回は敢えて答えを書かない。ぜひ自分で考え、友だちと話題に取り上げてみてほしい。