30年間の日本の政治的変遷をスケッチしておこう【対話編その3】

先生、いよいよ日本の各政党の立ち位置を仕分けましょう。

おっ、君、積極的だな。よし、じゃ、早速提示しよう。 今回紹介したいのは、東京工業大学の中島岳志教授の提示したマトリックスじゃ。
前回提示したノーラン・チャートの場合、「自由至上主義」のリバタリアンだけに、いずれも「自由」という軸、経済的自由と政治的自由だったけど、これはやや仕分けにくいところがあった。中島教授の示すマトリックスは以下の通り。


そうだろうね。 で、縦軸はというと「リスク軸」。上方向が「リスクの社会化」。国民のリスクを社会で見ていこうということで、セーフティーネットを強化していこうというベクトル。下方向は「リスクの個人化」。自己責任という訳じゃ。

先生、上が「大きな政府」、下が「小さな政府」じゃないですか?

その通り。ノーラン・チャートは経済的自由と座標軸だったけど、こちらの方が分かりやすいような気がするが、どうかな?

うん、間違いではないけど、以前も言ったけど、自民党の議員も様々。 実は中島教授は『自民党 価値とリスクのマトリクス』という本の中で、安倍元首相や小泉元首相、現在の石破首相がどこに位置づけられるか検討しているけど、結構ばらつきがあるようだ。
安倍元首相はⅣの右下の方だけど、石破首相は左にシフトしてⅡに位置づけられるのではないかということだ。野田議員、小渕議員と言った女性の首相候補者はⅠ。また、いわゆる保守本流と言われる吉田茂・池田勇人の流れを汲んでいた派閥も何とⅠに位置づけられるそうだ。自民党と言っても一枚岩ではないということだ。
ただし、どれか一つということになると、全体としては君の言う通りⅣに位置づけた方が妥当かとは思うが、現在は、やや左の方へシフトしていくような気もしないではない。

と言うことは、こうしたマトリックスに各政党を位置づけることは意味がないということになるのでしょうか?


先生ならどのように位置づけますか?

そうじゃな、ワシだったらこうかな。


へえー、維新というのはそういう位置づけになるんですか?
国民民主も保守系ということになるんですか?

維新は教育の無償化や子育ての無償化ということも掲げているけど、一方では「小さな政府」をめざす指向性が強く、新自由主義と近いところの立ち位置ではないかと思う。保守層の受け入れ政党の一つではないか。
国民民主は立憲民主党と袂を分かったということは右にシフトしていると考えた方が無難かな。しかも、103万円の壁問題は、「もっと自由に稼がせろ、税収入は少なくてもいいじゃないか」という視点なので、これも下方にシフト。
だから、立憲民主党と国民民主党の連立は考えにくいかもね。逆に国民民主党と自民党、維新は近いところにいて、状況によっては連立もありかもしれない。ただ、裏金問題もあって、現在は連立自体はしていないけどね。

先生、やっぱこのあたりの込み入った議論になると、ちょっとついて行けません。

そうだろうね。政党の違いというのはなかなか掴めない。 ただ、選挙公約だけみると、各党、国民の心を引き付けることに焦点化しているので、ある意味分かりやすいし、それで判断してしまうこともある。
けれど、全体的な指向性についてある程度把握しておかないと、別の政策では自分の思いとは相いれないような方向に進めていかれてしまう場合もある。
このワシの位置づけに異論もあることじゃろう。だから、これをうのみにするのではなく、自分で、位置づけて判断したいもんだな。

いや、そんなことまで考えて選挙に行くのも大変です。なんか逆に足が遠のきそうです。

いやいや、ごめんごめん。逆効果だったらまずいな。ただ、自分なりにいくつかポイントを絞って、その座標軸で、今回はどの政党に入れようかという手もあるよ。
ワシは推しの政党があるけど、現在、かなりの人が「無党派層」。

どの程度なんですか?

となると、無党派層の動向によって選挙は大きく変わるということですね。

その通り。だから各政党はキャッチーな政策を掲げて取り込もうとする訳じゃ。でも、無党派層の中には、どうせ変わらないと、選挙に行かない人も多い。そうなると・・・

与党にとっては現状維持ができるので、むしろ来てもらわない方がよい???

君、本当に高校生?素晴らしい眼力だね。そう、だから、むしろ、選挙に行って、様々に違う境遇にある国民一人一人の選択肢を示すことで、「本当の意味での国民の意思」を表明したいものだよね。一部の意思しか反映していないのは、どう考えてもおかしいよね。

ただ、逆に、先生、質問です。たとえば自民党支持の岩盤層って、どんな人たちなんですか?

あくまで絶対ではないけど・・・
大企業経営層や宗教団体、それと農業関係者も自民党との関係性が強いだろうね。いわゆる保守王国と言われるのはどちらかと言うと地方かな。

先生、だから、僕のような若者は、そういうとらわれがない分、自由だけど、逆に、どの政党が自分にとって一番託したい政党か、やっぱ、しっかりと考えなくちゃいけないということなんですね。

そう思ってもらえるとありがたい。資料集にも、各政党の主な公約をまとめた資料が載っているから、少数政党の「れいわ新選組」や「参政党」なども、自分なりに位置づけたりしてほしいものじゃな。

で、先生、現実的な質問ですが、こんなマトリックスって、共通テストで出るんでしょうか?

おっと、来たね。でも関心ごとだよね。具体的な政党名を出すことはまずない。けれど、具体的な選挙公約を挙げて、この政党はどこに位置づけられるか?という設問はありだと思うよ。

じゃ、今回の話も無駄ではなかったんだ。

そうよ。 で、最後に、もうひとつ大事な情報提供を。実は、今年2024年は選挙制度が変わってちょうど30年。共通テストに出るぞ!!!

えっ、どんな風に出るんでしょうか?

よーし。じゃ次回は選挙制度のことについて触れようか。