【共通テスト対策】フクフクちゃんの現代社会・倫理・政治・経済

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【2023共通テスト】倫政(倫理分野)の総括(解説と分析)

今年度は現社の倫理までで終わってしまい、倫政の倫理分野をカバーできなかった。 せめて、試験問題の解説と分析だけはしておきたい。なお、今後は倫理分野も充実させていく計画である。

問題は下記リンクなどから入手してほしい

www.47news.jp

mainichi.jp

 

 1 4つの宗教の理解度を確認した■「知識」問題だが、「洞察力」も求められる。①ムハンマド以前は多神教。これを批判して唯一絶対神への帰依を説いたのがイスラーム。従って、これは✕。②ヒンドゥー教身分制度を否定していない。これも✕。④十戒では、確かに多神教を否定している。また、メシアの思想もある。ただし、十戒でメシアの思想が示されたかどうか・・・一応、これは括弧に入れておく。③在家信者と出家信者とに差がある。仏教では皆、平等が原則だが、この差はありえる話し。・・・おっと、確か、教科書欄外には、一般信者は五戒を守ればよいが、男性の出家者は250、女性の出家者はその倍近くの戒律を守ることになっていた・・・といった記述があったはず、という知識があれば、これを○と判断できた。そして、④も、メシアの思想はモーゼの頃ではなく、イエスが出てくる少し前の時期ではなかったか?③はどう考えても○なので、斟酌すると④は怪しい・・・よし③で勝負・・・といったかたちで決断したい。世界史選択者に有利な問題。

 

 2 1と同様、源流思想の地域横断的な■「知識」問題。①パリサイ人は律法主義なので✕。③農民は不殺生を避けられない。従ってジャイナ教は農民ではなく、商業活動に従事。このあたりも世界史組に有利だが、✕と判断できるはず。そうなると②か④か。④は老子の思想にかなったもので○ではないか。では②のアリストテレスはと言うと、「倫理的徳」は正しそうだが・・・あっ、そうか「政治的生活」ではなく「観相的生活」か。といつた具合に斟酌し、「小国寡民」という言葉がなくても、内容から④を選びたい。

 

 3 荀子の資料を活用した純粋な■「読解力」問題。手順としては①~④をざっと読んで資料文に取り組む方が良いが、実際は①~④を読んでもどれが答えかは判断できない。しかし、それでも選ぶべき選択肢をさっと目を通した上で資料文を読むと、資料文では孟子性善説そのものを批判していることが分かる。となると②か。スピードも必要なので、一つ一つ斟酌するのもどうかと思うが、一応②としておいて、②以外をそれぞれチェックしてみると、①は前段が違う。荀子は礼によって是正できると考えたはず。③後段が違う。孟子性善説で、学問によって善が獲得されるとは考えていない。④前段が違う。荀子は善を身につけることができないとは考えていない。また後段も違う。孟子は学びを通じて礼儀を身につけることが出来るとは考えていない。性善説。ということで、一応「目星」をつけてそれ以外のものを怪しいのではとチェックしてみると、誤りが見えてくる。

 

 4 プラトンの『国家編』とキケロの『義務について』の資料を読んでの■「読解力」問題だが、■「知識」も必要とする。aソフィストは人間の欲求を重視、しかし、b自己の利益の追求は自然に反する・・・ここまでは読解だけでok。cは知識で「自然法思想」。答えは②。

 

 5  最澄空也に関する単純な■「知識」問題。最澄は、「一切衆生悉有仏性」とあらゆる生きものは仏となる本性があると説いたのでアは✕。イの空也は正しい。③で易しい問題。

 

 6 ★日本の神々に関する■「知識」問題。④のアマテラスとスサノヲの絡みは知っているはず。スサノヲは姉アマテラスに会おうと高天原に行こうとするが、アマテラスはこれを警戒する。誓約(うけい)で、スサノオの心の内を占ってみようとした結果、スサノヲは神意を問うために高天原に来たのであって野心がない、「清き明き心」であることを証明したかたちとなったというもの。これを知っていれば迷わず④。①否定文は嘘が多い。先立つ神々の命に従って国土をうんだ。②この世をうんだのは「高天原」(神々の世界)のイザナギイザナミ。それを命じたのは「天つ神」。「天つ神」は神々の総称だが、それらもまた占いによってそれよれ上位の、名前さえ明らかにされていない神々の意志を伺う。日本神話には唯一絶対の究極神は存在しない。従って✕。③和辻の「祀るとともに祀られる神」についての知識があったかどうか。祀るというのは催事などを行なって神の魂を鎮め、祈り感謝することだが、和辻は、アマテラスなどの天つ神は祀られる神であるとともに、先立つイザナキ、イザナミなどを祀る神であり、たんに祀られるだけの山の神などの自然神より尊貴だとされているところに、日本神話の神の特徴があるとしている。教科書の欄外あたりにも目を通しておきたい。

 

 7 伊藤仁斎の「仁」についての判断問題。知識は必要ない。「我よく人を愛すれば、人またよく我を愛す」という文章に適ったものを選ぶだけ。②。これは易しい。

 

 8 生徒の書いた日記と三木清の『読書と人生』を資料とした■「読解力」■「判断力・思考力」問題。ただし、生徒の日記は長いがそれほど解答には参考にはならず、三木清の文章を読めば対応できる。これもbから埋めていくと絞ることが出来る。③④のbは不適合。となると①か②か。ところが②は「他者に向けられることで初めて問いになる」とあるが、自問自答もあるはずで、これはおかしい。となると①。こうした消去法で対応できるのでは。とりたてて三木清についての知識は必要としていない。国語的問題であった。

 

 9 法や規範にかかわる西洋の思想家にかかわる■「知識」問題。アは「4つの制裁」とあるからベンサム。イは信託・革命権だからロック、ウは神の法と人間の法の調和とあるから、信仰と理性の調和を図ろうとしたトマス・アクィナス。易しいが、ウが少し迷ったか。グロティウスは、人間が生まれながらに持っている自然法は、神の法ではなく、理性によって捉えられるものとして考えた。正解は⑤だが、これも落とせない。

 

 10 カントの自由と道徳法則についての■「知識」問題。やや思考力も要請するがとても簡単な問題。③。

 

 11 シェリングという授業では軽くしか扱わない思想家を取り上げたが、■「読解力」問題であり、シェリングに関する深い理解は必要ない。①が適合する。②~④はいずれも前段がもう誤りで、簡単に消去できる。受験生にとってはありがたい問題であるが、もっと深く考えさせるようなかたちにできなかったものなのか、というのが正直な感想。

 

 12 生徒同士の会話を読ませることで回答させる■「読解力」が求められるものであったが、会話文が長く、エネルギーを要したかも。Aとbとやはり二つの文章を埋める問題であるが、まずは会話文を読まずに、問題をとりあえず斟酌する。ここでもまずbが選びやすい。論理的に考えて、④は消える。②も「強さを身につけ」などと言っていない。となると①か③か。で③はと言うと、aは「規範を考慮する必要はない」というのは明らかな誤り。一方、①のaは、「制約による調整」に加えて、「他者の自己決定との調整」、これはあり得ようが、そんなこと会話文の中で言っていただろうか?そこで会話文に立ち返ってみると、確かに「他者との対立から合意に向かう調整」という視点にも触れているではないか。よし①でよし。この程度の感覚で良いので決断してしまいたい。ここで時間をかけ過ぎるより、次の問題へと向かったほうが得策。スピーディに情報を解読・処理する必要がある。漫然と会話文を読むのではなく、問題意識をもって、ここでは「他者の自己決定との調整」ということに触れていたかどうかという一点でチェックするという手法はぜひ参考にしてほしい。

 

 13 青年期を論じた人物にかかわる■「知識」問題。イの心理的離乳は簡単。ホリングワース。ダミーのサリヴァンは、ヘレン・ケラーの家庭教師かと思いきや、やはり心理学者のようだが、受験生が知っているはずもなく意味不明の問題。アはいずれも「現代社会」では触れない、ミードとシュプランガー。シュプランガーは価値観と性格との関連性から6つの類型を示した教育哲学者。ミードは青年期がほとんどない地域があることを報告した文化人類学者。さて、「自我の目覚め」を論じたとなるとどちらか?知っていれば問題ないが、案外、野生の勘での勝負だったかも。正解は②で、シュプランガーの方。

 

 14 ★センに関する知識と、モノカルチャーにかかわる知識が必要のため■「知識」問題ではある。正解は③でセンにかかわる記述は誤っているということだが、かなりの受験生は○と判断したのではないか。「潜在能力を拡大させ」と言っているのだから、○と考えてもおかしくない。しかし吟味してみるとセンの眼差しとは違う記述であることに気づく。潜在能力を消してみると、「経済の発展を促す国家の機能に着目して」「国家の機能」を拡大させるということになる。センはそのようなことを言っている訳ではなく、潜在能力を「人生の選択肢を広げるために必要な機能」として捉え、健康であること、教育を受けること等を重視している。従って、出題者はアを誤りと判断してほしかったようだ。だが、なかなかそのような判断はかなり難しいように思う。予備校の評価では「標準」とのことであったが、正答率は低かったとみる。

 

 15 ロールズについての■「知識」問題。資料があり、難問かと思いきや、とても易しい問題であった。資料を読まなくても、前段だけでまず①が有力と判断できる。ただ④も間違いではない。しかし、資料文を読むと④は誤り。才能に応じては流石に✕。となると①。なお、②の後段も正しいが、前段が誤りなので斟酌する必要はない。この問題もできるだけ、タイムパフォーマンスを考えて、決断してしまいたい。

 

 16 最後にまた、しっかりと読み込まなければならないような■「読解力」問題が待ち受けていた。正解は④。4つも穴埋めがあり、一つ一つ丁寧にチェックしようとすると骨が折れる。その際、違和感を感じたものがあれば、一応、その時点で消していくという方向で、とりあえず解答案を絞り込む方法が合理的だと思う。これも解説はあえて加えないが、こうした読解・判断問題の比重がセンター試験時代より高まっている。今後もこの傾向は続くものと思われる。これに対応するためには教科書でのインプット学習を12月までには終了し、それ以降、過去問や予想問題での読解・判断問題の演習に取り組む他はないということになる。
といってもそれは、解法のコツを確認する程度でしかない。
要は、公民科だけでなく、国語やその他の教科学習で、あるいは読書で、いかに情報処理能力や論理力を鍛えておくか・・・というところに帰することになる。

 

政経分野は以下の記事で解説している。

fukuchanstudy.hatenablog.com

 

以上、倫政の倫理2023を簡単に確認してみたが、知識の必要のない読解力問題もかなりの比重を占めていた。一方で、16問中10問は知識が不可欠。まずは、教科書を読み込み、倫理分野を大雑把に鳥瞰したい。ただし、倫政の場合、政経分野に時間がかかるので、倫理はできるだけ時間をかけたくないところ。
少なくとも、倫理は決して難しくはないので、スキマを利用しながら、また授業の前に「予習」することで、タイムパフォーマンスを意識しながら、かつ高得点を狙って学習したい。

今後、三つで括って覚える倫理編をブログにアップするので、ぜひ活用してほしい。