「三つで括って覚える現社の倫理」 ④西洋近代思想
①イギリス経験論と②フランス合理論の「違い」と ③カントによる「調停」を理解したい。カントとヘーゲルの違い、カントとイギリス功利主義との違い、イギリス功利主義とアメリカのプログマティズム・・・どれが出題されても対応できるように、それぞれの意味合いを理解したい。やや差がつく。
- ルネサンス・宗教改革・モラリスト 15世紀~17世紀
- 合理的精神の確立 17世紀
- ドイツ観念論(理想主義) 18・19世紀
- カント
- ヘーゲル
- マルクス
- イギリス「功利主義」19世紀
- アメリカ・「プラグマティズム」 20世紀初頭
ルネサンス・宗教改革・モラリスト 15世紀~17世紀
・人間中心主義の思想
・ 「人間の尊厳について」
→ 人間は「自由意志」によって自分の生き方やあり方を決定できる
②宗教改革
●ルター
カトリック教会の腐敗を糾弾
パウロの信仰義認説に立つとともに、聖書中心主義 万人司祭主義 を主張
●
・救済予定説 職業召命観
救済されるかどうかは予め決められている
→ では、私は救済されるのか?
神の栄光実現のために労働に励みなさい
→ 労働による恵みと報いこそ神に選ばれていることの証し
→ 富の蓄積を肯定 市民層の経済活動を宗教的・倫理的に是認
※ドイツの社会科学者マックス・ウェーバー
こうしたプロテスタンティズムこそが勃興期の「資本主義」の精神的な支柱になった と主張
●モンテーニュ 「我何をか知らんや」
→ 謙虚な知
● 「人間は考える葦である」
→ 考えることに人間の尊厳性がある
合理的精神の確立 17世紀
①科学革命
②イギリス論
● 「知は力なり」
・「帰納法」(個別の観察から真理に到達)を主張
・四つの → 種族のイドラ・市場のイドラ・洞窟のイドラ・劇場のイドラ
→ 偏見を避けよ
※「イギリス経験論」 → 「」が認識を可能にするという立場
アリストテレスの「経験論」の延長線上
③フランス論
● 「われ思う,ゆえにわれあり」(確実な真理から個別を推察)
・方法的懐疑 → 疑うことができないのは、疑っている私
・理性に対する絶対の信頼
→ 確実な真理からスタート、
合理的な推論・論証=(演繹法)で、様々な真理が探求できる
※「大陸合理論」
→ 人間に備わっている「」を認識根拠とする立場
プラトンの「観念論」の延長線上
※なお、デカルトは「物心二元論」を展開
心が中心で、物体が周縁 身体も物体であり周縁
同時に、人間にとって外界の自然もまた心をもたない周縁で、一種の機械
→ 数量化可能で人間の支配下に置くべきもの
・・・「的自然観」を産み落とす
→ 科学の発展の基盤である一方で、自然破壊の始まり
ドイツ観念論(理想主義) 18・19世紀
自然に対して「精神」を優位として捉える → フランス合理論のドイツでの展開
①カントが
の働きを批判的に検討することからスタートし
②ヘーゲルが
「絶対精神」の弁証法的なものの捉え方を展開しドイツ観念論を大成
● → 客観的真理ではなく、主体的な真理を求める「主義」を切り開く
●マルクス
→ 精神ではなく、社会的な存在を重視し、「唯物論」を産み落とす
カント
①大陸合理論とイギリス経験論を批判的に総合
※合理論に対する批判
認識活動以前に認識対象が既に存在しているのではなく、対象は人間の認識作用によって初めて構成される、「認識が対象に従う」のではなく、「がに従う」と「コペルニクス的回転」を図る
また、人間が認識できるのは「現象」だけであり、現象の背後にある「物自体」は知り得ないと限界づけを試みるとともに、理性が経験によらず推理することを戒めた
※経験論に対する批判
経験は確かに認識の素材ではあるが、人間には経験から独立した「先見的認能力」が先天的(ア・プリオリ)に備わっているとし、経験論がいかなる真理も確証できずに論に陥ることに警笛を鳴らした
※カントはさらに、人間には理論理性(認識能力)だけでなく、経験から独立して「道徳法則」をたてる能力である、「理性」を併せ持っているとした
②高い倫理性を求める
カントは、人間には、「実践理性」が命じ自ら確立した道徳法則に自発的に従う「」の能力があるとし、道徳法則に自律的に従って行為する自由な主体を「人格」と呼び、そこに人間の尊厳性があると考えた
※○「定言命法」無条件に「・・・せよ」
✕「命法仮言」「もし~なら・・・せよ」
「あなたの意志の格率が、つねに同時に、普遍的立法の原理となるように行為しなさい」
※行為の目的や結果より、「」に道徳的正しさを求めた
③「目的の王国」と「永久平和論」
互いに他の「人格」を「目的」として尊重し、決して手段としない結合体「目的の王国」を理想社会とした
→ これを国際社会に適用し、『永久平和のために』で、国際機関設立の必要性を提唱
ヘーゲル
①「法」
ある事柄とそれに反する事柄を統合することによってより高次の事柄が生じるという思考方法を産み落とす
・正 「」 (客観的・主体的) ― 反 「」(主観的・内面的)
→ 止揚・合 「人倫」
・・・カントが最高の原理と考えた「道徳」より高次なものとして客観的に「制度化」された「人倫」を最高の原理とした
②カントの「目的の王国」を「現実」の中で考え、「国家」を上位に位置づけた
正 「」 (共同性) ― 反 「」(個人の独立・・・一方で欲望の体系)
→ 止揚・合 「国家」・・・と、
現実の国家の中に理想的なものが貫かれているという現実肯定の哲学を構築
「歴史は絶対精神が自己実現する弁証法的過程に他ならない」
→ ナポレオンを見て世界精神が行くと絶賛
③一方で、現実の歴史には不合理なこと、矛盾がある → 理性の狡智
理性は非理性的な事柄を通して成長する、非理性的なことでさえ歴史の発展に役立っているとする理性の狡智から現実の不合理さを説明
マルクス
・ドイツ観念論は、全くの逆方向のアンチ・ドイツ観念論としての「唯物論」を産み落とす
マルクスは、ヘーゲルから弁証法を受け継ぎつつも、ヘーゲルが世界やその歴史を絶対精神から考えたのに対して、これを逆立ちした哲学と批判、
「人間の的存在がそのを規定する」とした。
②唯物史観
「これまでの歴史はすべて階級闘争の歴史であった」という唯物史観から、
資本主義の科学的分析を経て、現実の社会を批判、
資本家 vs 労働者の闘争を経た社会主義共産主義国家の実現を提唱
③労働者が生み出した剰余価値を資本家が「搾取」していると批判
イギリス「功利主義」19世紀
※個人と個人との権利が衝突するのが現実社会 どう折り合いをつけるのか?
→ イギリス功利主義
→ 人々に「快楽」や「幸福」をもたらすものかどうかが基準
カントが「動機」を重視したのに対して、「」を重視
①経済学者としてはアダム・スミス
・自由放任主義 → 自由な経済活動を重視
・「神の見えざる手」によって社会全体の幸福が実現されると説く
②
・できるだけ多くの個人の幸福が実現されるとともに、社会全体の幸福も最大のものにならなければならない
・・・「最大の最大」
→ 量的功利主義 「多数決」という方法論の根拠にも
※一方で少数者を犠牲にしかねないという危険性を孕む
②
・質的功利主義
幸福にも質的な差がある 「満足な豚より不満足な人間が良い」
・真の幸福は献身の行為
イエスの黄金率を実践することが幸福を最大化すると説く
・「の原則」
一方で、個人の自由は無制限ではなく、他者の生命等を損なう場合は一定の制裁を加えても良い。他方で、他者への権利侵害がなければ、人間の自由は最大限に尊重されなければならない
→ 現在の「基本的人権の尊重」の根拠にも
アメリカ・「プラグマティズム」 20世紀初頭
「フロンティア精神」等を背景に、物事の真理を理論や信念からはなく、
「の結果」によって判断・検証しようという思想「プラグマティズム」が生まれてくる
①プラグマティズムの祖・
観念は「」を通してのみ意味が明らかになる
形而上学クラブという名の会を作り、形而上学に対する皮肉と挑戦を込め、ヨーロッパ哲学と決別しようとした
②プラグマティズムの育ての親・
結果として「いかに生活に役立つか」が大事
→ 有用主義
③プラグマティズムの大成者・
← イギリス経験論、「フロンティア精神」、ダーウィンの「進化論」
知性を「」として「生活環境を改善する」ことが大事
→ 道具主義
※形而上学的議論ではなく、
「創造的知性」(日常生活で直面する問題を解決する能力)が大切