「三つで括って覚える経済」 ⑧国富・GDP ・国際収支
①国富、GDP、GNPやNIの意味、②経済成長率の計算問題、③経常収支、金融収支の意味合いや赤字・黒字判断あたりが問われる。ここも差が出る。
- 経済活動の指標
- 国富
- 国民所得(NI)
- 国民総生産(GNP)と国内総生産(GDP)
- GNP、GDP・・・含まれる?含まれない?
- 国民所得計算
- 国民所得に含まれないもの
- 国民所得の三面等価
- 新指標
- 経済成長率
- 「名目」と「実質」
- 国際収支
- 経常収支
- 経常収支の具体例
- 経常収支と内需
- 金融収支
- 金融収支の具体例
- 外貨準備高
- 経常収支と金融収支の関係
- 日本の国際収支の特徴
- 経常収支と円高
経済活動の指標
①としての国富
②としての国民所得(NI)、国民・国内総生産
③フローの比較級としての経済成長率
+1 海外とのやり取りの家計簿 →
・・・これもフローの一種
国富
国富とは
・・・ある時点で国民が保有する資産の合計 日本現在3700兆円
①資産 + ②純資産
①実物資産
実物資産は土地や建物など
※国内の資産は、貸した人・借りた人で+-ゼロと考え、ここには含まれない
政府の
・・・1300兆円も国民が貸していると考えマイナス計上しない
②対外純資産
対外純資産は、日本がにもつ金融資産と負債を差し引きしたもの
外国人が国内に持つ金融資産も差し引く
日本は投資立国でこれは大幅なプラス(1990年50兆 現在やや減少したものの350兆
30年連続世界一)
特に「投資」(海外に現地法人・海外企業の買収)が増加
※民間と政府保有分で、年々の富を生み出す源
国民所得(NI)
国民所得(NI)とは・・・
一定期間に国民が生み出した「」価値の合計
一年間の総生産額 → 国民総生産 → 国民純生産 →から導出
ただし、これより大雑把な国民総生産(GNP)あるいは国内総生産(GDP)の方が一般的
※G grossというのは「粗い」という意味
国民総生産(GNP)と国内総生産(GDP)
①GNP
その国の「」がある一定期間に生産した財・サービスの合計のこと
その国の領域内で生産された所得に加え、日本国籍を持つ人が海外で財・サービスを発生させた場合も含む。
※統計上の「国民」概念
→「1年以上の居住者」・・・1年経ったら国民扱い
法人(日本マクドナルトなど)も国民
②GDP
「国内」総生産→日本国籍を持たない労働者が生み出した、財・サービスも集計される。
国内の外国企業も含む。
③両者の関係
★GNP・GDP問題は2021入試で出たぞ
GDPは日本国籍を持つ人がで財・サービスを発生させた場合を含まないからGNPから(からの所得)部分を引いてやる。
逆に、外国人に支払ったお金を含むから(への所得支払い)を足してやる必要がある。
■GDP=GNP-海外からの所得+海外への所得支払(国内外国人も含む))
下線部は端的に言うと[海外からの純所得]
これを用いてGNPを主語にするなら
■GNP=GDP+[海外からの純所得]
すでに触れたように日本は対外純資産が大幅な黒字、そうするとフローの海外からの純所得も同様に黒字 だと推測できよう。
だから日本の場合大小関係は、GNP GDP
※しかし、一方で、現在はGNPより、国内の景気の動向を表すGDPの方が指標として重視され、経済成長率もGDPの対前年度増加率となっている。
実際多くの外国人がパートナーとして日本経済を一緒に支えている。同じ日本人でも海外生活者はどう考えてもパートナーとは言えないしね。
※GDPもGNPもあくまで「生産」。
従って、輸出と輸入のうち、は当然含むが、は含まない。
輸出-輸入は「貿易収支」というまた違う指標
GNP、GDP・・・含まれる?含まれない?
①日本国民が海外から得た「賃金・利子・配当」
→
②外国人が日本国内で得た「賃金・利子・配当」
→
③NPO活動の収益
→
※NPOは収益事業を実施することができるが、利益を「分配しない」で、もう一度目的に使うため非営利とされる。収益事業による付加価値自体は相当なものになるが、GDPに計上しない。
※「法人税」が免除されている公益法人(NPO法人以外の学校法人、社会福祉法人など)・特殊法人・独立行政法人の投資・消費はGDPに含まれる。
※警察や消防などの公共サービスの提供もGDPに含まれる。
国民所得計算
ところが、(GNP)あるいは国内総生産(GDP)もあくまで粗い計算。
と言うことで、より厳密な国民所得を算出するためには、以下の計算式が必要。
①まず、GDPとGNPともに「」をマイナスと計算する
・A社で200万円の車を生産
・A社の子会社で10万円のタイヤを生産
この二つをカウントするとタイヤを重複してカウントすることになるから。
②NNP:「国民」純生産
機械や建物などが摩耗しているので、ここから固定資本減耗費(減価償却費)をひくと、より厳密な国民「純」生産(NNP)となる。
※減価償却費とは、例えば
10年間使える1億円の機械がある
→ということは1年に1000万ずつ価値が減っていくということ。
※設備投資は[減価償却費]ではない。
あくまで設備の維持費・修理費や、設備の老朽化
(客観的に評価するのは難しいが・・)に対応するものが「減価償却費」
③NI:「国民所得」
※より、純粋な1年間で新たに生産された「付加価値」
NNPのなかには、国民の作り出した価値ではないが入っている。
例:消費税
→これは企業の生産額には入らないので「マイナス」にする
一方、政府のの分だけ市場価格が安くなっている
例:農作物への交付金
→補助金は企業のもうけになるので「プラス」にする
→これをまとめると
NI = 国民総生産額 - 中間生産物 - 固定資本減耗費 - +
国民所得に含まれないもの
※新たに生産した価値とは言えないもの
①「土地、株の値上がり益」()
②失業保険、生活保護の給付金、扶養している者への仕送り
③中古住宅や中古商品の売買
国民所得の三面等価
国民所得には「生産」国民所得、「分配」国民所得、「支出」国民所得の3種類がある
それぞれどの国民所得か?
これは( )国民所得
B ①雇用者所得>②財産所得>③企業所得
これは( )国民所得
C ①消費>②投資など
これは( )国民所得
新指標
GDP、GNPともに以下のことが計上されていない
・家事労働
・ボランテイア活動
・環境破壊による経済的損出
これらを吟味した新指標も登場している。
①国民純福祉NNW
→費や公害防除費を除外、余暇や家事労働を算入
②GDP
→GDPから「自然資源の減耗分」を差し引いたもの
経済成長率
これが景気の動向を表す最も重要視される指標
①「名目」経済成長率
今年のGDP - 昨年のGDP × 100 (%)
( )のGDP
※GDP 昨年100 今年110とすると
((110-100)/100) × 100 = 10(%)
②「実質」経済成長率
「実質」経済成長率は、インフレ率を考慮して計算
「実質」経済成長率の求め方
(1)今年の「実質」GDP
まず今年の「実質」GDPの額を計算する
※デフレーター
→ 10%の物価上昇なら110となる
5%の物価下落なら95
(2)昨年の「実質」GDP
一方で、昨年の「実質」GDPは「名目」と同じ数値
※その年度の物価を基準としている(100とみなせる)ので
(3)「実質」経済成長率の計算
結果、既に示した計算式と同様な「昨年」を分母とした公式で求める
今年の「実質」GDP - 昨年の「実質」GDP × 100 (%)
昨年の「実質」GDP
「名目」と「実質」
「名目」経済成長率が、前年度と比べて増加していると仮定する
物価が上昇している場合は、「実質」経済成長率は増加していないか、マイナスの場合もある
物価が下落している場合は、「実質」経済成長率はしている
※以下に不等号を記入してみよう
→デフレの場合、
名目経済成長率 ( ) 実質経済成長率 となる
国際収支
国際収支とは一定期間における国の対外経済取引(財・サービス・所得の取引、対外資産・負債の増減に関する取引、移転取引)を記録した統計
大きく ①経常収支(カネ) ②収支(資産)と③資本移転等収支に分けられる
※③の「資本移転等収支」
の社会資本形成のための無償援助
インフラ整備の資本財や債務の免除など
※①経常収支の「収支」は無償資金協力、寄付、贈与
経常収支
「カネ」を受け取れば、支払えば
①貿易収支
輸出-輸)
日本は〈 〉字基調ではあるが
※2008年度は世界同時不況のため、28年ぶりに赤字だが、基本は黒字
ただし3.11や中国との関係悪化で再び赤字に。
現在ウクライナ戦争等を背景に過去最大の赤字
②収支
運輸・通信・金融など
日本は〈〉字
※円高で日本人が沢山海外旅行に出かける
一方でインバウンド(海外旅行客)の増加で赤字が縮小しつつあったがコロナ禍で激減
③収支
海外からの投資収益
日本は〈〉字
※2005 年に所得収支が初めて貿易収支の黒字額を上回る
(貿易だけでなく海外投資が増大化しているため)
国内に短期滞在している労働者への給料もここ
ただしとして計上
④第二次所得収支
援助・国際機関への拠出
日本は〈〉字
無償資金協力、寄付、贈与や、留学中の子どもへの仕送りもここ
★日本の経常収支は、第一次所得収支の黒字によって黒字
→この黒字を海外投資にまわす
経常収支の具体例
・サンフランシスコに海外旅行に行き、ホテルに宿泊費を払った。
→( 収支 )の 〈〉字
・トヨタのヨーロッパ工場から、日本のトヨタに配当が支払われた。
→( 収支 )の 〈〉字
・イギリスに留学中の子どもに生活費を送った。
→( 収支 )の 〈〉字
経常収支と内需
「経常収支は国内総生産と(消費+投資+政府支出)の関係で決まる。
→ 経常収支 = GDP - 内需
マイナスになると、その分を埋め合わせるため外国から借りることになるため金融収支はマイナスになる(アメリカ型)。
○内需より外からの収入が大きい場合経常収支がプラスになる。
そのプラス分を海外に投資することになるため対外純資産が増加し、金融資産もプラスになる(日本型)。
金融収支
「資産」の増減 資産の取得はプラスと考える
①直接投資
海外で工場を建設・経営権取得のための株式投資
日本は〈〉字
②証券投資(間接投資)
株式や債権等への投資
③その他投資
預金・借款
④外貨準備…政府や日銀が保有している外貨や金の増減
※準備高「増」の場合は資産の増加でプラス
※日本は海外に多額の投資をしている「世界最大の債権国」
★この収支の増加が、やがて収支の黒字をもたらす。
金融収支の具体例
①トヨタ自動車が、ヨーロッパに工場を建てた
→( 投資 )の 〈〉字
②日本企業が外国銀行に経営権を譲った
→( 投資 )の 〈〉字
③日本人が、イギリス企業の株式を購入した
→( 投資 )の 〈〉字
外貨準備高
①1960年代までは貿易収支が赤字で外貨不足への懸念から景気を抑制する必要があった
→「国際収支の」
→その後、貿易面では黒字に転じ、外貨不足の懸念はなくなる。
②一方で、1973年から変動為替相場制に移行、政府・日銀、「」も視野に入れて、外貨を徐々に蓄積。1985年のドル高是正のための「プラザ合意」に基づき、円高を容認、を活用しドル売り・円買いを実施。
③その後、円高不況対策として、円売り・ドル買いの「為替介入」を度々実施、円売り・ドル買いの場合は国債発行を通じて国内の金融市場から円を調達し、介入に充てる。この結果、外貨準備高が増加
※現在中国に抜かれるも、世界第2位の外貨準備高を維持。
■現在、急激な円安のため、外貨準備を切り崩し、ドル売り・円買いを実施
アメリカはこれを容認して入るが・・・
財務省所管の外国為替資金特別会計が政府保有分だが、外貨準備の大半は米国債などの証券で、国際決済銀行(BIS)などへの預金は約19兆円にとどまる。
米国債を売却して介入資金にするのは国際協調の観点からハードルが高い。
経常収支と金融収支の関係
①「経常収支 + 資本移転等収支 金融収支 + 誤差脱漏」は常にゼロとなる。
②経常収支がプラスなら金融収支も原則
・・・日本型
③経常収支がマイナスなら金融収支も原則
・・・アメリカ型
日本の国際収支の特徴
①かつては大幅な「貿易収支の〈〉字」
→特にアメリカとの間で日米貿易摩擦
ただし、現在は貿易収支は赤字基調
②代わって、現在は「資本」(資産)が増大
→世界最大の債権国
→海外からの投資収益が跳ね返ってきて、現在
★「第一次所得収支の黒字」として伸長
→そのため「経常収支」自体は黒字 20兆円
③この経常収支の黒字分のカネを、海外に投資
そのため、「対外純資産」が増加し、金融資産はさらにプラスになる。
→これが★に反映・・・巡り巡って「経常収支」の黒字を支える
※先に触れたようにここ数年は20兆円程度のプラスと言ってもあくまで1年間のやりとり。GDP自体は500兆円規模だから、内需がやや不活発で480兆円
・・・そのため20兆円の経常収支の黒字≒海外純資産が「国富」に追加された程度と考えてやると良い。
■経常収支 = GDP -
■国富=実物資産 + 純資産
※日本の場合、内需はあまり活発ではないから、経常収支が黒字でも高揚感はないということになる。
経常収支と円高
経常収支には、①貿易、②サービス、③対外資産からの利子が+-される訳だけど、輸出、海外からの旅行者(インバウンド)、対外資産からの利子が堅調で経常収支が黒字の場合、「日本にたくさんドルが入ってくれば円高になる」訳だから「円高」基調となる。
ただし、円高・円安には様々な要因が複雑に絡んでおり、経常収支が黒字=円高基調にもかかわらず、円安になる場合もある。