【深める】判決文を用いた問題 ③再婚禁止期間違憲判決
今回は再婚禁止期間に関する判例を教材として学習を深める。
【問題】再婚禁止期間違憲判決
「女性は、前婚の解消又は取消しの日から起算して6ヶ月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」と規定されていたが、平成27年の最高裁の判決では、これを合理的でないとし、100日間に短縮された。このことについての判決文を読んで下の設問に答えなさい。
本件規定の立法目的は,父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解されるところ,民法772条2項は,「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定して,出産の時期から逆算して懐胎の時期を推定し,その結果婚姻中に懐胎したものと推定される子について,同条1項が「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。」と規定している。
そうすると,女性の再婚後に生まれる子については,計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって,父性の推定の重複が回避されることになる。
夫婦間の子が嫡出子となることは婚姻による重要な効果であるところ,嫡出子について出産の時期を起点とする明確で画一的な基準から父性を推定し,父子関係を早期に定めて子の身分関係の法的安定を図る仕組みが設けられた趣旨に鑑みれば,父性の推定の重複を避けるため上記の100日について一律に女性の再婚を制約することは,婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく,上記立法目的との関連において合理性を有するものということができる。
よって,本件規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は,憲法14条1項にも,憲法24条2項にも違反するものではない。
以上の判決文を参考に、「女性が離婚した直後に再婚。再婚後200日を経過後に子どもが生まれた」というケースについて空欄に当てはまる数字をそれぞれ答えなさい。
①この事案の場合、離婚した夫の子と推定されるのは離婚してから( A )日。
②再婚した夫の子どもと推定されるのは、再婚した日から( B )日経過後。
③ここで、推定の重なる期間が( C )日生じることになる。
④このような推定の重複を防ぐために、最高裁は、再婚禁止期間の設定自体は認めた。
しかし、これまでの( D )日の再婚禁止期間については理にかなっていないと判断した。
解説
どうだろうか?
そもそも再婚禁止期間の定めは、父親を明確にして子どもの利益・権利を保護するための立法である。
そして、判決文の、「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。」あたりが理解できたかどうか・・・
女性の再婚禁止期間が6ヶ月から短縮されたという知識を問うのではなく、なぜ100日なのかを、判決文から読み取ることができるかどうかという読解力・思考力を問う問題にしてみた。
Dは設問中に6ヶ月とあるものを援用し日数に読み替えできたかどうか。
①民法772条2項。
「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」
したがって、(A)は300日。
②同じく民法772条2項。
「婚姻の成立の日から200日を経過した後に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定するされる。」
したがって、(B)は200日。
③前夫と離婚してから201日目から300日目の間は、①と②が重複してしまう。
したがって、(C)は100日。
④改正前民法772条1項。
「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」
したがって、(D)は6ヶ月=180日。
裁判所は、重複を避けるための100日間の再婚禁止期間は合憲、それを超える80日は違憲と判断。
なお、そもそも昔から「十月十日(とつきとおか)」と言われているように、妊娠期間が約10カ月間であることを知らないようではAの300日もピントこないかも。
18歳から婚姻できる訳だから、このあたりも成人の常識として知っておきたい。
ちなみに、上記のことを可視化してみると以下のようになる。
※実際には、役所のミスがない限り、再婚禁止期間中に婚姻届を提出しても受理されることはない。
ただし仮に受理されてしまったら取り消しの対象となる。
民法の改正
この判決を受けて、民法の一部が改正され、例外も追加された。
民法第733条
1項 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2項 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合