【深める】基本的人権 ~大学基礎レヴェルの内容を視野に入れて~ ④外国人の人権
外国人の人権については教科書や資料集ともに特集で1ページを割いているものが多い。
在留外国人の推移
現在の日本社会では在留外国人は280万人を超え(日本の人口の約2%)、パートナーとして日本社会を支え合っていることを考えれば、当然その課題について知っておく必要があるからだ。
出典:出入国在留管理局 令和3年6月末現在における在留外国人数について
今日、就職や選挙権について制限があるものの、社会保障も含めて、外国人の人権保障はかなり前進した。
2012年には指紋押捺を課していた「外国人登録制度」が廃止され、新しい在留管理制度が開始された。
在日韓国・朝鮮人を中心にした特別永住者はその証明書が交付され、それ以外の永住者や定住者などは「在留カード」が交付され、「住民票」も作成されるようになった。
※ただし、16歳以上の者は「在留カード」の携帯が義務付けられ、不携帯の場合は罰金が課せられる。
そして、「マイナンバーカード」も発行されることになった。
「自然権」に由来する権利の多くは外国人にも保障されている。
しかし、全てが保障されている訳ではないので注意が必要
外国人の人権保障に関する正誤問題
【問題1】外国人の人権
●外国人の人権に関する次の文章について、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、正誤を判断しなさい。
①政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。
②国の統治のあり方については国民が最終的な責任を負うべきものである以上、外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない。
③社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、その政治的判断によってこれを決定することができる。
「思考訓練のため」判例を用いて判断しにくくしてあるが、いずれも○。
まどろっこしい言い方を余儀なくされているが、
①政治活動が全てダメという訳ではない、
②外国人が地方公務員になることは想定はしていないが禁止はしていない、
③外国人の社会保障の適用は政治的判断≒行政の判斷であって、適用されない訳ではない
・・・といった趣旨になる。
【問題2】
なお、上記の文章から以下のことが言えるか否か、といった問題が共通テストでは出される可能性もある。
○、✕、✕。
③最後は、国が決定できると言っているのであって、自治体判断とまでは言っていないので✕。
現在、国は定住外国人については生活保護法を準用するとしており、自治体がこれを無視して、準用しないという判断をすることはできない。
・・・ここで想起してほしいのは、生活保護は、自治事務か法定受託事務か?
という問題。
そう、生活保護は「法定受託事務」であって、「自治事務」ではないという知識が結びつけば、これも納得できるはず。
どう?やっぱり「知は力なり」だよね。
※最後に時事的な問題を二つ。
【時事問題】「出入国管理法」改正案
外国人の収容や送還のルールを見直す「出入国管理法」改正案について、政府が国会での成立を断念したことは知っているであろうか。
今回の出入国管理法改正案は、「難民認定申請が却下された外国人」の長期収容が問題となる中、そうした外国人の本国送還を容易にし、入管当局の権限を強化するためのものであった。
ところが、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性が3月に死亡した事案をめぐり、入管行政に対する世論の反発が高まったこともあり、この改正案は棚上げとなった。
日本がほかの先進国と比べて、難民申請者を受け入れる割合が極めて低いことは承知のとおりだが、移民施設での対応についても問題点が露呈し、ここでも日本の「ガラパゴス状態」を浮かび上がらせたかたちとなった。
【時事問題】新型コロナと外国人技能実習制度
・べトナム人を中心に外国人技能実習生は右肩上がりに増加しているが、一方で、コロナ禍の中、解雇されるケースも多く出ている。
一方で、2020年4月から新型コロナウイルスの影響により、技能実習の継続が困難となった実習生や、実習期間が終了したが帰国が困難となってしまった外国人に対し、同業種・異業種での転職(再就職)を可とすることになった。
これを人道的支援と考えるか、都合のいいように利用しているだけと考えるか、意見の分かれるところである。承知のように、農業といった人手不足の業界への単純労働に対する外国人就労を解禁したが、それでも人が不足しているという現状があり、「技術移転」という目的の外国人技能実習制度が大きくねじ曲げられてしまうという批判も根強い。