【深める】格差に関する指標について①「ローレンツ曲線」
日本は、格差社会になってきたと言われる。
「一億総中流」などと言われた時代は今は昔。
一部の富裕層以外は家計に必ずしも余裕がなく、2019年の調査によると、
「やや苦しい」「大変苦しい」が54.4%。
国民生活基礎調査 II 各種世帯の所得等の状況 7 生活意識の状況
特に現在は、コロナ禍もあり生活そのものがたちいかない世帯も増加していると言う。
こうした格差にかかわる「指標」がいくつかある。ぜひ知っておきたいものだ。
ローレンツ曲線
ローレンツ曲線は所得格差の状況を示すグラフ。
所得が低い世帯から並べた場合の累積比率を現す。
縦軸が所得、横軸が人数を現し、その関係性をグラフ化したもので、右上がりの曲線となる。
ある国の曲線がA、別の国の曲線がBであったとしよう。
曲線Aと曲線Bを比較してみよう。
人数の累積比率80%のところに注目してやると、
・曲線Aは80%の世帯で全所得の40%を占めている。
・曲線Bは80%の世帯で全所得の20%しか占めていない。
曲線Bでは残りの20%の世帯が80%の富を牛耳っているということになる。
となると、どちらが「格差」社会か?・・・分かると思うが、曲線Bの社会の方が格差が強い。
ローレンツ曲線は所得水準の低い人々から順に人口が構成されている。
したがって、貧困層が多いと、序盤は人口構成比が増加しても累積所得比率はほとんど上がらず、終盤でようやく累積所得比率の上昇幅が大きくなる。
格差が大きいと、曲線は原点からなかなか上へ上昇せず、右へ膨らんだ軌跡となる。
全く格差のない社会のグラフ?
逆に、もし格差が全くなければ、曲線ではなく、45度線となる。現実にはあり得ないことであろうが、村の全世帯100世帯がすべて年収100万だとすると、グラフは100%・100%の交点と0を結ぶ以外に示しようがなく、45度線となる。
となると、「45度線から離れるほど格差が大きい」状況だということになる。
これを覚えておくと判断が楽。
多くの低所得者がいる一方で、一部の富裕者はかなりの収入・・・
こうした傾向が顕著だと、45度線から離れたローレンツ曲線となるということである。
試験で問われる問題
で、こういう理解を前提として、試験で問われるのが、
例えば、
「累進課税制度等により、再分配がうまくいったとする。とするとその場合の曲線はAかBか?」
といった形の設問。
あるいは、
「フランスと日本とでは日本のほうが所得格差が進んでいる。とすると日本の曲線はAかBか?」
といった程度か・・・な。
先の「45度線から離れるほど格差が大きい」ということが頭に入っていれば簡単なこと。
ただ、グラフを吟味し、先に確認したように・・・例えば低所得から並べた80%の世帯の累積所得が、Aでは60%を占めるが、Bでは40%しか占めていない・・・といったことを落ち着いて確認できれば、判断できるはず。