高校生にも金融教育が始まったが、確かに理解し難いね。
試験には出ないとは思うけど、自頭を鍛えるという意味で、以下の説明をよくよく吟味してほしい。
債権の意義
そもそも債券とは、国や企業などの発行体が、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券。
一般的に預金より収益性があるが、株式よりは収益性は低い。
しかし、株式や投資信託などに比べて安全性の高い投資商品とされている。
国債については、国が発行するものなので、「元本」割れのリスクはまずないとされる。
もう少し補足すると
・発行時、その時々の金融機関の預金金利よりもやや高い利率で設定される
・債券市場で売買され、需要と供給に応じて価格(販売価格)は変動する。
・アメリカの金利や、株式の変動等、様々な要因によって需要は変動する。
・利回りについては、下記参照。
・10年もの長期国債の利回りは「経済の体温計」のひとつとされる。
さて、問題は「債券の価格(購入価格)と利回りは反対の動きをする」という意味。
ここで理解してほしいのが、債券には「額面価格」と「購入価格」があるということ。
・「額面価格」とは、債券が満期を迎えたときに受け取れる金額。債券の券面に記載されている金額。
教科書の「債券の価格」は「購入価格」と捉えておこう。
「利回り」とは
一方、「利回り」の意味は、投資金額に対する収益の割合。その計算式は以下の通り。
利回りの計算
発行時 額面価格100万円 購入価格100万円 期間1年 利率年2%とすると・・・
→2%の利回りだから2万円の収益があったということになる
ところが、債券の「購入価格」は変動する。
※現在、ゼロ金利政策等のため、歴史的な低金利時代だが、ここでは、分かりやすくするため、2~3%の金利と想定する。
例えば、アメリカの金利が変化したとしよう。
① 市場金利上昇時の利回り
アメリカの金融機関の預金金利が2%→3%になったとしよう
→2%の利率で出回っていた債権は投資対象としての魅力が薄れる →人気がなくなる
→証券価格を下げないと売れない
→100万円の額面金額の債権を99万円に価格を下げて売る
そうすると1年間の利回りは
※価格が下がると、利回りはアップする
利率2%より上の3%の利回りとなる
② 市場金利下落時の利回り
アメリカの金融機関の預金金利が1%になったとしよう。
→2%の利率で出回っていた債権は投資対象としての魅力があがる →人気が高まる
→証券価格を上げても売れる
→100万円の額面金額の債権を101万円に売りだすと
※価格が上がると、利回りはダウン
利率2%より低い1%程度の利回りとなる
ただし、これは1年目の利回り。
上の計算式をよく見ると、(額面価格-購入価格)÷期間(年数)なので、これが10年ものの国債であれば、差額は1万÷10=1000円
10年間の最終利回りは1.88・・・1%の金利状況なら、それでもまだお得
以上、これで「債券の価格と利回りは反対の動きをする」ということが理解できただろうか?
難しいね・・・でも、何となく分かったかな?
「シーソー」関係で整理
これを「需要と供給の法則」から整理すると、
人気が上がれば価格が上がって、利回りは下がる(低い利回りでも買い手がつく)
逆に人気が下がれば価格は下がって、利回りは上がる(利回りが高くないと買い手がつかない)
・・・ということでもある。
こうした「シーソー」関係にあるものは結構ある。
時事問題コラム「高校生の金融教育について」でも、株価・債権・金利の三つがそれぞれシーソー関係にあることに触れたが、できれば併せてこのコラムも読み込んでほしい。
「利回り」と「預金あるいは貸出金利」の関係
なお、債権の「利回り」と国内金融機関の「預金あるいは貸出金利」は、相互影響関係にある。
債権の「利回り」が先行して上昇することもある。「国債が売られると金利が上がり」、「国債が買われると金利が下がる」という関係。
民間銀行の住宅ローンは「10年もの長期国債の利回り」と連動して変動するそうだ。
そのため、現在、ゼロ金利政策を進める日銀は、「10年もの長期国債の利回り」を下げることに躍起になり、大量の10年もの長期国債を買い取っているという訳だ。
金融機関も、現金を持っていても商売にならないから、国債や株を購入する。国債だって利子がつくからね。そうなると市場で取引される国債は品薄となる。レアものになるから、その点では「人気」は高くなる。安定性を求める、特に高齢者には根強い人気があり、そうなると価格が上がって、利回りは下がる。
と言うことで、「10年もの長期国債の利回り」は、低体温のまま。
政府は国債を発行しないとやりくりがつかない。でも、国債の買い手がいないと困る。
特に海外法人に買い占められると、やっかいだ。それもにらみながら、また、国債が市場でだぶつけば価格が下がり、利回りが上がるので、それも避けるべき、大量の国債を引き受けているという訳だ。
この結果、品薄で利回りも低い国債ではなく、リスクはあるが、収益性の高い「株式」の方に投資が集中し、コロナ禍にもかかわらず、株は高水準を維持している。
アメリカの利上げと日銀の対応
一方で、現在、アメリカは、金利を大幅にあげてきた。上記①のケースだ。
そうなると、日本の国債は魅力がなくなる。国債が売られる。そうなると人気がないということで、価格が下る。
となると、逆に利回りは上昇する。金利が上がりかねない。金利を抑えて景気回復を図ろうとしている日銀にとって、これは歓迎できない状況。
で、日銀は、10年もの国債を対象に利回りを0.25%に指定し、無制限に買い入れる「指値オペ」と呼ばれる措置を急ピッチで実施、さらにここに、7年ものの国債も加えるなど、金利上昇抑制に躍起になっているとのこと。
どう、受験生諸君・・・理解できたかい?