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【今日の時事問題】「こども家庭庁」と「こども基本法」

「こども家庭庁」が創設されることとなった。

これまで厚生労働省内閣府にまたがっていた子ども関連部局を統合し、子ども政策の司令塔として政策を一元的に進めようとするものだ。子どもの貧困対策、児童虐待防止、性犯罪対策、子育て支援少子化対策といった幅広い分野を受け持つとともに、ほかの省庁に「改善を求める勧告権」も持たせることになった。

ただし、縦割り行政は一部解消するものの、幼稚園や義務教育といった分野は引き続き文部科学省が担当するとのこと。

 

この「こども家庭庁」創設にあたっては、当初は「こども庁」とされていたが、「家庭」を重視する保守派の意見が反映され、「家庭」の2文字が加わったという経緯があり、これについては批判もある。虐待を受けた子どもにとって家庭は安心できる場所ではない、家庭だけでなく社会全体で子育てを支援すべきではないか、子どもを権利主体とみなすならこども庁でよいではないか、といった具合だ。

 

一方で、子どもの権利を保障するための「こども基本法」が制定され、国連の「子どもの権利条約」に定められていた「子どもの意見表明権」も遅まきながら明記された。
以下に掲載する問題の「解説」は、以前書いたもの。従って、この「こども基本法」が成立したため、もはや通用しないことになるが、そのママ掲載させてもらうことにして、30年にわたって求められてきた動きが結実したものだ。
ただし、これはあくまで理念法※。

※ある事柄に関する基本理念を定め、具体的な規制や罰則については特に規定していない法律のこと。

 

従って、罰則規定がある訳ではないので、権利保障をしていくためには声をあげていかなくてはならない。政府は、「子どもを対象にしたパブリックコメントの実施などを検討している」とのこと。

 

なお、上記の情報ソースは毎日新聞の「15歳のニュース」。この受験生応援サイト・時事問題を書くために、定期購読するようになった。

6月18日付けのものには、国内外の高校生120人が核廃絶への願いをスケッチブックに書いて掲げる姿をリレー形式でつないだ動画がインターネットで公開されたとの記事も出ていた。「ピースブックリレー」と名付けられた15分の動画だ。
貴重な、貴重な高校時代。いろいろなことに取り組み、そしてできれば「おとな」と協働して、若者の声を「発信」したいものだ。

 

以下、受験生のために、こども家庭庁とこども基本法に関連して、二つのことを「としより」から発信する。

 

新しい「庁」の設置について

岸田首相は、「こども家庭庁」に続いて、内閣官房に「感染症危機管理庁」の設置も表明した。菅前首相の時は「デジタル庁」。行政のスリム化を目指していたかと思っていたが、ここのところむしろ肥大化している。それだけ、様々な課題があるということか。
一方で、1府22省だった省庁がスリム化され1府12省庁に再編成されたのが、2001年(平成13年)。この1府12省庁全部言えるだろうか?

 

内閣府総務省法務省、外務省、財務省文部科学省厚生労働省農林水産省経済産業省国土交通省環境省(2001年の再編成時に環境庁から格上げ)、防衛省(2007年に防衛庁から格上げ)、国家公安委員会(警察庁を管理する機関のため、庁と数えられる)。

 

ところが他方で、「新たな庁」が、結構創設されている。「庁」は、府や省の「外局」として置かれるのが一般的。外局は、特殊な任務を所管する専門機関として、規則その他の特別の命令等を自ら発することができる。ただし例外もあり、復興庁とデジタル庁は内閣に設置。
以下2001年以降設置された庁を列挙する。

 

○2008年 観光庁    「国土交通省」の外局
○2009年 消費者庁   「内閣府」の外局
○2012年 復興庁    「内閣」に設置・・2032年まで
○2015年 スポーツ庁  「文部科学省」の外局
○2021年 デジタル庁  「内閣」に設置
○2022年 こども家庭庁 「内閣府」の外局

 

観光庁が何省の外局か?といった単純な出題もありかとは思うが、「消費者庁」と「こども家庭庁」が「首相直属」の内閣府の外局であること、また「デジタル庁」は内閣に設置して首相が長を務めるという特殊な庁で他の庁より一段高い地位にあると言えなくもない、といった点のほうが重要かと思われる。

子どもの権利等に関連して

まず、「子どもの権利条約批准」(日本1994年に批准)に関連して3題。

子どもの権利条約を批准するために、教育基本法が改正された。○か✕か。

とんでもない駄作問題を作ってみたが、案外罠にはまったのでは。教育基本法は2006年に60年ぶりに改正されたが、これまでの「個人の尊厳」を継承しつつ、「公共の精神」などの規範意識にも言及。「我が国と郷土を愛する態度を養うこと」などを教育目標に掲げた。第1次安倍内閣の下のもので、子どもの権利条約とは違う潮流でのもの。子どもの権利については、人種差別と同様、権利自体は守られているということで法整備は行われなかった。子どもの福祉を守る法律として「児童福祉法」があるが、しかし、福祉以外の側面についても国内法の制定が必要だという意見もある なお、センター問題に「子どもの権利条約を批准したが、未成年者保護の観点から、成人と異なった取扱いを行うことは認められている。」といものがあった。○である。パターナリズムによるものである。

 

子どもの権利条約の批准に合わせ、嫡出でない子の財産相続分を嫡出子よりも低く定めていた民法の規定が改正された。○か✕か。

 

これも誤り。民法改定は最高裁に持ち込まれた訴訟によるもの。違憲判決が出て改正された。この判例自体は平等権に関わる重要なもので、後にもう一度触れるが・・・いずれにせよ、子どもの権利条約批准のための法的整備がなかったという知識があればすぐに判断できるもの。

 

児童虐待防止法は、児童虐待が行われているおそれがある場合には、行政が児童の住居に立ち入って調査することを認めている。○か✕か。

 

上記で子どもに対する人権保障があまり進んでいないといった指摘をしたが、これは正しい。「児童虐待防止法」はある。また、「日本は、性的な搾取・虐待が児童の権利を著しく侵害するものであることから、児童買春や児童ポルノを規制する法律を制定している。」、これも正しい。つまり、保護される存在という側面での法律はある。しかし、意見表明権などのポジティフなものが欠落か・・・。

※と言うことで、既に触れておいたように、今回の「こども基本法」で「子どもの意見表明権」が明記された訳だが、絵に描いた餅にならないよう、権利主体としての若者たちよ、存分に意見を表明するがよい!!!

次にやや込み入った問題も。

 

未成年者は、自分が訴訟当事者となった場合、その裁判で適用される法律が自分の基本的人権を不当に侵害していると主張できない。○か✕か。

 

無論、未成年であろうと意見を表明する権利は保障されなければならない。常識的に考えて✕だと判断できるはず。
ただし、民事訴訟については「未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない」と規定されている。

これはなぜか?これは、事理弁識能力が不十分なため不利になることがあり、それを避けるための立法である。保護するためのものであり、逆の言い方をすれば、民事については、法定代理人を通じて訴訟行為をし、意見を表明することができるということになる。なお、名誉毀損などの刑事事件については本人が訴訟することができるが、裁判では検察が起訴するので、事理弁識は問題とならない。
また、民事、刑事ともに未成年者が加害者として訴えられることもあるが、責任能力があると判断されると本人に刑事罰もしくは賠償責任が及び、民事の場合は、本人に責任能力がないと判断されたとしても「監督義務者」に対して損害賠償請求がなされる。

※問題自体は簡単だが、解説はやや分かりにくいかも。しかし、成人年齢が18歳になったこともあり、未成年と成人との違いはいろいろな側面で問われる可能性が高い。「未成年の裁判」のことも目配りしておきたい。

 

最後にもう一題。

次世代に貧困が連鎖していくことを防止するため子どもの貧困対策推進法が制定されている。○か✕か。

 

2014年に制定された。スクールソーシャルワーカーなどの支援環境の整備が進みつつある。ただし、現在日本の子どもの貧困率は高止まり、1985年に10.9%であった子どもの貧困率※は、2019年には13.5%に。7人に1人は貧困状態。また、「ヤングケアラー」の問題も表面化してきた。

 

※この貧困率とはどのようなものなのか、理解しておく必要もある。近いうちに、「知っ得コーナー」に掲載するので目を通してほしい。

 

と言うことで、子どもをめぐって課題は山積みである。こども家庭庁が子どもの幸福実現ために真に機能するよう、監視し、また意見を届けなければならないと、「としより」は強く思っている。