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【今日の時事問題】内閣不信任案・議長不信任案について

立憲民主党が提出した岸田内閣に対する不信任決議案と細田博之衆院議長への不信任決議案が否決された。

 

「内閣不信任」はよく聞くことだが、そもそも内閣不信任決議案は衆院議員51人以上の賛同者があれば提出でき、最優先で採決されるもので、憲法の規定で可決すれば首相は衆院を解散するか、内閣総辞職しなければならない。

 

しかし、今回は、野党の足並みが揃わなかっただけでなく、そもそも不信任のためには「過半数」の賛成が必要で、衆議院は、与党は2/3までには至らないが、「絶対安定多数」※という状況で、可決の見込みはない中での不信任案。選挙前の茶番劇だという批判も。

 

なお、「議長」の不信任決議については、これまでも出されたことはあるが、可決されたのは一例だけ。2000年代に入って13度めの不信任案であった。

 

※絶対安全多数 衆院に17ある常任委員会の委員長ポストを独占し、委員会で過半数の委員を与党が確保できる状態

 

以下、簡単な正誤問題と解説を加えておく。

 

内閣不信任は、世論調査に基づいて衆議院が決議できる。

 

衆議院しか内閣不信任案は提出できないことは承知のとおりだが、無論、世論調査に基づく訳ではない。衆院議員「51人以上の賛成」があれば発議できる。今回提出した立権民主党は90名を超える衆議院議員がいるので可能であったが、他の野党は単独では提出できない。

 

 

内閣不信任決議案を可決するには、衆議院において出席議員の3分の2以上の賛成が必要とされる。

 

人事上のリコールはほとんどが2/3以上だが、内閣不信任は、法律案、予算案、条約と同様「過半数」。

 

なお、これまで内閣不信任が可決されたのは4回だけ。1990年代の宮沢内閣が最後だが、この後「解散総選挙」にもっていったが、自民党は敗れ、細川連立内閣が成立することとなった。ただし、「過半数」で可能だが、かと言って内閣不信任の可決については、基本的に野党が出すものだから、やはり過半数はハードルが高い。

 

 

衆議院において、内閣不信任決議案が可決されるか、または、信任決議案が否決された場合に、内閣は10日以内に必ず総辞職しなければならない。

 

「必ず」といった強調構文は怪しいと思ったほうがよい。この問題と似たものを後にも掲載してあるが、衆議院を解散し(10日以内)民意を問うという、別の選択肢をとることもできるので✕。

 

ただ、ここでもう一つ着目したいのは、「信任決議案が否決された場合」という部分。不信任は頭に入っていることとは思うが、案外この部分は無視されがち。ここに引っかかりを感じて✕と判断した受験生もいるかも知れないが、憲法にも実は明記されている。

信任案は過去に3回しか例がないが、野党の内閣不信任案や参議院における首相問責決議などに対抗するために用いられる。野党が妨害工作として不信任案を提出することがあるが、そんなときに予め信任案を提出して可決させることで、野党に不信任案を提出できなくさせるといった使い方のようだ。

 

日本の首相は衆議院が不信任案を可決するとすぐに総辞職しなければならない。

 

「すぐに」といった強調構文は怪しいと思ったほうがよい。衆議院を解散し(10日以内)民意を問うという、別の選択肢をとることもできるので✕。

 

「国会において憲法の規定に基づき内閣不信任決議案が可決された場合、内閣は総辞職か衆議院の解散かを選択することになる。」なら○

 

1993年宮沢内閣に対する内閣不信任案が可決され、宮沢首相は衆議院を解散し、国民に信を問う総選挙に打って出た。

 

内閣不信任の可決は戦後4回。現在のところこの93年が最後のものである。政治改革を巡る自民党内の対立を受け、同党議員だった有力者が賛成に回ったため可決された。あ、そうですかと総辞職する訳はない、当然、解散総選挙するしかないよね。だから答えは○。

 

なお、別の問題で「リクルート事件などスキャンダルが続発する中、自民党が分裂し」と、リクルート事件に言及したものもある。リクルート事件は、1988年発覚した事件で、リクルート社が、子会社の未公開株をばらまいた汚職事件。竹下内閣の辞任の引き金となったものであるが、1993年の政権交代の遠因として扱われている。リクルート事件は、政経、現社とも教科書記載があるが、こうした結びつきに言及していないので、やや判断が難しいけど、こんなところに落とし穴はさすがにない、そこまで意地悪ではないと思ったほうがいい。これがロッキード事件だったら別だけど。たださすがに、リクルートロッキードも過去のことになったなー、という印象は否めない。知っておいてほしい汚職事件だけれど、もう出題はないかな・・・。ただ翻って、内閣不信任の可決は93年が最後なので、こいつはまだ問われると心しておこう。

 

国務大臣衆議院で不信任されたとき、内閣総理大臣はその大臣を次の会期までに更迭しなければならない。

 

個別の閣僚(国務大臣)に対する不信任の決議は、政治的責任の追及という意味を有するにとどまり、法的効果を伴うものではない。国務大臣を選ぶのは内閣総理大臣の専権事項だから、それを国会決議が強制力をもって覆したら三権分立に反することになるからである。従って、内閣総理大臣には罷免の義務はないし、また自ら退任する必要もない。これは現社の問題。現社、侮ることなかれ。

 

なお、では、「議長」はどうであろうか?実は議長も同様で、やはり決議に拘束力はない。ただし、議長は内閣が選ぶのではなく、それぞれの議院で選出されるものであるので、当該役員は在任の根拠を失うため自らの進退を決する政治的・道義的責任を負うこととなる。かつて可決されたことが1960年代に一度だけあり、結果、辞任している。

 

イギリスの首相は議会から選出され内閣を組織するため、議会から内閣不信任を決議されることはない。

 

イギリスも日本と同様首相に対して不信任案を出すことができる。先般も不信任案が出され、否決されたところ。結果は信任が211票、不信任が148票で、ジョンソン首相の続投が確定したが、党規則により、少なくとも向こう1年間はジョンソン首相に対する不信任投票は行われないとされているそうだ。

 

なお、「参議院」については、内閣不信任の決議権はないが、「問責決議」を出すことができる。参議院では10人以上の賛成があれば発議できる。首相だけでなく、国務大臣などに対しても出すことができる。可決されたケースとして2013年の安倍首相に対するものがある。ただし、憲法や法律には問責決議についての規定はなく、問責決議案が可決されても法的拘束力はない。これも頻出事項なのでインプットしておこう。

 

最後に、我々、国民には内閣不信任案の提出権はない。地方自治では、住民の署名によりリコール請求できるが、国政は、「選挙」が意思表明の大切な場。「首相公選」制度ではないこともあり、選挙の機会を大切にしたいものだ。