【速修】①政治と法・人権保障と法の支配(1)国家・主権
①政治と法・人権保障と法の支配(全81問)
Politics and law・Human rights guarantee ・Rule of law
問題文をクリックすると解答と解説が表示されます
01 現在、国連に加盟している国家は150近くになっているが、地域別で国の数が最も多いのはアフリカである。
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- 初っ端、出題されそうもない創作問題からスタートして恐縮だが、国際的な大局観を問うことからスタートしたい。現在地国連の加盟国数は193。そのうち地域別に最も多いのはアフリカで54カ国が加盟。アジアはトルコやイスラエル等も含めて48カ国。ヨーロッパについては、どこをもってヨーロッパとするかによって違いがあるが、「欧州評議会」という組織に加盟している国は47カ国。ここには、ロシアもウクライナも加盟しているが、ロシアをヨーロッパに入れるのは違和感があるかも・・・と書いていたが、現在ロシアはここから脱退・・・。ということで地域別の人数を問うことはナンセンスなので、今回は問題しては成り立たないが、それでも、アフリカ、アジア、ヨーロッパが50カ国前後の国数であること(その部分の積み重ねで全体としては200近い国があること)、その中でもアフリカが最も多いことは頭に入れておこう。なお、国連がスタートした時の原加盟国は51。日本は当初は加盟が認められていなかった。日本の加盟は1956年。ちなみに、日本は北朝鮮、台湾を国家として認めていないことは承知の通り。この解説を修正加筆し出したのが2022年2月末、何とロシアがウクライナ侵攻を開始・・・君たちにとっては初めてのリアルタイムでの戦争。なぜロシアの暴挙を止めることができなかったのか、今後ロシアにどう対処すべきなのか、ぜひ展開を注視するとともに、今後どのような営みが平和への礎になるのかを含めて、学校や家庭で、話題に取り上げ語り合うような機会を設けてほしいものだ。以降、時に問題解説から脱線するようなことにも言及するが、「急がば回れ」、いろいろと知見を広げ、意見が分かれる問題については、自分なりの意見をもってほしい。
02 国連総会では一国一票の平等が原則となっている。
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- 総会は一国一票である。従って「総会では、議決について加重投票制がとられている。」は✕。ただし、ÍMFなどは一国一票ではなく、負担率に応じた加重投票制。なお、国連憲章にある「すべての加盟国の主権平等の原則」という場合の「主権」の意味は、決定権、支配権ではなく「独立権」のこと。
03 国家の三要素は国民、領域、領空である。
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- 領空ではなく「主権」。 国家(nation /state)の三要素は 国民( people )領域 (territory(region)) 主権(sovereignty) なお領域は、領土・領海・領空のこれまた三要素からなる。ただし、南極条約 1959 によって、南極だけは領土主権は凍結されている。なお、「主権」については後に触れる。
04 国連憲章は、武力行使を原則として禁じているが、自衛権の行使については主権国家に固有の権利として認めている
05 海岸から12カイリが領海、海岸から200カイリまでが排他的経済水域である。
06 領空は、領土と領海の上空で、宇宙空間も含む。
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- 「領」空ということで確かに「領土」と「領海」の上空だが、宇宙空間は含まない
07 他国が領空を通行するときは許可が必要であるが、領海については沿岸国の安全を害さない等一定の条件の下、事前通告は必要ない。
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- 領空は領土そのものの上空を通行するので許可が必要だが、領海には「無害通航権」がある。平和、秩序、安全を害することがないかぎり領海を通航することができるという権利である。
08 排他的経済水域は外国の船は自由に運航できない。
09 排他的経済水域の天然資源の利用権・保護義務は沿岸国にある。
10 深海底の上部水域には、公海自由の原則が適用される。
11 大陸棚の幅は、沿岸国の基線から測定して200海里を超えることはない。
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- 否定文は間違いが多いから怪しいと思ったほうがいいが、実際、これも誤り。「常識的に考えても」大陸棚が200海里にきっちり収まるとは思えない・・・で、誤りで正しいのだが、実は、教科書をよくよく見ると「一定の条件を満たす場合には200海里を超えて延長できる」と書いてある。なんと、教科書にはしっかり書いてあるのだ。やはり、教科書が最良の参考書ということだ。
12 主権を初めて体系的に論じたのはホッブズである。
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- 16世紀フランスのボーダン 宗教対立が続くフランスで混乱を解決するために強力な王権の必要を痛感し、王権神授説に基づく国家主権の絶対性を説いた。ただ、こんな単純な問題なんて出ないけどね。
13 日本国憲法で「主権の存する日本国民の総意」という時の主権とは、国家の統治権という意味である。
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- ここでいう主権は「国家の政治の在り方を最終的に決定する最高の権力」という意味
14 フランスでは、主権という考え方は、ローマ教皇の権威と結びついて、キリスト教社会の連帯を強めるために主張された。
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- 政経の問題文だが、おそらく意味不明かと思う。たまに惑わすために、こうした意味不明なものを加味してくることがある。括弧に入れて判断しないほうが無難な場合も。今回は✕。ちなみに、こういった問題を「括弧つけ問題」と呼ぶことにする。その意味は後ほどまた触れる。ただし、この意味不明な文章も実は結構意味深いものではある。ヨーロッパで生まれた主権国家は、王や諸侯を超えて権威をもっていたローマ教皇に対抗するものとして生まれてきた概念でもあるからだ。紛争が続くと、教皇ではなく、民衆からすれば自分たちを守ってくれる王や諸侯こそ守護者であるという意識が強くなり、その結果として王を中心とした、独立権をもつ主権国家が成立してきたということである。世界史組は言われてみると何となく分かるとは思うが・・・。宗教的権威に対する世俗的権力の闘争の結果、ヨーロッパで複数の主権国家が誕生したという訳だ。
15 マックス・ウェーバーは政治権力による支配の正当性について、伝統的支配→合法的支配→カリスマ的支配と変遷してきたと分析した。
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- カリスマ的支配は近代。「合法的支配」 legal rule が現代。なお、法は国家の「強制力」に裏付けられた規範として、道徳や慣習などの他の社会規範とは区別される
16 近代国家は法に基づいて組織され、法に従って政治権力が行使されるため、憲法がその政治権力を規制することはない。
17 日本国憲法は、公法の一つである。
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- 「公法」でもあり、最高法規でもある。
18 イギリスは憲法と名前をもつ成文法典をもっていない。
- ○
- 否定文だが正しい。議会制定法や判例法がその役目を果たしている。
19 近代ヨーロッパで生まれた自然権という考え方は、人間には国家によって与えられた権利があるというものである。
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- 人間が生まれながらに持っている権利 natural rightsであり、天賦人権ではあるが、「国家によって与えられたものではない」。この程度は瞬時に✕と判断したい。
20 国際法の父と呼ばれるグロティウスは、民族や時代に関係がなくすべての人間に通用する普遍的な法が存在するという考え方を主張し、自然法の父とも称される。
- ○
- 17世紀のドイツ三十年戦争という国際的な戦争を背景に主張。オランダの学者。なお、ドイツ三十年戦争の結果、ウェストファリア条約で、ヨーロッパにおいて主権国家を構成単位とする国際社会の成立を促した。世界史選択者にとっては常識ではあるが、「ウェストファリア条約」あたりも、政経では名称を問う問題が出題されるので知っておこう。