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【今日の時事問題】難民問題(難民条約・難民の地位に関する条約)

ウクライナの停戦についての協議が進まない。この間、400万人を超えるウクライナの人々が難民として国外に避難した。

かつて、19世紀は移民の世紀、20世紀は難民の世紀・・・と世界史の授業で話しをしていたが、21世紀にこんなに難民が生まれるなんて思ってもみなかった。

 

難民については、センター試験で繰り返し問われてきた。以下正誤問題にチャレンジしてみよう。

 

 
難民条約は、冷戦終結後に国連総会で採択された。

 

 →✕

■確かに、難民は「冷戦終結後」にむしろ増えてきたが、実は、戦後まもなく1951年に採択された。パレスティナ難民、インドシナ難民など、早くから難民問題が生じていた。

 

日本は、難民条約の採択された年にこの条約に加入した。

 

 →✕

■日本の批准は遅く、1981年のことであった。1970年代後半のインドシナ難民(ベトナムラオスカンボジア)の大量流出を受けて難民条約に加入したが、人種差別撤廃条約とともに、日本の批准が「遅かった」ことは何度か出題されている。なお、難民条約への加入に当たって、日本は、出入国管理及び難民認定法を定め、難民を認定する手続を整えたが、現在、その見直しも課題となっている。

 

難民の地位に関する条約」で難民と定義される者の中には、生活苦などの経済的理由で母国を離れた人々が含まれる。

 

 →✕

■経済的理由では難民とされない。

 

難民条約上、難民とは、大規模な自然災害や戦争・国内紛争のために国外に逃れた者を言う。

 

 →✕

■干ばつや洪水、津波等、自然災害により故郷を逃れざるを得なくなった人は、たとえ国外に逃れたとしても難民条約上の難民の定義には該当しない。後段の「国内紛争のために国外に逃れた者」についても、条約の文言に即す限りは該当しないようだ。ただし、UNHCRが1979年に出した難民認定ガイドラインに「武力紛争および暴力の発生する状況を原因として移動を強いられた一般市民(civilians)に直接適用される」とされ、これに則り難民に該当すると考えるのが世界の潮流のようだ。この点は後に触れ直すが、問題としては、あくまで「難民条約では」・・・ということなので✕とせざるを得ない。

 

国内避難民も、難民条約の保護の対象とされている。

 

 →✕

■国内避難民は難民条約上の保護対象に含まれない。しかし、UNHCRは「難民と並んで国内避難民も、支援の対象としている。」このあたりの細かな部分が問われることもあるので注意。

 

難民条約では、これを批准した国は、帰国すると迫害される恐れがある人を保護しなければならないと定められている。

 

 →○

■迫害を受けるおそれのある国に難民を「追放・送還しない義務」を定めている。これを特に「ノン・ルフールマン フランス語で non-refoulement 」の原則と呼ぶ。この用語も出題実績があり、覚えておきたい。

 

不法に入国した場合でも、当局に速やかに理由を示して難民認定を受けた人々には、不法入国を理由にして刑罰を科してはならない。

 

 →○

■命からがら亡命してきた人を、不法入国を理由に排除すること・・・そんな事が人道的な観点から判断して judge from the humanitarian standpoint できるだろうか・・・と問うてみれば自ずと答えは出るのでは? なお、条約上の難民とは認定できない場合であっても、本国情勢などを踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる場合には、日本への在留を認める場合もあるとのこと。今回のウクライナ難民の受け入れはこの延長線上でのことのようである。

 

第三国定住は、難民を最初の受入国から別の国に送り、そこで定住を認める仕組みだが、日本はこの仕組みを受け入れていない。

 

 →✕

■日本は、第一次避難地の難民キャンプに滞在している難民を受け入れる「第三国定住」の制度を始めた。2010年から、ミャンマー難民を受け入れた。第一次避難地の負担を国際的な連帯のもとに軽減するためのものである。現在第三国定住プログラムを受け入れているのは25カ国程度のようだ。基本的に難民の多くは「自主帰還」を果たすことが多いが、「庇護国における社会統合」や、少数ではあれ第三国に「定住」するケースもある。

 

日本が受け入れた難民の数は欧米主要国に比べると少ないが、そのなかでは、アジア地域からの難民受入数が多数を占めている。

 

 →○

■正文だが、日本の難民受け入れはこれまで欧米諸国と比べてあまりにも少ないことが問題視されてきた。また、難民の認定数が低いだけでなく、認定率が低いことも問題視されている。現在、ウクライナの人々については積極的に受け入れることになったのは、ある意味ではその裏返しでもあろう。

 

日本では、「難民認定申請が却下された外国人」の長期収容が問題となる中、そうした外国人の本国送還を容易にするよう「出入国管理法」が見直された。

 

 →✕

■そういう改正案を出そうとしたが、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性が死亡した事案をめぐり、入管行政に対する世論の反発が高まったこともあり、この改正案は棚上げとなった。このようなことが問題として出題されるとは到底思えないが、日本の未成熟さの一つとして、このような社会問題もあるんだ、ということをとりあえずは知っておいてほしい。そして、その課題解決に向けて奮闘してい人々がいることも・・・。そのような人々がいることに希望を感じているのは、私だけではないはず。指宿弁護士、頑張れ!!!

 

 

おおよそこの程度理解しておけば知識問題としてはOKかな。

 

ところで、今回のウクライナ難民については、えっ?と思ったことがあった。ニュースで「ウクライナ避難民」という言い回しで報道され、「あれ、難民じゃないの?」と、戸惑いを感じたのだ。

UNHCRでは、

 国外に逃れた人を「難民」(「refugee」)、

 国内で避難した人を「国内避難民」(Internally Displaced Persons)

と使い分けていて、今回も、UNHCR、海外の主要メディアも、ウクライナから国外に逃れた人たちを「refugee」と呼称しているのだが・・・

 

日本では、「避難民」という言い方をするとのこと。政府は今回の支援対象を難民の保護制度とは切り離し、「危機的状況を踏まえた緊急措置として、難民条約上の難民に該当するか否かにかかわらず、人道的な観点から受け入れる」とのこと。スピィーディーな支援と人道的な配慮を強調した形だが、「特例」としての支援ということで、法律にない「避難民」という言葉を使用しているようだ。

 

これまで、法務省が難民の定義を狭く解釈してきたことや、「迫害の恐れ」についての客観的証拠に基づく証明を求めてきたことなどが影響して、ある意味、苦肉の策ということであろう。そのため、在留資格としては、就労可能な「特定活動(1年)」をあてがうようだが、これは帰国や第三国への出国を前提としたようなもの。6日付け毎日新聞の水説では、立憲民主党から就労制限なし、期間は更新可能な「戦争等避難者」という在留資格を設ける法案が提出されたことが紹介されていた。「難民鎖国」と揶揄されてきた日本、今回のことで、国際基準にのっとった受け入れ体制整備に向けて、再考を促された形だ。

 

 また、今回のことで、これまで日本社会がミャンマーやシリア、アフガニスタン難民にほとんど向き合ってこなかったことに対して、内側からの自省の声も聞かれた。

 

かく言う私自身も、ウクライナ戦争に際してはUNHCRに早々とわずかながらの寄付をしたが、ミャンマー、シリア、アフガニスタンの難民に対して何らの支援もしなかった。昨日、UNHCRからメールが届いた。「【緊急アフガニスタン】食べ物がない - 2300万人が食料危機に」。わずかだが思いを届けたいと思った。