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【こんな質問ありました】発行した国債は、何故、「市中消化」しなくてはいけないのですか?  

■質問 発行した国債は、何故、「市中消化」しなくてはいけないのですか?  

 

国債については、現在日本では、毎年歳出で公債費( 国債の元本返済や利子の支払い)を返済しつつ、補填のため新たな国債を発行して歳入に充てる、といった堂々巡りを繰り返している。そのため、いわゆる赤字国債の累積残高は増え続けているのは承知のことと思う。GDPの2倍にまで膨れている。

 

そのため、歳入、歳出全体を見ても日本の経済の実態が分かりにくくなっているので、

「プライマリー・バランス」という指標が重要視されるようになった。これは、歳入から国債費の発行による収入を差し引いた金額と、歳出から国債費を差し引いた金額のバランスを見たもの。マイナスだったら、国債を発行しないとまかなえない、不健全な財政状況ということになる。日本は、残念ながらマイナスが続いているのも承知の通り。

 さて、その国債については、まず、以下のことを再確認しておきたい。

 

国債

国債発行は原則禁止

・例外的に「公共事業」目的の「建設国債」は認められている

・「赤字国債」は、その都度「財政特例法」を制定して初めて認められる特例国債

  財政の不足分を補填するため

市中消化の原則

 「新規発行」の国債は、日銀が買い取ってはいけない、市中(銀行・家計)で消化

 で、問題は、上記のうち、「市中消化の原則」についてと言うことになるが、では、なぜ禁止されているかと言うと・・・市中に流通している通貨のことを「マネー・ストック」と呼ぶが、「マネーストックが増えてしまいインフレになってしまうおそれがある。それを避けるため」・・・というのが、実は、質問に対する端的な回答になる。よく、累積赤字を解消するために、「紙幣を増発」すればいいのでは?という質問があるが、それと同じように、「唯一の発券銀行」である日銀が国債を大量に買い取って政府に資金提供するということは、紙幣を増刷したと同じことになる。そして、政府が提供を受けた資金を歳出で使用しだすと、市中にもお金が出回り、「財布がふくれて」インフレの恐れが出てくる。ただ、それがどんなメカニズムなのかを理解するためには、もう少し再確認が必要である。そこで、以下の2点を確認しておこう。

①インフレとは物価があがることであるが、どんなケースで物価が上がるかと言うと、典型的なのが・・・

 a. 所得が増え購買意欲が高まると、物価は上がる(需要インフレ)

 b. 輸入原材料が値上がりすると、物価は上がる(費用インフレ)

このうち、aについては、「財布にお金がたくさんある」状態と言うこと。これを社会に置き換えてみると、世の中に、お金がたくさん出まわっているということに他ならない。

 Inflation      in中に   flare  吹く 空気を吹き込む 通貨膨張 物価の上昇

    Deflation   de下に   flare 吹く 空気を吹き去って抜く 通貨縮小 物価の下落

 

では財布にお金が沢山あればいいことじゃない・・ということになるが、見方を変えれば、インフレは「貨幣価値がさがること」を意味している。これまで500円だった定食が1000円になったとしよう。500円玉一枚では定食の半分しか食べられない・・・

従って企業にとっては収益があがって嬉しいが、庶民にはつらい・・・

と言うことで、もし、日銀が国債を直接買い取ったら、先に書いたように「マネーストックが増えてしまい」、しかも節操もなくそれを拡大していったら悪性のインフレになってしまうおそれがある、混乱をまねきかねない・・・ということになるんだ。

これにはトラウマもあった。戦後の「復金インフレ」の発生だ。

 そこで、1947年に施行された財政法第5条により禁止市中消化の原則ができた訳だ。ただ、この原則は日本だけではない。先進国の中央銀行はみなこの原則に従っているそうだ。

 

②では、発行された国債は誰が買い取るのかと言うと、

 民間金融機関 → 一般の投資家。

まず、民間金融機関が買い取る。民間金融機関は、現金を持っていても商売にならない。ところが、儲かっている企業はなかなかお金を借りてくれない。景気が悪いと設備投資も進まない。そこで、現金を、国債や株を購入することで、利益をあげようとしている訳だ。国債だって利子がつくからね。その際、国債は、日本銀行が提供する「日銀当座預金」から支払うため、マネーストックとは無関係。そして、次第に、一般の投資家などが買い取るが、その場合、市中に「流通している通貨の総量」であるマネーストックのうち、「遊休資金」で調達することになり、マネーストックは減ることになるが、

※注意 国債購入した一般の投資家にとっては「資産」であっても「預金」じゃないから、マネ―ストックにはカウントされないし、「政府が国債発行で保有したお金はマネーストックに入らない」ので、国債発行→買い取りによってマネーストック自体は減ることになる・・・これは理解できるよね。

逆に言えば、このことは、デフレを引き起こさないよう、「民間の利用可能な資金の範囲内」でしか国債を発行できないということを意味する。つまり、もし、日銀が大量の国債を買い取ることができるなら、節操もなく国債が発行されてしまうことになるから・・・そこで、「安易な国債発行を制限するためにも」、市中消化の原則があるということにもなる。この点については、案外理解されていないものなので、ぜひインプットしておいてほしい。

          

※ところが、さらに問題が・・・

一方で、「黒田バズーカ」により、現在は、日銀が、市中銀行保有している「国債」を買い入れる(買いオペ)をしていること、承知の通りかと思う。

えっ、これは「市中消化の原則」に違反しているのでは・・・と思うかも知れないが、

「すでに市中に出回った国債」ということで、この「原則」に抵触しないんだ。      何だか・・・裏技、抜け道のようなもんだね。

 で、では今、何のために買いオペをしているのも分かっているかな?

 景気回復のため、もっと言えば、「インフレ」を起こすため。何と、インフレを避けるために「市中消化の原則」があった訳だが、逆に、インフレターゲット2%を掲げて、せっせと国債を買い入れ・・・買い入れると言っても市中銀行に預けさせている「日銀当座預金」に入金するだけだが・・・市中銀行にとっては、「日銀当座預金」は資産であり、これを裏付けとして、あるいはこれを活用して、銀行はこれまで以上に積極的に融資できる・・・といった仕組みで、市中に資金を流し込む「べース」を作っているんだ。

 国債の直接買い取りは劇薬で禁止、間接的な買い取りは薄めた薬として容認・・・とでも捉えておいて。

なお、「日銀当座預金」は、マネーストック(「流通している通貨の総量」)ではないから、急激なインフレになることはない・・・、マネーストックから吸い上げた訳ではないのでデフレにもならない、・・・徐々にインフレになって、景気回復してほしいという狙いの下に・・・

     ※このあたりを理解できるかどうかが勝負所。

そのためには、「マネタリーベース」と「マネーストック」の構造についても理解しておく必要がある。

 ◎マネタリーベース : 「日本銀行が提供する通貨」  「ベース」(基盤)になる

 ◎マネーストック : 「市中に流通している通貨」

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マネタリーベースとマネーストック

ところが、これがうまくいっていないようなんだ。マネタリーベースは増えたけど、期待したほどマネーストックが増えず・・・つまり、景気が回復しないので、企業が銀行から融資を積極的に受けようとする機運が高まらず、結果として、マネタリーベースで見ると2005年は100兆円だったのが2019年初頭で500兆を突破したが、マネーストックは1500兆円程度だが増加率は低いとのこと・・・、その後のコロナ禍もあり、日本経済の回復はいばらの道となっているのが現状のようである。なお、日銀がせっせっと国債を買い上げてきた結果、日銀の国債保有残高は何と500兆円を超えたとのこと。政府の累積国債残高がおよそ1000兆円とすると、日銀がその半分を支えているということになる。安易な国債発行を制限するための原則が、裏技・抜け道によって、実質的には、なし崩しになっていると言わざるを得ないかな。

 

ということで、いろいろと寄り道したが、まとめると

 国債の市中消化が原則になっている・・・日銀が国債をすぐに買い取ることができないのは・・・

○急激なインフレになることを避けるため、マネーストックが一気に増えないようにす

るため   

○安易な国債発行を制限するために、「民間の利用可能な資金の範囲内」でしか国債を          発行できないようにするため

※しかし、一旦市中に出てしまうと、日銀が買い取ることは可能・・・むしろ現在は、その操作である「買いオペ」が金融政策の中心になり、日銀が巨額の国債を抱え込んでいる。